映画の後には紅茶とお菓子を

百合とアニメと映画の感想

『白い砂のアクアトープ』第13話感想: 風花という名の女神降臨

『白い砂のアクアトープ』第13話「海の遥かなティンガーラ」

 

 

作品について

第2クール。

篠原俊哉監督は『凪のあすから』(2013)と同じように、2クール作品の途中で物語を大きく変えてきた。第一部完、第二部開始。

がまがま水族館から、アクアリウム・ティンガーラへと舞台が移る。

新キャラクターが大勢登場する。

 

安藤真裕さんが絵コンテ。

太田知章さんが演出。

 

 

感想

1クールだとあっという間に終わっちゃうから、2クールあると長く楽しめる。登場人物の掘り下げや、物語の進み方も限られるし。

 

アパートで一人暮らしを始めたくくる。OPで風花が隣の部屋に引っ越してくることが示唆されている。

スカートスーツ姿のくくるも可愛い。

櫂もおじいの紹介でティンガーラに就職。櫂は飼育部魚類担当。くくるは営業部企画広報担当。夏凛も営業部の販売促進や商品開発などを担当。

夏凛と空也とウミやんは中途採用で、半年間ティンガーラで働いている。

どんちゃんがバイトしている飲食店「Ohana」。安藤真裕監督『花咲くいろは』(2011)の松前緒花が元ネタ。ハワイ語で家族の意味。

朱里は積極的にくくるに話かける。初対面で、断りなしに頬に触るのは、パーソナルスペースに踏み込みすぎだと思うけど。

瑛士は櫂と空也と気が合いそう。院卒だけど学歴を鼻にかけない。むしろ経験者を敬うような雰囲気。(現実的にポスドクはいろいろと大変だから。)

 

やっぱり水族館や海の生き物が大好きなくくる。

第9話のCパートで、くくるがティンガーラの建設現場を見に来ていたけれど、外観以上に内部が凄い。

films.hatenablog.com

 

iMacMicrosoft WindowsMac も両方使っている。プライベートなら好みで選べばいい。仕事なら慣れなさい。という印象。

館長はくくるに期待している、と。

副館長の諏訪哲司は厳しい。理想論を打ち、マニュアルを全部読ませ、いきなり新人に仕事をさせる。OJTという概念がない。他の人がいる場で叱責。パワハラ

とても慇懃無礼な知夢。その一方で、ティンガーラの蔵書を借りて読むなど勉強家、努力家の面も描かれた。

社内メールを読んでいない従業員たち。朝礼で聞いていない事項はすぐには対応できない、と。

仕事の厳しさ。"社会人"を思い知ったくくる。

 

 

新しいオープニングテーマもエンディングテーマもいいね。オープニングアニメーションもエンディングアニメーションも。

第1クールOPに引き続き 10GAUGE の依田伸隆さんがOPディレクター・画コンテ、太田知章さんが演出。

篠原俊哉監督がEDの絵コンテ・演出。

 

 

演出

新入社員が館長を待っているとき、くくると櫂の会話を横目でちらっと見ている瑛士。のちにくくるたちと親しくなり、グループに加わることを示唆している。

 

営業部の部屋に入るときは、木製の衝立を通した構図がとられている。くくるにとっての営業部が檻であることのメタファー。

 

第9話感想にも書いたけれど、安藤真裕監督は水族館の生き物の給仕に関する話数で絵コンテを担当している。

films.hatenablog.com

 

入社早々失敗して怒られた。意気消沈しているくくるは、夕暮れの建物の影をとぼとぼと歩く。

 

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くくるにとっての女神風花 ©projectティンガーラ

側にいてほしいときに、くくるの前に現れる風花。

くくるのPOVショット。ローアングル(煽り)。脚から身体を通って顔に目が行くカメラワーク。

風花の表情。風花はくくるの女神。

 

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白いドレス姿で月明かりの夜に立つくくると風花 ©projectティンガーラ

新EDの、マーメイドラインのようなドレスを着ているくくると風花の後姿カットが素敵。ローアングル(煽り)でパースを利かせている。

篠原俊哉監督がエンディングアニメーションの絵コンテ・演出。

 

 

米倉マリナ

キャラクター紹介のキャストコメントで、米倉マリナを演じる東山奈央さんが

ベネズエラにルーツを持っていてスペイン語をポロッと喋ることもある

と書いている。

アニメや漫画などで、外国出身や、親や祖父母など外国の出自を持つキャラクターはときどき描かれる。でもベネズエラは珍しい。

指揮者のグスターボ・ドゥダメルさん、シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラ(現名称"Simón Bolívar Symphony Orchestra")らが知られている。ベネズエラには「エル・システマ」という音楽教育プログラムがある。子どもたちが音楽の楽しさを学ぶことで、犯罪や裏社会の誘惑から子どもたちを守ろうという理念で設立された。グスターボ・ドゥダメルさんやその交響楽団は、大成した出身者たち。

BBCプロムスでの、彼らの演奏を観てほしい。リアル『のだめカンタービレ』。指揮者も演奏者も観客も楽しんでいることがわかる。


Gustavo Dudamel - Bernstein: West Side Story - Mambo (Sinfónica Simón Bolívar Orchestra, BBC Proms)

レナード・バーンスタイン作曲、スティーヴン・ソンドハイム作詞、アーサー・ローレンツ脚本のブロードウェイ・ミュージカル『ウエスト・サイド物語』より「マンボ」。

ロバート・ワイズ監督&ジェローム・ロビンズ監督の名作映画『ウエスト・サイド物語』(1961)がある。

また、スティーヴン・スピルバーグ監督・製作のリメイク『ウエスト・サイド・ストーリー』(2021)が今年12月10日に公開予定。

グスターボ・ドゥダメルさんはジョン・ウィリアムズさんのコンサートで指揮をした縁で、J・J・エイブラムス監督・製作『スター・ウォーズ フォースの覚醒』(2015)のオープニングとエンドタイトルの音楽を指揮した。大部分の音楽の指揮は、ジョン・ウィリアムズさん自身とウィリアム・ロスさんが担当。ウィリアム・ロスさんは、多忙のジョン・ウィリアムズさんに代わり、クリス・コロンバス監督・製作総指揮『ハリー・ポッターと秘密の部屋』(2002)で編曲と指揮を担当した。

films.hatenablog.com

ジョン・ウィリアムズ作品集を発売した。管弦楽ロサンジェルス・フィルハーモニック。多くの人が聞いたことがある映画音楽を集めた名盤。映画音楽ではないけれど、1984ロサンゼルスオリンピックのテーマ曲 "Olympic Fanfare and Theme" は出色の出来。

www.universal-music.co.jp

 

 

 

キャラクター原案

キャラクター原案のU35(うみこ)さんがワコムのインタビューに登場している。

tablet.wacom.co.jp


イラストレーター U35 - Drawing with Wacom (DwW)

 

 

プロデューサーがU35さんの同人誌やイラストを見て印象に残っていたことがきっかけで、プロデューサーからTwitterのDMでキャラクター原案の話をもらったそうだ。

ナガッチョこと永谷敬之さんはインタビューで度々、キャラクター原案の担当者は自分が推薦して決めていると発言している。

akiba-souken.com

ポニーキャニオンのプロデューサーだった石黒達也さん(その後日本アドシステムズ(NAS)に移籍し、現在はADKグループに所属)は、「オリジナルアニメの企画は、監督、シリーズ構成、キャラクターデザインという3つのクリエイティブ面の柱のうち2つに知名度があるクリエイターがいないと成立させるのは難しい」と述べている

何十万部も売れている原作をアニメ化するような企画であれば通し方はありますが、まったくのオリジナルの企画を通す訳です。製作委員会を組成するため、各社さんに説明して参画して頂く上で、3本の矢のうちの2本がやっぱり強力でないと、なかなか決断していただけません。

視聴者へのアピールも製作委員会の組成と同じで、放送前・公開前の段階で人を引き付けることができる一番わかりやすい要素がキャラクターデザイン。イラストレーターや漫画家にキャラクターデザイン原案を描いてもらって、それをアニメーターがアニメ用にデザインし直す。

オリジナルアニメって、観てもらうまではおもしろいかどうか、わからないわけですよ。なので、観てもらうためのハードルを下げる必要がある。ここはマーケティングに繋がっていく部分で、一番効果的で、ファンの皆さんに期待感を持ってもらえるのがキャラクター原案だと思ってます。

(2ページ目)プロデューサー・永谷敬之 ロングインタビュー!(アニメ・ゲームの“中の人” 第46回) - アキバ総研

ただ、キャラクター原案とは、あくまで原案である。イラストレーターや漫画家は、紙という平面上で見栄えがするように描く傾向があり、演出意図に沿って360度どの角度からでも描く必要があるアニメでは、そのままでは使えない。また、イラストや漫画のように一枚絵ではなく、アニメは動きがある。だからアニメーターがアニメ用にデザインする。立体として破綻がないようにデザインする。線の数が多いと描くのに時間がかかり、また設定画通りに描くのが難しく、作画監督総作画監督に負担がかかりすぎるため、線を整理する。昔は原作漫画の絵柄と大幅に違うアニメが多かったが、近年では原作者の特徴やキャラクター原案の人の特徴を踏まえたキャラクターデザインが主流。監督やプロデューサーや製作委員会から、原作や原案にもっと近づけて、と注文されることがよくあるそうだ。

 

 

Blu-ray Disc

 

 

 

CD

 

 

 

 

キャスト

海咲野くくる:伊藤美来
宮沢風花:逢田梨香子
照屋月美:和氣あず未
久高夏凛:Lynn
仲村 櫂:土屋神葉
屋嘉間志空也阿座上洋平
南風原知夢:石川由依
島袋 薫:小松未可子
真栄田朱里:安野希世乃
米倉マリナ:東山奈央
比嘉瑛士:永野由祐
星野 晃:てらそままさき
諏訪哲司:日野聡
雅藍洞凡人:阪口周平
具殿轟介:櫛田泰道
おじい:家中宏
おばあ:定岡小百合
宮沢絵里:園崎未恵
照屋さつき:儀武ゆう子
城居ルカ:菊池紗矢香
マネージャー:前田玲奈
竹下先生:花澤香菜
キジムナー:儀武ゆう子
くくる母:前迫有里紗
くくる父:村井雄治
神里:田中秀幸
仲村真帆:広瀬さや
知念 類:北守さいか
金城看護師長:名塚佳織
上原愛梨:塙真奈美

 

 

第13話スタッフ

脚本:柿原優子
画コンテ:安藤真裕
演出:太田知章

総作画監督:秋山有希
作画監督:井上裕亮、中山みゆき、佐野このみ、中島美子、鍋田香代子、前田義宏
作画監督補佐:Lee Sang jin、Ho Sung Jin

原画:
 今井史枝 夏住愛子 冨田真理
 劉淯源 仁井宏隆 竹内一将
 月岡英明 じゅう 佐藤愛莉
 ユキシズク 李文生 清水博明
 松下純子 瀧澤茉夕 井上高宏
 玉置典彦 サトウユウ

第二原画:
 P.A.WORKS
 松宮杏実 小林瑞季

 菊地智子

 J-CUBE
 Kim Sook Hee Kim Won Hee Shin Yu mi
 Min Sun young Kim Jong Im

 中村プロダクション Be Loop
 FAI インターナショナル
 セブンシーズ ガイナックス京都
 スノーライトスタッフ 朱夏
 月面 半扇門

動画検査:
 P.A.WORKS
 髙田友美 藤嶋未央 白敷桃子

動画:
 DRMOVIE
 Min Hong-yi Jung Ju-ri Yoon Eun-joo Lee So-yeong
 Gong Jin Lee Seon-mi Kim Boo-kyung Son Yeong-ju
 Anh Mi-gyeong Kim Kwan-woo Jung Ju-ri Cho Chae-won
 Choi Mi-na Lee Mi-ok Heo Young-jin Ko Jin-ju
 Jang Sun-hye Choi Eun-ju Jang Hee-doek Lee You-jin
 Yi Min-kyoung Kim Young-won Lee Eun-bin Lee Da-young

 Jeon Hae-jin Jang Chul-ho

 つむぎ秋田アニメLab
 都築英哲 アイシャ ハナ サレハ 佐藤結希 藤田紗矢香
 山内真月 島田凌汰 溝渕美穂 髙橋諒悟
 平塚萌 戸井田慶斗 重光亮摩

 J-CUBE
 Kim Sung Ju Ding Qishu Park Soo In

動仕管理:Kim Seok-jeong
翻訳:Moon Seong-ho

色指定:
 ステラ・ロード
 越田侑子

仕上げ検査:
 ステラ・ロード
 永井唯香

仕上げ:
 ステラ・ロード
 門松諭生 江口亜紗美 奥智恵 新井理恵
 大場昭子

 DRMOVIE
 Yoo Young-hye Park Se-na Jung Su-hyun Kim A-jin
 Kim Min-lee Park One-jung Hwang Seong-kyeong Lim Jung-a
 Kim Min-ju Kim Ok-hee Jung su-young Choi So-ri
 Lee Eun-jeong Jo Ye-jin Kwon Min-kyoung Kim Min-one

 Kim kyoung-hwa Lee Jin-hee

 つむぎ秋田アニメLab
 錦織成 清澤唯人 池田孝輝 中村香穂

 J-CUBE
 Kil Eun Sook Kim Hee Sook

 D-COLORS

背景:
 スタジオ・イースター
 秋山慎太郎 石川真理 朝倉大智
 曽根原理恵 阿部真大 志村美幸
 干場佳織 田中伸哉 片岡乃梨子
 岩田百代 楊梦龍 小浦未来
 今井公平 工藤洋幸 季豊裕
 佐久間仁 真鍋暁子 清水順子
 鈴木くるみ

撮影:
 T2studio
 並木智 朝日康平
 福島敏行 佐藤陽一
 タン シャオ フイ 児玉純也
 兼久卓

2D works:村上瞭

3DCG:
 P.A.WORKS
 林誠一郎 伊東大毅 平山吾楽
 田口優香 郭超儀 鈴木晴輝

3Dモデリング
 P.A.WORKS
 井上佑紀 大野陽生 森重柚香
 郭超儀 川上真菜美 田口優香
 伊東大毅 林誠一郎 鈴木晴輝
 市川元成

 T2studio
 武川佳史 日塔友恵 秋元央

 バイブリーアニメーションCG
 箕輪綾二 菊地学 河野真一朗
 李植 原品貴好

Special Effects:村上寿美江

担当制作:甲斐直樹

 

 

オープニングアニメーション

OPディレクター・画コンテ:依田伸隆(10GAUGE)
演出:太田知章

総作画監督:秋山有希
作画監督:宮崎司

原画:
 P.A.WORKS
 三好有香 柳原一義 飯沼篤哉 松宮杏実
 小林瑞季 田邊有紀 川邉あや 宮尾拓明
 塩川友哉

 杜野都 坪内克幸 山崎絵里 夏菜
 きーくん 冨谷美香

動画検査:
 P.A.WORKS
 室賀由起子

動画:
 DRMOVIE
 Min Hong-yi Park Hyeon-ju Yoon Eun-joo Lee So-yeong
 Gong Jin Kim Kwan-woo Choi Wonjun WangTianXiao
 WangXIN LiuEuBao YinHaoTian YinMengFei
 WangDongYang

 Jeon Hae-jin Jang Chul-ho QiaoXuXiang

色指定:越田侑子(ステラ・ロード)
仕上げ検査:菊地慶翔(ステラ・ロード)

仕上げ:
 ステラ・ロード
 門松諭生 永井唯香 奥智恵 新井理恵

 DRMOVIE
 Yoo Young-hye Park Se-na Jung Su-hyun Kim A-jin
 Kim Min-lee Park One-jung Hwang Seong-kyeong Lim Jung-a

 Kim kyoung-hwa Lee Jin-hee

背景:
 スタジオ・イースター
 清水順子 温水陽子 干場佳織 田中伸哉
 曽根原理恵 岩田百代 片岡乃梨子 小浦未来
 季豊裕 今井公平 鈴木くるみ

撮影:
 10GAUGE
 松木大祐 小林敦史 泉香織

3DCG:郭超儀(P.A.WORKS)

担当制作:城村輝

 

エンディングアニメーション

画コンテ・演出:篠原俊哉

原画:
 P.A.WORKS
 松宮杏実 小林瑞季

動画:
 P.A.WORKS
 白敷桃子 藤嶋未央

色指定・検査・彩色:
 ステラ・ロード
 中野尚美

背景:
 スタジオ・イースター
 鈴木くるみ

撮影:
 T2studio
 朝日康平 兼久卓

担当制作:甲斐直樹

 

 

メインスタッフ

原作:projectティンガーラ
監督:篠原俊哉
シリーズ構成:柿原優子
キャラクター原案:U35
キャラクターデザイン・総作画監督:秋山有希
生きもの設定・サブキャラクターデザイン:牧野博美
プロップ設定:宮岡真弓
色彩設計:中野尚美
美術監督:鈴木くるみ
美術監修:東潤一
美術設定:塩澤良憲
撮影監督:並木智
撮影監督補佐:朝日康平
3D監督:鈴木晴輝
特殊効果:村上正博、村上寿美江
編集:髙橋歩
音響監督・整音:山田陽
音響効果:山谷尚人
録音:松下春香
音楽:出羽良彰
音楽プロデューサー:臼倉竜太郎
音楽A&R:吉池真由美
音楽制作:ランティス
方言監修:儀武ゆう子
水族館監修:魚津水族館
水族館取材協力:足立区生物館、サンシャイン水族館しながわ水族館、DMM かりゆし水族館、横浜・八景島シーパラダイス
協力:一般社団法人 南城市観光協会
企画:鶴田直一、安藤卓、櫻井優香、辻󠄀充仁、横沢隆、金子広孝、前田吉輝、小川泰
製作:町隆幸、白石俊博、吉江輝成、堀川憲司、篠崎文彦、伊藤幸弘
プロデュース:infinite、永谷敬之、茂山愛保、浜辺恵那
プロデューサー:藤野麻耶、山口慶、仲村直人、尾形光広、齋藤宙央、岩佐貴博、大森慎司
アシスタントプロデューサー:池亀彩加、池田智和、片山怜子
ラインプロデューサー:橋本真英
制作デスク:小西翼
設定制作:舘彩華
アニメーション制作:P.A.WORKS
製作:「白い砂のアクアトープ」製作者委員会(DMM pictures、フォアキャスト・コミュニケーションズバンダイナムコアーツ、ピーエーワークス角川メディアハウスTOKYO MX、AQUA ARIS、BSフジ)