映画の後には紅茶とお菓子を

百合とアニメと映画の感想

『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』第10話の感想と、演出と作画

第10話
「されど舞台はつづく」

 

 

感想

cold open

落下する3D CGIのボタン。

木の葉をむしゃむしゃ食べるキリン。

「オーディション最終日です」

 

 

 

Aパート

どのカップルもいちゃいちゃ。

 

「どんなに遠い星を夢見ても、可能性を信じる限り、それは手の届くところにある」 ヘルマン・ヘッセ

 

バナナの蒸しパンを作っているななと、ななと一緒にいる純那。
ふさの緑色は食用色素かな。

柔道場に座る双葉と膝枕してもらっている香子。
エスタブリッシングショットのレイアウトが毎回凝っている。

蒸しパンの粉をぽろぽろこぼす華恋。お子様か。
食べながら喋る華恋の口の動きが波線。
リスの食べ方のひかり。齧歯類。ひかりもぽろぽろこぼす。
布巾で拭き取るまひる

2人を叱るまひるお姉ちゃんを上手に、叱られる2人を下手に。ちょうど壁の装飾で左右に分けられている。
(作画の負担を減らすために)床と足元は切られているけれど、小津安二郎監督のローポジションを意識しているのかな? ちゃぶ台の周りに正座しているし。
部屋を掃除しておきたいまひるに手伝うと提案する華恋とひかりだが、2人がやると余計に散らかりそうな予感がする。
まひるもそう思っているらしく、2人を部屋から追い出す。
華恋とひかりの肩を手前に、フレーム中央のまひるがドアをバタンと閉める構図が良い。
強気なまひるお姉ちゃんが可愛い。
華恋が約束を思い出しひかりの手を取って駆け出す様子を、部屋の中から聞いてるまひるがクスリと笑うコンテが良い。
まひるは華恋とひかりの約束のことを覚えていたのだろう。だからわざと部屋から追い出した。
はたきでバトントワリング。良い。
「さて、やりますか」が可愛い。

校舎の中を歩くクロディーヌ。第1話で華恋とまひるがひかりを寮に案内するときと同じ構図。
外に開いた扉とレッドカーペットでフレーム中央へ視線誘導。クロディーヌが中央にやってくると逆光で陰になる撮影処理。

真矢のシャドウ練習。レイアウトも芝居もカメラワークも良い。背景はカメラマッピング
誰かが練習室に入ってきたことに気づいた真矢の表情が良い。

練習室の中央にいる真矢には太陽の光が当たっていて、入り口にいるクロディーヌは影の中。
真矢は上手で手前、クロディーヌは下手で奥。

クロディーヌのクロースアップ。フレーム右半分。
真矢のクロースアップ。フレーム左半分。

レヴュースタァライトではおなじみの高い建物を見せるローアングル構図。
広角レンズ。高架橋が曲がって見える。

第4話でひかりが謎のLINEを送り続け、華恋が振り回されたときのメッセージ。
水族館でくらげの水槽を発見。
水槽の中から撮影した構図。
主導している華恋を上手で手前、華恋を見つめているひかりを下手でほんの少し奥に。ハイアングル。
次のカットでは2人が並んでくらげを見ている後姿。華恋が見つけてひかりと対等の立場になった。

水族館の入り口でフレーム右に向かって手を振る華恋と、フレームに歩いて入ってくるひかり。ロングショットで、かつエスタブリッシングショットになっている。ハイアングル。
これも水槽の中から撮影した構図。
主導している華恋を上手で手前、華恋を見つめているひかりを下手で奥に。右から左に歩く。ハイアングル。

東京タワーに向かって真っすぐな道を歩く華恋とひかりの後姿。ロングショット。アイレベル。
東京タワー水族館の店内から、床すれすれのローアングルで撮影。華恋は右側、ひかりは左側。店の外で立ち止まり、店内に足を踏み入れていないのは意図的なコンテでしょうか?
ひかりの横顔を手前に、華恋のクロースアップ。
続いてひかり単独のクロースアップ。

真矢クロのお腹と脚の隙間から鏡越しに2人を見せる構図が良い。
このカットの効果を高めるために、その前のカットは真矢のお腹に抱き着くクロディーヌのクロースアップと真矢のクロースアップにとどめて全身を見せないようにしていた。

ティルトして真矢の身体を見せながら、手を差し出すクロディーヌのPOVショット。つまりクロディーヌは真矢を舐めるように見ていた、と。
自信満々のクロディーヌのクロースアップ。フレーム右半分。
審査員の先生2人によってフレーム中央の真矢クロディーヌに視線誘導。生徒達に太陽の光を当て、先生達は影の中にいるのも視線誘導。あと、真矢クロの後ろだけ窓ガラスの逆光の効果を強めている気がする。
真矢のグラン・パ・ドゥ・シャ。ローアングルで撮り高く跳躍していることを強調。第1話や第8話よりも急角度で撮影。*1
クイックPANで生徒たちが受けた衝撃を強調。
クロディーヌも生徒達も左向き。
真矢のバレエの一瞬を切り取ったカット。ティルトで強調。逆光。

「覚えていますよ、もちろん」と、真矢もクロディーヌをずっと見ていたことを告白。
目を見開き、口に笑みを浮かべ、恥ずかしくて目をそらす。表情芝居が良い。
「でも……merci.」

クロディーヌの部屋に掛けてあるポスターは、スタンリー・キューブリック監督の『時計じかけのオレンジ』のパロディー。優れた映画だけど、おすすめできる映画ではない。
"A Clockwork Omuraice"だろうか。スプーンを持っていることと、レヴュースタァライトの作中にオムライスが登場していることから。元ネタはOrangeのRがOの後ろに隠れているので、OmuriceのMも隠れていると考えて。

クロディーヌが勝ち取ってきた表彰状やトロフィーの数々。その中央に置かれた写真立て。
クロディーヌにとってクラスメイト達が大切な仲間であること、去年の聖翔祭が大切な思い出であることがわかる。

姿見というよりは大きな鏡か。
大きな鏡の前で向き合う真矢とクロディーヌ。真矢が上手でクロディーヌが下手。
PANに合わせて、鏡に映った姿も変化。電車から見える景色と同じで、手前の物は速く、奥の物は遅く動いて見える。アニメーションに限らず、実写映画の車窓もマットペインティングなどで同様のことが行われている。ここ20年くらいは窓の後ろにグリーンスクリーンを置いて撮影し、ポストプロダクションでVFXとしてマットペインティングをデジタル合成している。

「楽しみにしています。西條クロディーヌ」と言う真矢のクロースアップ。フレーム右半分。この台詞だけフルネーム呼び。
「ほんと嫌な女」と言うクロディーヌのクロースアップ。フレーム左半分。

お土産を見る華恋とひかり。
華恋の王冠の髪飾りとひかりの星の髪飾りが向き合う位置。

東京タワー型の照明器具。ここもPANに合わせて2人と照明器具の移動速度が違う。
照明器具の間からローアングル。
差し出す手のクロースアップ。
カメラを引いてPAN。
華恋の肩越しにひかりのミディアムショット。over the shoulder shot。
ひかりの手が差し出され、華恋の手と重なる瞬間に手だけのクロースアップに切り替える。

幼き日の華恋とひかり。

台詞に合わせ、幼いひかりと現在の華恋、幼い華恋と現在のひかり。

スタァライト」を演じる現在の華恋とひかりと、2人を見守る幼き日の華恋とひかり。この発想はベタだけど良い。

夕方、東京タワーそばの公園。
ベンチ中央にひかり、右側に華恋。後姿。
ここでも髪飾りが向かい合う位置。

幼き日のひかり。目元に陰を落とし、目のあたりでフレームを切ることで表情を見えなくする。あひるの遊具。

「また来ようね、ひかりちゃん」
「うん、華恋。いつか……また」
思わせぶりな台詞。
「ありがとう、華恋。ずっと約束を覚えていてくれて」
「私と、私達になってくれて」
「だから……」

 

Bパート

地下劇場に落ちてくる純那。上手い原画。
純那、なな、まひる、双葉、香子の順で着席。

法廷。
右の座席に真矢、左の座席にひかり。中央奥には、右にクロディーヌ、左に華恋。シンメトリー。

「飛び入り参加された方がいらっしゃいまして、スケジュールの調整が必要になりました」。本当かいな。
キリンをローアングルで。強大さを強調。

キリンの首越しに、4人をハイアングルで。キリンが上手。
レヴューデュエット。

「やっぱり2人でスタァライトになれるんだよ!」と喜ぶ華恋に対し、いぶかしげなひかり。
キリンのクロースアップ。フレーム左半分。

真矢が引き出しを引き、箱を開け、ボタンを掴んで握り拳を見つめ、一呼吸置き、笑みを浮かべてボタンを投げ、クロディーヌがボタンを掴む。一連のカットが良い。
一方、ひかりはあっさり。ひかりの表情も冴えない。華恋もそんなひかりの様子に戸惑っている。

お弁当。
香子が立ち上がるときは双葉が一緒に映るような構図。ハイアングル。
香子の帰るという言葉に、あたしは残ると返す双葉をローアングルで。
双葉は割り箸を割り、純那はお手拭で手を拭き、まひるは飲み物を手にしているのに、ななはもうお弁当をほおばっている。

「レヴューデュエット。わかります」
キリンをローアングルで。ティルト。

 

レヴュー

「アタシ再生産」
第2話以降、金属の線状の装飾を3本プレスした際に、装飾に茶色の焦げか灰がついている。
またBANKが第1話よりも第2話以降は短くカットされている。尺の都合か、演出意図か。

鉄骨の上に立って口上を述べるクロディーヌと真矢のカット。レイアウトと舞台照明が格好良い。

「オーディション最終日。運命のレヴューの開演です」と言うキリンのカットはシンメトリー。

運命のレヴュー
Star Divine -finale-

クロディーヌと斬り合いながら、隙をついてクロディーヌを倒そうとする刈り技が上手い。
しゃがんだ左足を支点に、右足の脛で相手の左足内側を払う。

真矢に突かれ、吹き飛ばされ地面を転がる華恋のカットも上手い。煙のエフェクト作画。

「わかる。わかるわ」
「あなたがどう動いてどう跳ぶのか」
「あんたに付いていけるのは」
「私に付いてこられるのは」
「西條クロディーヌ」
「天堂真矢」
真矢クロ以心伝心。

「大サビからキャッチ!ぐるーー!!まで!!!(ネタバレ回避ふんわり)」の原画を岩井田夏帆さんが描いている。*2
4年前にゼロから動画を始めて、2年半前には動画検査、1年半前には第二原画、現在は原画を担当できるまでになったらしい。*3 作監修正、総作監修正が入っていることを考慮しても、良い出来だと思う。

跳躍した真矢の突き、ひかりに投げられた華恋の突き。どちらも外連味たっぷりな人物アクション。

インパクトの瞬間に跳ね飛ばされるボタン、宙を舞う上掛け、ティアラを戴く星摘みの塔、落下する上掛け、クロディーヌの顔が隠れたミディアムショット、落下する上掛け、中央からやや右寄りのキリン、足元に着地する上掛けからのティルトで真矢の後姿。一連のカッティングが良い。

華恋とひかりの衣装の間から見えるクロディーヌへの視線誘導。スポットライトが当たることで一層効果をもたらす。

クロディーヌの言葉に、直視できない双葉と香子。

悲劇のレヴュー

「わかります」と言うキリンのクロースアップ。ローアングル。

「ありがとう、華恋」
ひかりの口元のエクストリームクロースアップ。表情は見せません!

華恋の後姿越しにひかりのミディアムショット。どちらの表情も見せません!
左から右へのPAN。

星摘みの塔から見下ろすハイアングルショット。レイアウトが良い。

ひかりのクロースアップ。ようやく表情が見える。

華恋の目のエクストリームクロースアップ。瞳のハイライトが動きます。

左手の短剣で斬り上げるひかり。
左に飛ばされていくボタンと華恋の胸元。

少しカメラを引いて華恋ののバストショット。理解できていない華恋の表情が見える。

舞台装置から落下する華恋をローアングルからとらえたショット。レイアウトが良い。

まっすぐ下に落ちていく華恋をフォローPAN(ティルト)。第1話の夢の中で東京タワーから突き落とされた華恋と同じ構図。
急にカメラが止まるので、華恋が上昇したように見える。

華恋の右側面からクロースアップでフォローPAN(ティルト)。
まだ思考が追いついていない。

鉄骨か赤い光がカメラの前を遮りinvisible cut。whip pan。

「だから、さよなら」
涙を浮かべながら微笑むひかり。右側の背後にティアラの光。

 

次回予告

「わたしたちは」
花が8枚。
ひかりの色だけがない。

 

 

 

まとめ

レヴュースタァライトの制作現場でスケジュールがないことが如実に表れた話数だった。
絵コンテが3人、演出が3人。パートごとに分担したと考えられる。
作監19人、原画作監3人、総作監はいつも通り2人。

原画を外国のスタジオにたくさん出しているので、それを作監と原画作監で全修正、つまり没にしてレイアウトと原画を一から描き直したのだろう。
音響の作業をするために初期段階でカッティング(編集)する必要があり、そのためにダミーの原画で尺を埋めることがあると聞いたことがある。

外国のスタジオの中には人海戦術で上げて短期間で納品できるところがある。
クオリティに文句を言うのは筋違いではある。
そもそも日本の元請けやグロス請けの制作会社のスケジュール管理が悪いせいなのだから。

今までは二原動仕など第二原画を外に出していたが、第一原画は個人個人に頼んでいた。
それができなかったということだ。

作画監督の多さは後半のレヴューに人をまわすためでもあったのだろうけれど。

それでも苦しい状況の中、ここまでなんとか引き上げたスタッフの皆さん、お疲れ様です。

第9話の感想に書いたように、今回も外国のアニメーターが参加している。
Franziska Van Wulfenさん、Joaoさん、Spikeさん。
レヴュースタァライトの苦しい事情を知って手を挙げてくれた人達だ。

 

 

 

 

スタッフ

脚本:樋口達人
絵コンテ:小出卓史、黒田結花、古川知宏
演出:横内一樹、塚本あかね、山田卓
 
総作画監督:伊藤晋之、齊田博之
 
作画監督:大下久馬、小栗寛子、角谷知美、黒田結花、小池裕樹、小出卓史、
     小里明花、清水海都、摺木沙織、髙澤美佳、谷紫織、錦見楽、
     樋口香里、松尾亜希子、安田祥子、和田伸一
 
     ぎふとアニメーション
     森賢、多田靖子
 
     スタジオリング
     徳田拓也
 
原画作画監督:河本零王、杉山有沙、森公太

原画:
黒田結花 岩井田夏帆
 
Franziska Van Wulfen
Joao Spike
 
荒川眞嗣 飯田光尋 内田シンヤ 門木祐介 菊池一真
南部允宏 山本貴則 吉田徹
 
スタジオリング
山本勝也 若山佳治
 
P・T・Cマジック
星山規格
 
セブンシーズ K-プロダクション

第二原画:
浅尾晃成 大島由葵 大下久馬 小里明花 上武優也
河本零王 小出卓史 桜咲新 清水海都 杉山有沙
田仲寛基 塚本あかね 中台昂文 松尾亜希子 森公太
横内一樹
 
徳田大貴
 
スタジオリング
菊田裕司
 
STUDIO CL TAP セブンシーズ

動画検査:髙橋千尋渡辺美佐

デジタル動画:
Kinema citrus
伊野波沙玖美 岩田真衣 上武優也 工藤真奈 齋藤穂波
髙橋千尋 等々力里菜 前田千景 渡辺美佐
 
ぎふとアニメーション
筧みゆき 木下真澄 城彩花 早瀬未悠

動画:
森公太
 
STUDIO CL セブンシーズ BigOwl R.I.C
TAP

色指定・検査:上野耕自(すたじおガッシュ)

仕上:
Kinema citrus
岡松杏奈 松本麻衣 渡邉由佳
 
STUDIO CL セブンシーズ BigOwl R.I.C
TAP

検査補佐:千崎美賀子、植木義則・山口由希子(すたじおガッシュ)

美術設定:福田健二
美術監督補佐:石田幸

背景美術:
スタジオPablo
座間智子 鈴木隆之 水野隆文 村上和浩 福田健二
矢口聖奈 斎藤瑞貴 土橋久美
 
須藤理子 長澤康治 花田千恵子

撮影:
T2 studio
鈴木麻予 タン シャイフイ 鳥山将司 塚越美乃莉 大塚美奈子

撮影監督補佐:赤須由麻
 
ラインテスト:
アスラフィルム マジックバス STUDIO CL TAP

3DCG:
T2 studio
武川佳史

特殊効果:小川猛(T2 studio)
 
2D ワーク:
濱祐斗デザイン事務所
Kinema citrus

フランス語監修:中村彼方、Thais MERCIER

制作進行:傳田晃一

seesaawiki.jp

*1:このカットはシリーズ序盤で存在していたのに本編では没になっていたと以前見た気がする。気のせい? デジャヴュ?

*2:https://twitter.com/kuubyo/status/1040283625210634240

*3:https://twitter.com/kuubyo/status/978988870741053442