映画の後には紅茶とお菓子を

百合とアニメと映画の感想

『ハリー・ポッターと賢者の石』の感想

ハリー・ポッターと賢者の石
原題: Harry Potter and the Philosopher's Stone
製作年:2001年
製作国:イギリス、アメリカ合衆国

 

 

作品について

クリス・コロンバス監督・エグゼクティブプロデューサー。

デヴィッド・ヘイマン プロデューサー。

J.K.ローリングのベストセラー小説が原作。全7巻がある程度同じスタッフやほぼ同じキャストによって全8作の映画シリーズになった。

J.K.ローリングが映画化を許可する条件の1つが、「原作の精神に忠実」であること。ハリウッドでは原作から改変するのが当たり前だと多くのプロデューサー・監督・脚本家は思っているので、『ハリー・ポッター』シリーズは珍しい。『ハリー・ポッター』シリーズ(2001-2011)やピーター・ジャクソン監督・製作によるJ・R・R・トールキン著『指輪物語』三部作(2001-2003)の世界的大ヒットによってハリウッドも影響を受けたのか、「原作の精神に忠実」な映像化が増えた気がする。

 

脚本

スティーヴ・クローヴスが脚本を書いた。
第5作『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』(2007)の脚本を書いたマイケル・ゴールデンバーグは、もともと『賢者の石』の脚本家候補の1人だった。

ハリウッドでは脚本(screenplay)は第一稿(script, first draft)だけを書くのが基本。同じ人が書き直し(リライト)も担当することもあるが、プロデューサーが別の脚本家を雇って書き直しさせることが多い。脚本家によって得意分野が違うから、というのが理由の1つらしい。作品によっては10人以上の脚本家が携わることもある。完成作品への貢献度により、クレジットされるかどうかが変わる。全米脚本家組合がクレジットのルールについて定めている。

スティーヴ・クローヴスもマイケル・ゴールデンバーグも、それぞれ1人で脚本を決定稿まで書いた。

 

金曜ロードショー

日本テレビ金曜ロードショーで「4週連続ハリポタ&ファンタビ祭り」として放送。21:00-23:24。30分拡大。

kinro.ntv.co.jp

 

kinro.ntv.co.jp

 

Amazon Prime Video

ハリー・ポッターと賢者の石 (吹替版)

ハリー・ポッターと賢者の石 (吹替版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 
ハリー・ポッターと賢者の石 (字幕版)

ハリー・ポッターと賢者の石 (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

 

 

感想

Wizard's Collection (Blu-ray Disc Box)を持っているけれど、テレビ放送を観た。何度観てもおもしろい。

 

ジョン・ウィリアムズさんの音楽はいつ聞いてもいい。

Harry Potter - The John Williams Soundtrack Collection (CD-Box)を持っている。

lalalandrecords.com

 

スチュアート・クレイグさんが率いる美術が素晴らしい。『ファンタスティック・ビースト』シリーズでもプロダクションデザインを担当している。

ハリー・ポッター』シリーズは実在のイギリスの風景や歴史ある建造物をふんだんに撮影している。それがホグワーツ魔法魔術学校やホグワーツ城の歴史を醸し出している。

 

 

イギリス

もともとイギリスの映画業界は盛んだったけれど、『ハリー・ポッター』シリーズがもたらした財産は大きい。特にVFX(視覚効果)業界は『ハリー・ポッター』シリーズを制作することで世界トップレベルに成長した。第1作のVFXSony Pictures Imageworksが元請け制作会社だったけれど、どんどんイギリスのVFX制作会社の割合が大きくなり、第7作第8作『ハリー・ポッターと死の秘宝』ではイギリスのVFX制作会社が元請けで制作した。

ロンドンのソーホーにはVFX制作会社が集中している。短時間で何社とも打ち合わせができる環境が整っているので、アメリカ映画でもイギリスのVFX制作会社に発注している作品が多い。

もともとVFX業界は1社だけで制作せず、同業他社と仕事を分担することが多い。ソーホーのVFX制作会社はお互いに仕事を分担することで技術を磨き、優れたVFXを制作している。

 

 

特殊効果

ハリー・ポッター』シリーズは全8作とも、SFXスーパーバイザーのジョン・リチャードソンが率いる特殊効果チームと、視覚効果チームが協力して魔法を描いている。大まかに言うと、特殊効果は撮影現場で行う技術、特殊効果はポストプロダクションで行う技術(2DCGと3DCGなど)。『ハリー・ポッター』シリーズは特殊効果と視覚効果を使い分けて両方のいいとこ取りをしていたけれど、『ファンタスティック・ビースト』シリーズは大部分が視覚効果になってしまった。

『賢者の石』では、例えばダーズリー家に大量に送り込まれる手紙のシーンは、クリス・コロンバス監督は当初CGIじゃないと無理だろうと考えていた。するとジョン・リチャードソンが特殊効果でできるよと、手紙の発射装置を提案した。それを見て、監督は特殊効果で撮影しようと決めたそうだ。

魔法生物はニック・ダドマンが率いるクリーチャー効果チームが制作した。アニマトロニクス(ラジコンで動くロボット)で描いた魔法生物は多い。またチームが制作したクリーチャーの彫像を、VFXチームが3Dスキャンしてデータを3Dモデルとして取り込み、3DCGアニメーションを制作した。

 

 

Hogwarts Castle

ホグワーツ城の1/24スケールモデル(ミニチュア)がある。ホグワーツ城の遠景シーンはこのスケールモデルを撮影し、VFXでお化粧していた。Jose Granellが率いるmodel shop部門と、ロンドンのVFX制作会社Cinesiteが担当していた

全8作に渡って使われたが、特に『死の秘宝 PART2』ではロンドンのVFX制作会社DNEG(Double Negative)がスケールモデルを3Dスキャンして制作したデジタルモデル(3Dモデル)が使われた。ホグワーツ城での戦いのシークエンス。

The team at DNEG delivered 409 shots and worked on some of the most exciting and visually stunning sequences in Harry Potter and the Deathly Hallows: Part 2, including the cart ride into the Gringotts vault, the Gringotts CGI dragon, the floating death-eaters circling the skies above the school and the creation of a fully digital Hogwarts or ‘digi-Hogwarts’ which included extensive battle sequences and environment builds pre and post battle.

Harry Potter and the Deathly Hallows – Part 2 - DNEG

 

 

 

吹き替え

ハリー・ポッター』シリーズも含めて、近年のハリウッド大作映画は米国本社が厳しく監修している。声優のキャスティングから翻訳や録音やミキシングまで。

声優のキャスティングは、元の俳優と骨格が近い人を選ぶそうだ。骨格が似ていると声質も似ているからだとか。

吹き替え台本の翻訳も、翻訳家に助言したり、修正指示を出して、台詞の意図をより原語版に近づける。

録音も米国本社の人が各国に派遣され、収録に立ち会う。適宜、音響監督や声優本人に指示を出す。
スタンリー・キューブリック監督『アイズ ワイド シャット』(1999)の日本語版で、助監督のレオン・ヴィターリが森川智之さんに厳しく指導した逸話がある(森川智之『声優 声の職人』, 岩波書店, 2018, pp. 55-61. (岩波新書))。これ以来、森川智之さんはトム・クルーズの吹き替えを専属で担当するようになった。

各国で各国語版の吹き替えを録音した後、Pro Toolsのデータ(音声ファイル)を米国本社に送る。米国本社が監修のもと、原語版と同じようにmixされる。

 

声優 声の職人 (岩波新書)

声優 声の職人 (岩波新書)

  • 作者:森川 智之
  • 発売日: 2018/04/21
  • メディア: 新書
 

 

 

 

俳優

ハリー・ポッター』シリーズは英国の名俳優たちの宝箱。メインキャラクターから脇役からチョイ役に至るまで。大人の俳優たちが作品の質を引き上げている。

原作者J.K.ローリングが映画化を許可する条件として、英国人俳優のみで演じるというものがあった。そのため、優れた俳優であってもイギリス人やアイルランド人以外の俳優はほとんど選ばれていない。

ロビン・ウィリアムズさんがハグリッドをぜひ演じたいとクリス・コロンバス監督に電話をしたそうだ。ロビン・ウィリアムズさんは以前、クリス・コロンバス監督の『ミセス・ダウト』(1993)と『アンドリューNDR114』(1999)で主演していた。けれどロビン・ウィリアムズさんはアメリカ人であったたため、クリス・コロンバス監督は断ったそうだ。*1

例外的にゾーイ・ワナメイカーアメリカ人だけれど、長年イギリスで活動していたため、マダム・フーチを演じた。

 

 

クレジット

映画のキャストクレジット順は様々だけれど、『ハリー・ポッター』シリーズでは一貫してハリー・ロン・ハーマイオニーの3人の後にメインキャストをアルファベット順で並べている。

The cast of the Harry Potter films includes many recognized stars in supporting roles who are billed alphabetically, but after the three principals who were initially child actors.

Billing (performing arts) - Wikipedia

 Wikipediaでも言及されているくらい、珍しい一例らしい。

エンドクレジットでは映画に登場した順番に並べられている(cast in order of appearance)。

 

 

キャスト

ハリー・ポッターダニエル・ラドクリフ小野賢章
ロン・ウィーズリールパート・グリント、常盤祐貴
ハーマイオニー・グレンジャー:エマ・ワトソン須藤祐
アルバス・ダンブルドアリチャード・ハリス永井一郎
ミネルバ・マクゴナガル:マギー・スミス谷育子
ルビウス・ハグリッド:ロビー・コルトレーン、斎藤志郎
セブルス・スネイプ:アラン・リックマン土師孝也
フィリウス・フリットウィック:ワーウィック・デイヴィス、田村錦人
クィリナス・クィレル:イアン・ハート横堀悦夫
マダム・フーチ:ゾーイ・ワナメイカー火野カチコ
アーガス・フィルチ:デイビッド・ブラッドリー、青野武
ドラコ・マルフォイ:トム・フェルトン、三枝享祐
ネビル・ロングボトム:マシュー・ルイス、上野容
バーノン・ダーズリー:リチャード・グリフィス楠見尚己
ペチュニア・ダーズリー:フィオナ・ショウ、さとうあい
ダドリー・ダーズリー:ハリー・メリング、忍足航己
ビンセント・クラッブ:ジェイミー・ウェイレット
グレゴリー・ゴイル:ジョシュア・ハードマン
オリバー・ウッド:ショーン・ビガースタッフ、川島得愛
フレッド・ウィーズリー:ジェームズ・フェルプス、尾崎光洋
ジョージ・ウィーズリー:オリバー・フェルプス、尾崎光洋
シェーマス・フィネガン:デヴォン・マーレイ、渡辺悠
ディーン・トーマス:アルフレッド・イーノック、山本隆平
パーシー・ウィーズリー:クリス・ランキン、宮野真守
リー・ジョーダン:ルーク・ヤングブラッド、進藤一宏
ケイティ・ベル:エミリー・デイル
アンジェリーナ・ジョンソン:ダニエル・テイラー
アリシア・スピネット:リー・シュザーランド
テレンス・ヒッグス:ウィル・シークストン
エイドリアン・ピュシー:スコット・ファーン
マーカス・フリント:ジェイミー・イェイツ、天田真人
スーザン・ボーンズ:エレノア・コロンバス
モリー・ウィーズリー:ジュリー・ウォルターズ一龍斎貞友
ジニー・ウィーズリー:ボニー・ライト、山田千晴
ほとんど首無しニック:ジョン・クリーズ、たかお鷹
オリバンダー老人:ジョン・ハート小林勝也
血みどろ男爵:トレンス・ベイラー
太った修道士:シモン・フィッシャー・ベッカー
灰色のレディ:ニーナ・ヤング
組分け帽子の声:レスリー・フィリップス、石森達幸
太ったレディ:エリザベス・スプリッグズ、竹口安芸子
ジェームズ・ポッター:エイドリアン・ローリンズ
リリー・ポッター:ジェラルディン・ソマーヴィル
フィレンツェの声:レイ・フィアロン、宮内敦士
キングス・クロス駅の駅員:ハリー・テイラー、石住昭彦
ディーダラス・ディグル:デイビッド・ブレット
漏れ鍋のバーテンダー:デレク・デッドマン
ホグワーツ特急のワゴン販売員:ジーン・サザーン
ヴォルデモート卿:リチャード・ブレマー、江原正士

その他:
甲斐田裕子
浅井清己
佐々木広太
田谷隼
よのひかり

 

演出:木村絵理子
翻訳:岸田恵子
翻訳監修:松岡佑子
録音:高久孝雄、田中和成、金谷和美、池田裕貴
編集:オムニバス・ジャパン
プロデューサー:尾谷アイコ、小出春美
制作:東北新社、ワーナー・ホーム・ビデオ

 

 

スタッフ

監督:クリス・コロンバス
脚本:スティーブ・クローブ
原作:J・K・ローリング
製作:デヴィッド・ヘイマン
製作総指揮:クリス・コロンバス、マーク・ラドクリフ、マイケル・バーナサン、ダンカン・ヘンダーソン
音楽:ジョン・ウィリアムズ
撮影監督:ジョン・シール
編集:リチャード・フランシス=ブルース
製作会社:ワーナー・ブラザース・ピクチャーズ、ヘイデイ・フィルムズ、1492ピクチャーズ
配給:ワーナー・ブラザース映画

 

 

キャスティングディレクター:Susie Figgis, Janet Hirshenson, Jane Jenkins, Karen Lindsay-Stewart

プロダクションデザイナー:スチュアート・クレイグ (Stuart Craig)
美術監督:John King as supervising art director, Neil Lamont as supervising art director; Andrew Ackland-Snow, Peter Francis, Michael Lamont, Simon Lamont, Steven Lawrence, Alander Pulliam, Lucinda Thomson, Cliff Robinson (uncredited)
セット装飾:ステファニー・マクミラン (Stephenie McMillan)
衣装デザイン:ジュディアーナ・マコーフスキー (Judianna Makovsky)

特殊メイクアップ効果:ニック・ダドマン (Nick Dudman)

第二班監督:David R. Ellis, ロバート・レガート (Robert Legato)

supervising sound editors: Eddy Joseph, Rohan Taylor
re-recording mixers: Adam Daniel, Graham Daniel, Ray Merrin

 

特殊効果スーパーバイザー:ジョン・リチャードソン (John Richardson)
クリーチャー効果:ニック・ダドマン (Nick Dudman)

 

視覚効果スーパーバイザー:ロバート・レガート (Robert Legato); Nick Davis; Jim Berney for SPI, Robert Duncan as digital visual effects supervisor for CFC, Roger Guyett for ILM, Richard E. Hollander for Rhythm & Hues, Michael Kanfer as associate visual effects supervisor, Karl Mooney for Mill Film, Sean Schur (uncredited)

視覚効果プロデューサー:John F. Clinton III as digital visual effects producer for SPI, Joyce Cox for Rhythm & Hues, Rob Delicata on motion control unit, Paul Edwards for Mill Film, Crys Forsyth-Smith for SPI, Martin Hobbs for MPC, Angela Hunt for Mill Film, Karen M. Murphy, Denise Ream for ILM, Mark Rodahl for Rhythm & Hues, Dominic Sidoli for CFC, Cari Thomas
視覚効果エグゼクティブプロデューサー:Debbie Denise for SPI, Antony Hunt for Mill Film, Drew Jones for CFC

視覚効果制作:ソニー・ピクチャーズ・イメージワークス、インダストリアル・ライト&マジック、フレームストアCFC、ムービング・ピクチャー・カンパニー、リーダー・セレビック、ジム・ヘンソン・クリーチャー・ショップ、コンピューター・フィルム・カンパニー、ミル・フィルム、シネサイト

アニメーションスーパーバイザー:David Andrews for ILM, Eric Armstrong for SPI, Chas Jarrett as CGI animation supervisor for MPC, Craig Talmy as senior animation supervisor for Rhythm & Hues
アニメーションプロデューサー:Denise Ream for ILM

CGスーパーバイザー:Gerald Gutschmidt as computer graphics supervisor for ILM, Mark Lambert for SPI, David Lomax for Mill Film, Seth Maury for SPI, David Alexander Smith for SPI, Peter G. Travers for SPI

*1:かつてロビン・ウィリアムズさんが『ハリー・ポッター』に出演していると雑誌に書かれていた。出演を希望したが断られたという話が、記者の勘違いで出演していると伝わったのだろう。インターネットで誰もがハリウッド映画の情報を得られるようになる前の時代だから、不正確な情報が日本のマスメディアで報道されても確認する術がなかった。