映画の後には紅茶とお菓子を

百合とアニメと映画の感想

『アラジン(2019)』の感想

アラジン
原題: Aladdin
2019年

 

 

 

感想と演出について

Disneyロゴ

Walt Disney Picturesのロゴは映画ごとに作品に合わせたバリエーションがある。『アラジン』ではシンデレラ城が海原に浮かぶ帆船へと変化した。

 

アラビアン・ナイト

冒頭で船乗り(ウィル・スミス)が歌う「アラビアン・ナイト」"Arabian Nights (2019)"に乗せて、アグラバーの町を通り抜け、お城のテラスにいるジャスミンとラジャーをチラ見せ、魔法の洞窟を紹介。実写映像素材とCGIを滑らかにつなげて長回しのように見せている。
オープニングクレジットは金色文字の題名と同じフォントで、砂のように左から右へ消えていくアニメーションが砂漠を舞台にした作品に合っている。

 

「ひと足お先に」

「ひと足お先に」"One Jump Ahead"はアニメーションではアラジンとアブーが追いかけられるだけだったが、お忍びのジャスミンを加えたパルクールになっていた。アニメーションの要素を取り入れながら、アクションシーンに仕上げたのはガイ・リッチー監督らしい。
時折アクションの動きにコマ落としとスローモーションを入れていた。フレーム落としはチャールズ・チャップリンなどの昔の映画のコミカルな動きを意識していたのだろう。
棒に捕まってジャンプするのを怖がるジャスミンに「僕を信じて」と声をかけるアラジン。

 

腕輪

アンダース王子に会う時、ジャスミンが腕輪のない左手首をつい触ってしまったのが印象的だった。アラジンが盗んだと思っている、亡き母の形見。

 

「スピーチレス(パート1)」

新曲「スピーチレス」"Speechless"。サルタンのマインドコントロールジャスミンに邪魔され苛立ったジャファーが、ジャスミンに黙っていなさいと言った後のミュージカルナンバー。新曲が浮いていたという意見も目にしたが、観てみると自然な流れでジャスミンの気持ちが歌になっていることがわかる。

 

魔法の洞窟

アニメーションでは老人に化けたジャファーがアラジンを騙してランプを取りに行かせるが、実写版では人心掌握術でアラジンを口説き落としている。魔法は使っていない。

砂漠のシーンはヨルダンのワーディー・ラムで撮影されている。ここは『アラビアのロレンス』の撮影場所としても知られている。
実際の砂漠で撮影するのはガイ・リッチー監督の方針だったらしい。

アニメーションでは魔法の洞窟は3DCGで描かれていて、ライオンの口が動く。
実写版では現実的な洞窟にデザインされている。岩に宝石と貴金属がばらまかれ、細長い岩の塔にランプが安置されている。

 

「フレンド・ライク・ミー」

「フレンド・ライク・ミー」"Friend Like Me"はランプから出てきたジーニーがアラジンに自己紹介するミュージカルナンバー。ロビン・ウィリアムズジーニーと並ぶ、ウィル・スミスのジーニーだった。

最初に『アラジン』の予告編を見たとき、ジーニーがただの青いウィル・スミスじゃないかと思った。てっきりアニメーションのキャラクターデザインをもとにCGIジーニーを作ると思っていたから。後に公開された別の予告編などを見るうちにこれはこれでありだなと思うようになった。
青いジーニーはウィル・スミスのパフォーマンスキャプチャー(身体の動きのモーションキャプチャーと顔の表情のフェイシャルキャプチャーの両方)をもとにしたCGI。パフォーマンスキャプチャーの動きデータをそのまま3Dモデルに流し込んでも身体パーツのつなぎ目などが破綻することが多いので、アニメーターが適宜微調整している。

 

「アリ王子のお通り」

インドっぽい踊りのパレード。「アリ王子のお通り」"Prince Ali"。

 

パーティー

アラジンのキレキレのブレイクダンスジーニーが操り人形のように助けてたけれど、アラジンはあれでいいのか?

 

アバブワ

ジャスミンに国の場所を聞かれ、ダリアとデート中のジーニーがこっそり魔法を使うと、地図にアバブワが出現しアラジンへのメッセージが表示されるのだが、地図に現れたのはアニメーション版のジーニーのようだった。スタッフの遊び心かな。

 

ホール・ニュー・ワールド

アリ王子の手を差し出し「僕を信じて」という言葉が、ジャスミンにアラジンと出会った時を思い出させ、アリ王子がアラジンだと気づかせた。ただ、魔法の絨毯の上でジャスミンの言葉を聞くまで、アラジンは自分の正体を無意識に明かしたことに気づいていなかった。
魔法の絨毯の上でアグラバーの国民たちを眺める場面はこのリメイクで追加されたもの。冒頭のお忍び散歩のシーンとこのシーンで、ジャスミンが国民を思う気持ちがより強調されている。

 

偽り

ジャスミンの勘違いに乗じて、本当の自分について話せなかったアラジン。アラジンの今までいた環境を考えると仕方ないとも言えるが、いつかは本当のことを言わなければならないと諭すジーニー。

 

ジャファーの謀略

ジャファーがアラジンを海に突き落とすと、空中で椅子ごと一回転するアラジンをスローモーションで見せる。ガイ・リッチー監督らしい。このショットは3D視聴を前提にした演出。
アブーは賢い。アラジンの危機に気づくとランプを持って魔法の絨毯でアラジンのもとへ駆けつける。
ジーニーがおぼれて意識がないアラジンに無理やり2つ目の願いに署名させて助けるシーンはコメディでもある。
以前からだがサルタンはジャファーのマインドコントロールがなくても、簡単に他人の言葉を信じてしまう人のようだ。最初はジャファーの話を信じ、アラジンの話を聞くとこっちを信じる。

 

「スピーチレス(パート2)」

謁見の間から連れ出されたジャスミンが中庭で衛兵を振り切り、広間に戻り歌う。実際の言動かと思ったら、ジャスミンが自分を奮い立たせるためのイメージ映像だった。
パート1同様、ジャファーに黙っていろと命令された後のジャスミンの気持ちが自然な流れで歌になっている。
歌の後、ジャスミンはハキムを説得するが、ジャスミンの亡き母を含めハキムの背景は興味深い。ぜひ掘り下げてほしいものだ。尺の都合もあり、脚本には盛り込まれなかったのだろうと思う。

ただ問題だなと思ったのが、魔法を使いクーデターを起こしたとはいえ、国王を裏切るようハキムを説得する脚本を書いたこと。警察や軍隊は法律および国を統べる権力者に忠誠を誓うからこそ、秩序が保たれ国が安定する、ということになっている。私情を挟み原則を曲げるようハキムに頼む話は良くなかった。

 

ジャファーの君臨

ジャファーがランプを取り戻そうとしたアラジンとアブーを極寒の地に飛ばした後、ジーニーが魔法の絨毯に合図を送りジャファーに内緒で助けに行かせた。ジーニーはご主人様であるジャファーの命令に従わなければならないが、ジーニー個人の考えで行動することもできるらしい。

結婚式でランプを奪い取って飛び降りたジャスミンは、アラジンが来るのを知っていたのだろうか?

ジャファーが魔法でイアーゴを変身させたのは、ロック鳥という中東・インド洋地域の伝説に登場する巨大な白い鳥らしい。

魔法の絨毯で逃げるアラジン・ジャスミン・アブーと追いかけるイアーゴのアクションシーンもガイ・リッチー監督らしい。空中でランプをつかむアブーを真上からスローモーションで見せる3D向け演出。

アラジンがジャファーをたきつけて最後の願いを言わせる。アラジンの意図に気づいたジーニー。最も強大な存在にというジャファーの願いを、最も強大な力を持つランプの精霊と解釈。
ジャファーは逃げようとしたイアーゴをとらえて道連れに。

 

自由に

アラジンがジーニーに「君に自由を」と頼んだ場面で涙があふれてきた。

 

物語

ジーニーのナレーションと船の挿入ショットで、この物語が人間になったジーニーとダリアが2人の子どもに話して聞かせた入れ子構造であることがわかる。この手法は『アラジン』の原案である『千夜一夜物語』でも使われている。シャフリアールの悪行を諫めるため、毎晩シェヘラザードが夜伽話をしたというのがそれだ。

 

 

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スタッフ

監督:ガイ・リッチー
脚本:ジョン・オーガストガイ・リッチー
製作者:ダン・リン、ジョナサン・アイリッヒ
歌曲:アラン・メンケン(作曲)、ハワード・アシュマン(作詞)、ティム・ライス(作詞)、ベンジ・パセク&ジャスティン・ポール(作詞)
音楽:アラン・メンケン
撮影監督:アラン・スチュワート
プロダクションデザイナー(美術監督):ジェマ・ジャクソン
衣装デザイン:マイケル・ウィルキンソン
VFXスーパーバイザー:Chas Jarrett (Production VFX Supervisor); Michael Mulholland, Daniele Bigi, David Seager (Industrial Light & Magic); Joseph Kasparian and François Lambert (Hybride); Tyson Donnelly (One of Us)
編集:ジェームズ・ハーバート
製作会社:ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ、ライドバック(旧社名リン・ピクチャーズ)
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズ

 

日本語吹き替え版スタッフ

翻訳:いずみつかさ
訳詞:もりちよこ
翻訳監修:ジェームズ・ハバート
演出:中野洋志
音楽演出:市之瀬洋一
日本語版制作:株式会社スタジオ・エコー

 

字幕翻訳:中沢志乃

 

Disney Character Voices International, Inc.

 

キャスト

アラジン:メナ・マスード(中村倫也)
ジャスミン:ナオミ・スコット(木下晴香)
ジーニー:ウィル・スミス(山寺宏一)
ジャファー:マーワン・ケンザリ(北村一輝)
イアーゴ:アラン・テュディック(多田野曜平)
サルタン:ナヴィド・ネガーバン(菅生隆之)
ダリア:ナシム・ペドラド(沢城みゆき)
アンダース王子:ビリー・マグヌッセン(平川大輔)
ハキーム:ヌーマン・アチャル(宮内敦士)
ラズール:ロビー・ハインズ
オマール:ジョーダン・A・ナッシュ(鈴木柊真)
リアン:タリア・ブレア(稲葉菜月)
ジャマル:アミール・ブートゥロス(山本兼平)
魔法の洞窟:フランク・ウェルカー(掛川裕彦)

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