映画の後には紅茶とお菓子を

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『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』感想

『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』
原題:"Fantastic Beasts: The Secrets of Dumbledore"
製作年:2022年
製作国:イギリス、アメリカ合衆国

 

 

作品について

デヴィッド・イェーツ監督。

J・K・ローリングスティーヴ・クローヴスの共同脚本。

デヴィッド・ヘイマン プロデューサー。J・K・ローリング プロデューサー。スティーヴ・クローヴス プロデューサー。ライオネル・ウィグラム プロデューサー。ティム・ルイス プロデューサー。

『ファンタスティック・ビースト』シリーズ第3作。『魔法ワールド』フランチャイズ第11作。

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ファンタジー映画。

 

 

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脚本

J・K・ローリングの脚本の問題が、スティーヴ・クローヴスとの共同執筆によってある程度解消されていた。『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』を観ればわかるように、J・K・ローリングは書きたいネタを詰め込んだせいで、とっ散らかった作品にしてしまっていた。1本の映画として何を書きたかったのか見えなくなっていた。まるで複数の短編映画を編集して134分の「長編映画」に見せかけたようだった。

『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』は、ゲラート・グリンデルバルドが不正選挙により「国際魔法使い連盟」の指導者として魔法界を支配する野望を阻止する、という一貫したストーリーだった。

その一方で、クイニーがあっさり戻ってきたり、クリーデンスの死期が近いと示唆されたり、「血の誓い」があっさり壊れたり、など第2作で張った伏線を放棄する変更も多かった。

J・K・ローリングは『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』で描いたことを続編『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』でなかったことにしたので、『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』の問題もさもありなん。

 

ワーナー・ブラザースJ・K・ローリングに creative control を与えた。J・K・ローリングワーナー・ブラザースの契約により、『ファンタスティック・ビースト』シリーズはJ・K・ローリングの許可がない限り、他の脚本家を雇って書かせることができない。

But he [former Warner Bros. CEO Kevin Tsujihara] also handed her creative control (the studio cannot hire someone else to rewrite her script without her approval — a departure from the Potter films, for which she did not have script approval).

Universal Parks Responds to J.K. Rowling Tweets: “Our Core Values Include Diversity, Inclusion and Respect” – The Hollywood Reporter

つまり『ファンタスティック・ビースト』第2作が評論家からも観客からも批判され、興行収入も大きく落ちてしまったので、J・K・ローリングスティーヴ・クローヴスとの共同脚本を認めた、ということか。

 

 

感想

不死鳥はダンブルドア家と関わりがある生き物。死期が近いと現れるらしい。『ハリー・ポッターと秘密の部屋』(2002)で不死鳥のフォークスが初登場したが、昔からアルバス・ダンブルドアと一緒にいたわけではなく、すぐ前に現れたのかな?

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魔法使い同士の対決はアルバス・ダンブルドア対クリーデンス・ベアボーン(アウレリウス・ダンブルドア)の方がアルバス・ダンブルドア対ゲラート・グリンデルバルドよりよかった。アルバス対アウレリウスは、鏡の世界*1で街を破壊しながら戦っていた。石畳の道路や線路やレンガ造りの建物を破壊し、路面電車を爆破する。ダンブルドア対グリンデルバルドは、デヴィッド・イェーツ監督の悪い癖、杖からレーザービーム。

ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』(2007)のダンブルドア対ヴォルデモートは、炎の大蛇、巨大な水球、ガラスの雨など、まさしく傑物同士の戦闘だった。

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1930年代の中国・桂林市、ニューヨーク、ホグワーツホグズミード村、ドイツ・ベルリン、オーストリアのヌルメンガード城、ブータン

ドイツ魔法省はグリンデルバルドの支配下にある。現実、そしてマグルの世界では、ヴァイマル共和政からナチス・ドイツの時期。戦間期

 

ベルリン行きの列車の美術が好き。オリエント急行かな。雪原を走る長距離列車。まさしくアガサ・クリスティの名作小説『オリエント急行殺人事件』。

シドニー・ルメット監督、ポール・デーン脚本、アルバート・フィニー主演の1974年版名作映画、ケネス・ブラナー監督・製作・主演、マイケル・グリーン脚本の2017年版映画、デヴィッド・スーシェ主演の名作テレビシリーズ『名探偵ポワロ』Series 12 (2010) (フィリップ・マーティン監督、スチュワート・ハーコート脚本)など映像化され、親しまれている。

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日本でも、河野圭太監督、三谷幸喜脚本、野村萬斎主演の翻案版が2015年に放送された。

 

麒麟(qilin)(チーリン)が鍵を握る魔法生物。麒麟が主を選び、跪く、というのは小野不由美さんの『十二国記』で描かれる。

麒麟は賢者や傑出した統治者の誕生または死とともに出現する、と中国神話では語られている。

qilin, Wade-Giles ch’i-lin, in Chinese mythology, the unicorn whose rare appearance often coincides with the imminent birth or death of a sage or illustrious ruler.

qilin | Definition & Facts | Britannica

2020年のNHK大河ドラマ麒麟がくる』の麒麟と元ネタは同じ。

グリンデルバルドはネクロマンシーで、殺害した麒麟の赤ちゃんを蘇らせた。ゾンビ。フォーゲルが、本物の麒麟だと主張して掲げたら死体に戻った。

麒麟の赤ちゃんが可愛い。

麒麟がアルバス・ダンブルドアに跪く。アルバス・ダンブルドアはある意味では純粋な善人ともいえる。アルバス・ダンブルドアマキャヴェリスト(マキャヴェリアン)。大いなる善、大いなる目的のためなら、自分の命すら差し出す。愛する人や、ハリー・ポッターのような教え子たちでも、必要とあらば利用する。

サントスは磔の呪文をかけられたジェイコブを助けた。グリンデルバルドのいる前で、ジェイコブを助けたのは彼女ただ一人だった(クイニーを除く)。そういう意味で「国際魔法使い連盟」の指導者にふさわしい人物。

 

アークスターク刑務所でマンティコアの大群のシーン後、ジェイコブとラリーが出席した晩餐会でウェイターが運んでいたロブスターの料理をチラ見せする演出と編集はコメディ。

ニフラーのテディが飛んできたボウトラックルのピケットをキャッチせずにコインを集めだしたのもコメディ。3D上映用の見せ場としてスローモーション。

アークスターク刑務所のシークエンスは、スティーヴン・スピルバーグ監督、ジョージ・ルーカス原案・製作総指揮『インディ・ジョーンズ』シリーズ。

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アリアナの死と同時期、アバーフォースはゴドリックの谷の少女と恋に落ち、アウレリウスを身ごもった。しかしその少女は遠くに送られた。

その後アウレリウスが誕生し、赤ちゃんの時におばとアメリカへの船に乗っていた。幼いリタ・レストレンジが弟コーヴァスとアウレリウスを取り換えた。おばとコーヴァスは事故で亡くなり、アウレリウスはベアボーン家に引き取られクリーデンス・ベアボーンとなった。

 

最後のジェイコブとクイニーの結婚式を窓の外から見つめるアルバス・ダンブルドアがいい。家族を失い、愛する人とも決別し、またその愛する人を止めるために戦う自分は、幸せの輪の中には入れない、と。

 

 

製作

撮影監督が『ファンタスティック・ビースト』第1作第2作のフィリップ・ルースロから、マシュー・ヴォーン監督・脚本(共同)・製作『キングスマン』シリーズやデクスター・フレッチャー監督『ロケットマン』(2019)のジョージ・リッチモンドに交代した。もともとはフィリップ・ルースロが第3作も続投する予定で契約を交わしてしていたようだが、脚本の書き直しなどによる主要撮影の延期により、他作品の仕事とスケジュールが被ってしまったことが交代の理由だと思う。

フィリップ・ルースロ撮影監督は『ファンタスティック・ビースト』シリーズで薄茶色やベージュ色のカラーグレーディングをよくしていた。

ジョージ・リッチモンド撮影監督は陰影を濃く出す画作りが特徴的。だから画面が暗いと感じた人がいたようだ。

 

『ファンタスティック・ビースト』第1作第2作のプロダクションVFXスーパーバイザーはティム・バークとクリスチャン・マンズの2人が共同で務めていた。第3作はクリスチャン・マンズが1人で担当した。

ティム・バークは、ディズニーアニメーションの実写版、ロブ・マーシャル監督・製作『リトル・マーメイド』(2023)でプロダクションVFXスーパーバイザーを務めている。

 

ワーナー・ブラザースは2019年から新しい縦長のロゴ WB Shield logo を使い始めた。『魔法ワールド』フランチャイズの映画では初めて使用された。

 

 

WGA

脚本のクレジットは、Screenplay by J. K. Rowling & Steve Kloves そして Based on a Screenplay by J. K. Rowling となっている。全米脚本家組合のクレジット規定では、チームとして執筆した場合は "&" (アンパサンド) を、別々に執筆した場合は "and" と使い分けられている。だからJ・K・ローリングが1人で書いた脚本を、J・K・ローリングスティーヴ・クローヴスの2人で一緒に書き直した(rewrite)という意味。

en.wikipedia.org

基本的に Screenplay by は撮影に使用した決定稿を書いた人がクレジットされる。それ以前の稿を書いた人は、作品への貢献度、つまり完成作品に使われた割合に応じて、Screenplay by や Story by (日本では原案と翻訳される) でクレジットされる。Story は脚本形式の場合もあるし、脚本執筆前の段階で作成する資料の場合もある。WGA の Screen Credits Manual では "distinct from screenplay and consisting of basic narrative, idea, theme or outline indicating character development and action." と説明されている。Story と Screenplay の両方を同じ人(あるいはチーム)が書いた場合は、Written by とクレジットされる。

ハリウッドではプロデューサーが複数の脚本家を雇って書き直し(rewrite)や推敲(polish)させることが多い。またスクリプトドクターという仕事もある。だからクレジットされていない脚本家が何人もいる作品もよくある。

ちなみに、書いた原稿が没になった場合、完成作品に一切使われていない場合は、当然クレジットされない。

業界紙の報道で名前が挙がっていた脚本家が、実際の完成作品でクレジットされていないのには、こういった理由がある。

 

 

キャスト

ニュート・スキャマンダー:エディ・レッドメイン(宮野真守)
アルバス・ダンブルドアジュード・ロウ(森川智之)
クリーデンス・ベアボーン / アウレリウス・ダンブルドアエズラ・ミラー(武藤正史)
ジェイコブ・コワルスキー:ダン・フォグラー(間宮康弘)
クイニー・ゴールドスタイン:アリソン・スドル(遠藤綾)
テセウス・スキャマンダー:カラム・ターナー(江口拓也)
ユーラリー・“ラリー”・ヒックス:ジェシカ・ウィリアムズ(きそひろこ)
ユスフ・カーマ:ウィリアム・ナディラム(田村真)
ティナ・ゴールドスタイン:キャサリン・ウォーターストン(伊藤静)
アバーフォース・ダンブルドア:リチャード・コイル(中井和哉)
ゲラート・グリンデルバルド:マッツ・ミケルセン(井上和彦)
バンティ・ブロードエーカー:ヴィクトリア・イェイツ(新谷真弓)
ヴィンダ・ロジエール:ポピー・コービー=チューチ(喜多村英梨)
アントン・フォーゲル:オリヴァー・マスッチ(田原アルノ)
ヴィセンシア・サントス:マリア・フェルナンダ・カーンディド(和優希)
リウ・タオ:デイブ・ウォン
ミネルバ・マクゴナガル:フィオナ・グラスコット
ヘルムート:Aleksandr Kuznetsov
ヘンリエッタ・フィッシャー:Valerie Pachner
キャロウ:Maja Bloom
ザビニ:Paul Low-Hang
イーディス: Ramona Kunze-Libnow
アリアナ・ダンブルドア:ヒービー・ベアードサル

 

 

スタッフ

監督:デヴィッド・イェーツ
脚本:J・K・ローリング & スティーヴ・クローヴス
原案(Based on a Screenplay by):J・K・ローリング
原作(Based on Characters Created by):J・K・ローリング
製作:デヴィッド・ヘイマン、J・K・ローリングスティーヴ・クローヴス、ライオネル・ウィグラム、ティム・ルイス
製作総指揮:Neil Blair, Danny Cohen, Josh Berger, Courtenay Valenti
撮影監督:ジョージ・リッチモンド
プロダクションデザイン:スチュアート・クレイグ、ニール・ラモント
衣装デザイン:コリーン・アトウッド
編集:マーク・デイ
音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード
視覚効果スーパーバイザー:クリスチャン・マンズ
製作会社:ワーナー・ブラザース・ピクチャーズ、ヘイデイ・フィルムズ
配給:ワーナー・ブラザース・ピクチャーズ

*1:藤子・F・不二雄さんの『ドラえもん のび太と鉄人兵団』及び芝山努監督のアニメ映画など。