映画の後には紅茶とお菓子を

百合とアニメと映画の感想

『完全なる報復』の感想

完全なる報復
原題: Law Abiding Citizen
製作年:2009年
製作国:アメリカ合衆国

 

 

作品について

ヴィジランテ・アクション・スリラー映画。ヴィジランテ映画とは私刑や復讐を描いた映画。主人公が悪人という点では、ピカレスク小説、アンチヒーローやダークヒーローと似ているが、ヴィジランテは法制度の欠陥のために司法の裁きを受けない犯罪者を始末するという点が特徴。

ヴィジランテ映画の代表作としてクリント・イーストウッド主演の『ダーティハリー』シリーズが挙げられているが、警察官、検察官、裁判官が犯罪したらその時点でそいつの主張は説得力を失う。犯罪者警察官、犯罪者検察官、犯罪者裁判官は害悪でしかない。

 

原題は「法を守る市民」という意味。復讐する主人公の振る舞いのことであり、検事への風刺でもある。検察官は法に従い(という建前で自分と検察が勝つことしか考えず)、大勢を不幸にする。ダブルミーニング

 

完全なる報復 (字幕版)

完全なる報復 (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 
完全なる報復 Blu-ray Disc

完全なる報復 Blu-ray Disc

  • 発売日: 2011/07/06
  • メディア: Blu-ray
 

 

 

 

感想

不条理。復讐を遂げた主人公が死ぬことは、物語として美しい。しかし、復讐相手の検事が生き残り、娘との思い出づくりに浸っている終わり方がやるせない。クズ検事も主人公に殺されるべきだった。

「お前の人生もあと25秒」とクライドに言い捨てて立ち去るニックはまさに悪人そのもの。警察官や検察官が私情丸出しで被疑者や被告人に接するのは、自分も悪の道に堕ちた証拠。

 

 

検察官は勝つことしか考えていない。検察が公判で負けるのは屈辱。勝てる案件しか起訴しない。勝てない案件、権力者が絡む案件はすべて不起訴。検察官にとって犯罪被害者は、自分が勝つためのただの駒にすぎない。被害者がどんな被害を受けていようと、検察官には他人事。被害者に同情してみせるのはただの演技。パフォーマンス。強姦被害者に「私なら逃げられたのに」と暴言を言った検察官がいたそうだ。警察官も検察官も性犯罪被害者をセカンドレイプするのは日常茶飯事。警察官も検察官もサイコパスが多い職業という事実が研究で明かされている。サイコパスの検察官が公判で「涙ながらに供述書を読み上げる」などを行っている。演技。

作中でニックがクライドに「ムショ送り」と脅迫したように、現実の検察官も目的のためなら何でもする。

挙句の果てには検察官自身が違法行為を行う。検察官の犯罪は珍しくない。

www.jiji.com

検察官の私的な犯罪の中には、東京地検公安部検事・菅井健二の児童ポルノ所持事件がある。菅井健二は児童ポルノDVD大量に自宅に隠し持っていた

toyokeizai.net

gendai.ismedia.jp

検察官が職務において法を犯した。
2010年、大阪地方検察庁特別捜査部主任検事・前田恒彦は、無実の被疑者を刑務所にぶち込んで痛めつけてやろうと企み、検察が考えたストーリーに沿うよう証拠を改竄した。警察がストーリー通りに調書を作文したり恣意的に証拠を取捨選択したりすることは有名だが、検察も同様にストーリーありきで捜査する。検察官としてやってはならない行為であることは明白。その違法行為を現職検察官が平然と行った。さらに、前田恒彦の犯罪を知った上司の特捜部長・大坪弘道と特捜副部長・佐賀元明は隠蔽した。検察の面子を潰す、検察官の犯罪を組織的に隠蔽した。

さらには検察トップが犯罪者だった事実が明らかになった。
検察No.2である東京高等検察庁検事長・黒川弘務は違法賭博の常習者だった。昔から黒川弘務は同席していたマスコミ記者に機密情報を漏らしていた可能性がある。黒川弘務は最高検察庁検事総長の椅子に手をかけていた。検察幹部の仮面をかぶった犯罪者を、検察は罪に問わず放免した。検察官は身内の犯罪者に甘い、という事実を国民は思い知った。警察が警察官の犯罪に甘いのと同じ。

2020年初め、検察幹部は匿名で、2010年の検察庁組織犯罪から10年たって禊は済んだと豪語した。しかしそのすぐ後に黒川弘務の犯罪が発覚した。検察幹部は大阪地検特捜部主任検事証拠改竄事件をその程度にしか考えていないという意味。検察官の存在意義を自ら否定した不祥事を、禊が済んだと言い切る。検察官がいかに国民を舐めているかという証拠。

 

法務省検察庁をまとめて法務・検察と言う。検察庁法務省の特別の機関(下部組織)ということになっている。しかし法務省は、国家公務員試験に合格して法務省に入省した法務官僚だけではなく、司法試験に合格して検察庁に入庁した検事にも幹部の役職を与えるように定められている。実質、検察官が法務省を支配している。よって、法案を作成して国会議員に説明する時点で、検察官に都合のいいように法律は作られている。

 

警察官と検察官は捜査権、逮捕権、(検察官は)公訴権という強大な権力を持つ。警察官と検察官を信用して、法律や条令で権力を与えている。その警察官や検察官が犯罪する。

裁判官は憲法で身分が保障されているが、裁判官による犯罪などに対して国会で弾劾裁判を開き罷免することができる。だが警察官と検察官は警察と検察に人事権がある。警察官と検察官は身内の犯罪者に甘い。警察の監察官室や首席監察官は犯罪者警察官を懲戒免職にしない。法務・検察は犯罪者検察官を懲戒免職にしない。警察と検察は自浄能力がまったくない。

2度あることは3度ある。再び検察官による犯罪が起きる可能性は高い。

警察官の犯罪は日常茶飯事。警察官全員に警察官の犯罪をなくす気がないので、警察官はこれからも犯罪を続ける。特に警察官は性犯罪が多い。

警察官も検察官も他人に厳しく自分に甘い。

 

 

キャスト

ニック・ライス - ジェイミー・フォックス(藤原啓治)
クライド・シェルトン - ジェラルド・バトラー(森田順平)
ジョナス・キャントレル - ブルース・マッギル(楠見尚己)
サラ・ローウェル - レスリー・ビブ(恒松あゆみ)
ダニガン捜査官 - コルム・ミーニイ(中村浩太郎)
市長 - ヴィオラ・デイヴィス(林りんこ)
ケリー・ライス - レジーナ・ホール(さがらえみ)

その他日本語吹き替え:広田みのる、黒澤剛史、行成とあ、松本忍、村上裕哉

 

 

スタッフ

監督:F・ゲイリー・グレイ
脚本:カート・ウィマー
製作:ルーカス・フォスター、ジェラルド・バトラー、アラン・シーゲル、マーク・ギル、カート・ウィマー、ロバート・カッツ
製作総指揮:ニール・サッカー、マイケル・ゴーゲン
撮影監督:ジョナサン・セラ
編集:タリク・アンウォー
音楽:ブライアン・タイラー
製作会社:The Film Department, Warp Film, Evil Twins
配給:Overture Films (米国)、ブロードメディア・スタジオ / ポニーキャニオン (日本)