作品について
1984年3月11日公開。
宮崎駿監督、高畑勲監督、鈴木敏夫プロデューサーらがスタジオジブリを設立する前の作品。
『風の谷のナウシカ』では、高畑勲監督がプロデューサーとして宮崎駿監督を支えているのが特徴。
当時まだ無名の若手作曲家だった久石譲さんを、高畑勲監督が見出した。久石譲さんは宮崎駿監督作品、スタジオジブリ作品に欠かせない存在となり、『かぐや姫の物語』(2014)で初めて高畑勲監督作品の劇伴を作曲。高畑勲監督の遺作となった。
感想
何度観てもおもしろい。
ストーリーは好きだけれど、王蟲が気持ち悪いので、子どものときは「スタジオジブリ作品」の中では好きな映画ではなかった。
『未来少年コナン』(1978)などと共通するテーマ。
「その者青き衣をまといて金色の野に降り立つべし。失われし大地との絆を結び、ついに人々を青き清浄の地に導かん」
ファンタジー作品内における古い伝承とは都合のいいもの。物語の重要事項をピタリと言い当てる。
フィルム撮影時代のアニメに特有の、くすんだ色味。味がある。
色調問題
今日の放送も赤みがかっている。スタジオジブリが今年公開した作品静止画(場面写真)と比較すれば一目瞭然。
『千と千尋の神隠し』(2001)ではDVD色調問題があった。2002年発売のDVDとVHSは赤みが強かったのに、「このクオリティが最高のものと認識しております」とスタジオジブリとウォルト・ディズニー・ジャパンは強弁。民事訴訟を経て和解した。2014年発売のBlu-ray Discとデジタルリマスター版DVDは劇場公開版と同じ色調に戻った。
にもかかわらず、2010年発売の『風の谷のナウシカ』BDでも再び色調問題をやらかしている。2014年発売の宮崎駿監督作品集(Blu-ray Disc Box)では本来の色調に戻っているらしい。
「ナウシカ」の時はオリジナルネガをスキャン、データ化した後に、色調整をするという作業自体が初めての試みでしたので、試行錯誤をしながらの作業でした。
宮崎駿監督は、昔の映画は年数がたって古ぼけた状態の画こそ、正しいと主張。映画監督はクリエイターとしてのこだわりがある。でもそのこだわりが必ずしも観客が求めているものではない。それを、観客に近い立場であるプロデューサーが意見し落としどころを探るのが、本来の映画監督と映画プロデューサーの関係。だからハリウッドでは、映画プロデューサーに最終編集権(final cut privilege)があるなど、映画プロデューサーが映画監督よりも立場は上。映画監督の自己満足に陥るのを避ける目的でもある。
一方フランスでは映画監督の作家性を重視しているので、映画監督が最終編集権を持つ。日本の映画業界もフランスに近い。
BDやDVDのオーサリングは鈴木敏夫プロデューサーが主導している。宮崎駿監督は直接は関与していない。色調問題は鈴木敏夫プロデューサーの責任。
お客さんを見ていない。
製作
制作期間は1983年5月31日から1984年3月6日までの9か月。当時では普通のスケジュールだったのかな?
叶精二さんによる『風の谷のナウシカ』の解説ツイートまとめ
原画マンの担当カットがまとめられている。
英語版
英語題名は"Nausicaä of the Valley of the Wind"。
1985年にManson International and Showmen, Inc.が製作した改悪版が、"Warriors of the Wind"としてアメリカで公開された。ロジャー・コーマンのインディペンデント映画製作・配給会社New World Picturesが配給。子ども向けのアクション・アドベンチャー映画として公開するため、大幅に編集した。環境保護のテーマは削除され、王蟲は攻撃的な敵に改変された。登場人物の名前もほぼ書き替えられて、ナウシカはPrincess Zandraになっていた。また英語版の声優は物語のプロットを知らされないまま演じさせられた。そのうえ、英語版の声優の名前はクレジットされなかった。ポスターやVHSのカバーには、映画に登場しない謎の軍人たちが巨神兵に乗って描かれていた。
宮崎駿監督は"Warriors of the Wind"に激怒し、その後は外国の配給会社に対して「一切編集するな」という条件を出した。『もののけ姫』(1997)では、当時ミラマックス会長(創業者)だった性犯罪者Harvey Weinsteinが編集しようと企んだが、鈴木敏夫プロデューサーが編集するなと命じた。
2005年、ウォルト・ディズニー・スタジオのBuena Vista Home Entertainmentが、一切編集していないオリジナル版のDVDを発売した。
かつての日本映画は、プロデューサーや監督や著作権者である映画会社に発言権がなく、アメリカの"敏腕"プロデューサーの言いなりで作品を切り刻まれた。アメリカは契約社会だという事実を日本側が理解していなかったこともあるだろう。
契約条項に納得できないなら、契約書に署名してはならない。一度契約書に署名したら、すべての条項に同意したものとみなされる。納得できない契約は結ばない。納得できない条項は相手と交渉する。立場が弱い場合は特に、弁護士を雇うこと。会社や役所が個人と交渉する場合ですら、会社や役所の方が立場が強いのに、会社や役所は顧問弁護士を通す。自分たちに有利に進めるため、有利な条件を引き出すためだ。
法的な問題では、無知なのが悪い、となってしまう。
キャスト
ナウシカ:島本須美
アスベル:松田洋治
クシャナ:榊原良子
ユパ:納谷悟朗
大ババ:京田尚子
クロトワ:家弓家正
ジル:辻村真人
ミト:永井一郎
ゴル:宮内幸平
ギックリ:八奈見乗児
ニガ:矢田稔
ラステル:冨永みーな
ペジテ市長:麦人
ラステルの母:坪井章子
テト:吉田理保子
少年:坂本千夏、TARAKO、鮎原久子
少女:菅谷政子、貴家堂子、吉田理保子
コマンド:水鳥鐵夫
トルメキア兵:野村信次、大塚芳忠
ペジテ市民:中村武己、島田敏
ペジテの少女:太田貴子
スタッフ
監督:宮崎駿
脚本:宮崎駿
原作:宮崎駿
作画監督:小松原一男
動画チェック:尾沢直志、平塚英雄
色彩設計:保田道世
美術監督:中村光毅
撮影監督:白神孝始
編集:木田伴子、金子尚樹、酒井正次
音響監督:斯波重治
整音:桑原邦男
効果:大平紀義、佐藤一俊
音楽:久石譲
演出助手:棚沢隆、片山一良
制作担当:酒井澄
制作デスク:鈴木重裕
プロデューサー:高畑勲
製作:徳間康快、近藤道生
制作:原徹
アニメーション制作:トップクラフト
製作:「風の谷のナウシカ」製作委員会(徳間書店、博報堂)
配給:東映洋画
なかむらたかし 羽根章悦
小林一幸 小原秀一
高坂希太郎 庵野秀明
小田部羊一 才田俊次 高野登
池田淳子 渡部高志
富山正治 林貴則
原画補:吉田正宏 大久保富彦
動画チェック:尾沢直志 平塚英雄
動画:
佐々木よし子 高橋幸江
斉藤喜代子 水谷貴代
矢野順子 渡部由加里
長井和久 中村美子
谷沢泰史 多田幸子
田口裕美子 祝浩司 飯田馬之介
坂元大二郎 讃岐平 華房泰堂
近藤方子 前田真宏 池田和洋
動画協力:
OHプロダクション 草間アート AGU
スタジオトト スタジオアトン スタジオぽっけ
はしだプロ 動画工房 スタジオ501
色彩設計:保田道世
色指定:鈴木福男
特殊効果:水田信子
仕上検査:荻原穂美
仕上:
近江妙子 石井恵美子
古谷由実 菅野わか子
長嶺浩美 水間千春
山内真紀子 吉田政代
清水理智子 山室智弘
仕上協力:
イージーワールドプロ スタジオロビン
IMスタジオ はだしプロ 新生プロ
遊民社 スタジオ2001 スタジオ雲雀
ホクサイ ヤマトプロ AIC スタジオマリーン
ランダム ヤマトプロ
背景:
三浦智 青木龍夫
岡崎得江 杉山祐子
岡田和夫 下野貴美子
今村立夫 下野哲人
富樫佳子 村井弘子
千葉薫 高波美好
ハーモニー処理:高屋法子
撮影監督:白神孝始
撮影:首藤行朝 清水泰宏 杉浦守
協力:
高橋プロダクション
宮内征雄 平山昭夫 小林武男
撮影協力:アニメフレンド スタジオ35
音響制作:オムニバスプロモーション
録音スタジオ:新坂スタジオ
現像:東映化学工業
タイトル:高具アトリエ
演出助手:棚沢隆、片山一良
制作担当:酒井澄
制作デスク:鈴木重裕
制作進行:押切直之 神戸守 島崎奈々子
宣伝プロデューサー:徳山雅也
企画:
「風の谷のナウシカ」製作委員会
山下辰巳 奥本篤志
尾形英夫 森江宏