映画の後には紅茶とお菓子を

百合とアニメと映画の感想

『ハゲタカ』(2007年NHK版)感想: 名作

『ハゲタカ』
製作年:2007年
製作国:日本

 

 

作品について

真山仁さんの経済小説が原作。『ハゲタカ』シリーズのうち、第1作『ハゲタカ』と第2作『ハゲタカII』(旧題名『バイアウト』)を基にしている。

NHK総合テレビの『土曜ドラマ』枠で、2007年2月17日から3月24日まで初放送された。当時はNHK BShiでも放送していた。

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第3作『レッドゾーン』を脚色した、映画版『ハゲタカ』(2009)が2009年6月6日に公開された。テレビシリーズに続き、大友啓史監督、林宏司脚本、訓覇圭プロデューサー。

 

 

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感想

何度観てもおもしろい。名作テレビドラマ。

最初に観たときはまだ子どもだったから、大人になってから観るとより理解できる。

原作よりもNHK版テレビシリーズの方がすっきりしていて好き。

鷲津政彦の背景を大幅に変えることで、芝野健夫とのダブル主人公体制に作り上げている。

飯島亮介はまさしく老獪って感じでいいよね。

NHK版ではオリジナルキャラクターの西野治と三島由香がもう1人の主人公たちのように描かれている。

それからアランの扱いも好き。原作はアランが不憫で。

NHK版では松平貴子の物語は使われていない。2018年テレビ朝日版には使われていた。

 

西野昭吾の描写が、『ハゲタカ』という作品の象徴にもなっている。この第1話で視聴者の心をつかんで離さない。

サンデートイズ創業家の大河内家(原作の太陽製菓に相当)の描写も好き。酷いところが。

芝野健夫は、会社員の悲哀を体現している。

大河内瑞恵と大河内伸彰の親子の話もいいね。日本的なdrama。

 

芝野健夫が主導するフェニックス計画では、大空電機再建の柱として基礎研究開発費の大幅削減。

文部科学省や日本政府などのおかげで、日本の基礎研究は今後衰退していくことがほぼ確定している。ノーベル賞受賞なるか、でメディアやミーハーな人が一喜一憂できるのも今のうち。

 

会社も役所も非正規雇用の人たちに依存している。安くこき使えて、文句を言わず黙って働く奴隷が欲しいというのが権力者の本音。邪魔になったら切り捨てる。

最早、日本は貧しい国だから。

 

塚本邦彦が疑心暗鬼になって、芝野健夫との関係が悪化。その原因を作ったのが西野治の言葉。

敵対関係にある存在が、相手の一枚岩を崩す戦術をとる。しかし、ホワイトナイトを自称する会社が、渦中の会社が内部から崩壊するのを手助けする。

粉飾決算。時事問題に絡めたね。

第1話冒頭に戻る。プールに浮かんでいる人間と大量出血を無視して、お金を拾い集め、玩具店でおもちゃを買う子どもたちに。

 

 

2007年製作で作中設定が1998年から2004年なので、サブプライムローンリーマン・ブラザーズが表に出てきていない時期。ウォール街も他人のことを言えない、という皮肉。

映画版『ハゲタカ』(2009)は、リーマン・ショックを受けて脚本をほとんど書き直したそうだ。

 

『ハゲタカ』で好きな言葉は、創業者が亡くなっても、従業員や取引先や(会社法上の)社員というステークホルダーのために、会社は生き続けなければいけない。

 

 

原作小説では、飯島亮介は日本の闇に携わっているという設定。秘密を墓場まで持っていくと言っていた。鷲津政彦にも縁がある。この物語も興味深い。

 

 

大友啓史さんの出世作。その後、大河ドラマ龍馬伝』(2011)のチーフ演出などを経てNHKを退職。local acquisitions だけではなく local productions*1 に本格的に乗り出したワーナー・ブラザース日本法人と2011年8月に映画3作の監督契約を結び、『るろうに剣心』シリーズを監督。2021年には『るろうに剣心 最終章』二部作も公開された。

朝ドラ『ちゅらさん』(2001)の演出家の1人で、続編の『ちゅらさん2』(2003)と『ちゅらさん3』(2004)ではチーフ演出を務めていた。というのを後になってから知った。

 

プロデューサーの訓覇圭さんは、吉田玲子さんと『17才の帝国』(2022)を送り出していたね。吉田玲子さんによる脚本は、佐野亜裕美さんの提案だったそうだ。

www.nhk.jp

 

 

キャスト

ホライズン・インベストメントワークス・ジャパン
鷲津政彦:大森南朋
アラン・ウォード:ティム・ウェラード
中延五郎:志賀廣太郎
村田丈志:嶋田久作
リン・ハットフォード:太田緑ロランス

三葉銀行 → MGS銀行
芝野健夫:柴田恭兵
飯島亮介:中尾彬
沼田透:佐戸井けん太
海野重雄:神山繁
迫田専務:中原丈雄
坂巻常務:津村鷹志

東洋テレビ
三島由香:栗山千明
野中裕二:小市慢太郎
報道番組アナウンサー:宮川俊二
武田直也:蟹瀬誠一

西乃屋
西野治:松田龍平
西野昭吾:宇崎竜童
西野史子:永島暎子
西野泰三:三谷昇

サンデートイズ
大河内瑞恵:冨士眞奈美
大河内伸彰:小林正寛
百瀬敬一:岡本信人
大河内伸男:山崎大輔
大河内真也:菅原大吉
木下課長:村松利史

大空電機
大木昇三郎:菅原文太
塚本邦彦:大杉漣
加藤幸夫:田中泯
佐藤高志:谷本一
平田政夫:奥田達士
吉田陽介:樋口隆則
山口公一:佐久間哲
山崎一平:日向丈
牛島誠二:徳井優

ホライズン・インベストメントワークス(ケネス・クラリスリバプール)
アルバートクラリスイアン・ムーア
大賀康男:松重豊

アイアン・オックス
日下部進:矢島健一

 

遠山鎌一郎:光石研
島健一:渡辺哲
三島頼子:唐木ちえみ
牛島誠二の息子:浅利陽介
リー・ジェンミン:薄宏

 

 

各話

第1話「日本を買い叩け!」演出:大友啓史
第2話「ゴールデン・パラシュート」演出:井上剛
第3話「終わりなき入札」演出:井上剛
第4話「激震! 株主総会」演出:堀切園健太郎
第5話「ホワイトナイト」演出:堀切園健太郎
第6話「新しきバイアウト」演出:大友啓史

 

 

スタッフ

原作:真山仁
脚本:林宏司
脚本協力:立見千香
演出:大友啓史、井上剛、堀切園健太郎
音楽:佐藤直紀
制作総括:阿部康彦
制作:訓覇圭
制作・著作:NHK

美術:山口類児、神林篤、日高一平
美術進行:佐藤綾子、山尾輝、桜井茂雄
撮影:清水昇一郎
照明:久慈和好、佐野清隆
音声:高橋英明、鈴木勇一、大塚茂夫、奈良孝弘
技術:佐々木喜昭、小笠原洋一、宮路信広
映像技術:山田康一、大西康仁、横田幹次、真弓敬司、木川豊、釣木沢淳
編集:大庭弘之
音響効果:島津楽貴、畑奈穂子、三谷直樹
記録:栗又三奈
演出補:田中諭

監修:森生明
経済考証:佐山展生、山本礼二郎、古川薫
金融考証:勝又幹英
法律考証:南賢一、草野耕一
医事指導:中村毅志夫
理学療法指導:下田宏登

エンディングテーマ曲:tomo the tomo「Road To Rebirth〜a chainless soul〜」
作詞(原詩):エミリー・ブロンテ『Riches I hold in light esteem (富は問題にならぬ)』
作曲:佐藤直紀

*1:21世紀に入ってから、ワーナー・ブラザース20世紀フォックスパラマウント・ピクチャーズなども日本での現地買い付け(配給)・現地製作を始めた。ウォルト・ディズニー・カンパニー及びウォルト・ディズニー・ジャパンは1996年にスタジオジブリと事業提携し、『もののけ姫』を当時の子会社ミラマックスで配給、『ホーホケキョ となりの山田くん』からは製作委員会に出資するようになった。ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントはアニメの製作委員会に出資していた。最近また積極的になった。ユニバーサル・ピクチャーズは、アニメ製作の有力会社ジェネオン エンタテインメント(元・パイオニアLDC)を買って、NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパンを手に入れた。ワーナー ブラザース ジャパンジェネオン エンタテインメントからアニメプロデューサーを何人も引き抜いてアニメ製作を始めた。