『イエスタデイをうたって』第2話「袋小路」
感想
美容師さん。
恋愛映画における「ヒロインのゲイ友」についての北村紗衣さん*1の記事が興味深い。
出席簿の野中晴に赤線が引いてある。ハルが退学したのはそれくらい唐突だったのかな。事前に先生や学校と話をしていないので、書類がそのまま。
教え子が巣立つというのは先生にとって感慨深いものなのだろうね。
自分の経験を踏まえて、慰労会で語ってもいいのよと助言する杜田先生。
卒業生から頼まれて一緒に記念写真を撮っていることから、森ノ目榀子が生徒から慕われていることがうかがえる。
同僚の先生に教室に忘れ物したから先に行っててくださいと、森ノ目榀子が慌てて走り去る芝居が上手い。廊下に置いたカメラからのレイアウトで。
早川浪が布をたたむ芝居が上手い。しかも浪を背中から撮影したショットで描いてる。より難しいレイアウトで。
慰労会で杜田先生に「こっちにいい人がいるとか?」と尋ねられ、「いえ、そういうわけでは……」と首を横に振る榀子の芝居が上手い。
リクオも浪も榀子が髪を切ったことに気づいた。そういう変化に気づいてもらえることを喜ぶ女性は多い。
レイアウトと演出
「呆けた感じじゃん。何かあったの」「桜を見てたの。桜ってあんまり好きじゃないんだけど、綺麗だよね」という会話で、1カットだけブランコや柵を意図的に使ったレイアウトがある。
フレーム内フレームというか、榀子とリクオを隔てる枠というか。そんな演出なんだろうか。
前後のカットでもリクオは榀子のそばに寄らず、ブランコや柵で間を区切られている状態が続く。
やっぱり告白して振られた/告白されて断ったことによる気まずさの演出かな。
リクオが家まで送るよと歩き出すと、リクオの肩が榀子の顔と重なる。リクオの背中を見て誰かを思い出す榀子。
だからしばらく公園にいると断り、再び榀子とリクオの間は太い木の幹で分かたれる。
「もしね、魚住君が私のこと少しでも見どころのあるやつだって思ってたら、私をただの友達として見てほしいの」と語る場面で、榀子とリクオの間の柵をじわパンで強調。
ハルが現れると、ハルはリクオと榀子の間に立つ。リクオに好意を寄せているハルが、まるで榀子を威嚇するかのように。
ハルとリクオは同じ空間にいるけれど、榀子は柵の内側。リクオと榀子は結ばれないという暗示?
榀子の過去
リクオと浪、ハルと榀子の場面をクロスカッティング(別名・並行モンタージュ)。
浪がバイト中のリクオに食って掛かるショットで、女子高校生のお客さんがコンビニに入ってくる描写が自然さを表していていいね。と思ったら、その女子高校生が浪やリクオを見て驚いていた。けれどもその女子高校生はその後関わらないので、ただのモブキャラクターだったのか。
そういう話は外でやれと指示する木ノ下さんは流石。
対抗心むき出しの浪。「子ども」だね。大人になればその言動が子どもっぽいとわかるかも。
早川湧はわざと榀子を突き放していたのだろうね。結果的に榀子は引きずっている。過去に囚われている。
「勝負する気はないな」「じゃあお友達もやめてよって言ったら?」という会話の直後、お花見の男女グループが通り過ぎるまで待つハルと榀子。
この女子2人男子2人のグループが異性の「友達」を示唆する演出なのかな。だからこのタイミングで画面に登場させた。
「私、やっぱり先生に宣戦布告する!」と高らかに言ったハルを桜の花びらがnatural wipeしてハルの顔にクロースアップ。
再度natural wipeで榀子の表情をとらえる。
王道で効果的な編集と演出。
「だからってどうするわけじゃねえんだけど。ほんで今まで通り友達みたくしてっけど。下心ありだから。そう思っててくれよ。嫌か? そういうの」とリクオに言われた榀子の繊細な手の芝居。「目は口ほどにものを言う」ならぬ、「手は口ほどにものを言う」。
その少し前でも、浪の兄について「黙っててごめん。隠してたわけじゃないんだけど」と謝ったショットで、榀子がバッグの肩紐にそって手を添わせる芝居。
表情をあえて見せず、身体の芝居で語らせる演出。
配信限定episode #2
榀子の掘り下げ。そして早川湧について。何故、榀子が湧に惹かれたのか。
何故、榀子はリクオの好意を受け入れられないのか。
このシーンはぜひ観たほうがいい。
おわりに
繊細な感情芝居。
榀子の表情芝居を特に丁寧に描いていると思った。
恋愛を描いたアニメは多いけれど、このような作品は久々に観た。心がひりつくような感じ。昔の恋を思い出す。
第2話スタッフ
藤原佳幸監督
伊藤良太副監督
制作進行:増田拓朗、寺田玲寛
作画監督:武藤幹、矢野桃子、長尾圭吾、菊永千里、菊池政芳、海保仁美、菅原美智代、上野沙弥佳、池添優子、乘冨梓
総作画監督:谷口淳一郎
動画検査:大原真琴、小田道子、狩野洋典
色指定・検査:伊藤裕香
原画:
大野仁愛 渥美智也
鹿戸大介 尾辻浩晃
山本裕介 長尾圭吾
濱口明 藤田晋也
納武史 中島大智
澤井駿 武藤幹
矢野桃子 小林恵祐
合田麻実
第二原画:
室賀彩花 山本悦子
全後映 齋藤めぐみ
水野公彰 佐藤光晃
安江杏珠 大迫光紘
清水綾乃 石井円香
WHITE FOX 伊豆高原スタジオ
WHITE FOX 東京スタジオ
Poirot
アニタス神戸
寿門堂
ライジングフォース
動画:
大原真琴 小田道子
狩野洋典 石井邦俊
佐藤歩野花 式地和也
八木佐織 石井円香
吉田勝也 工藤志歩
中村プロダクション
Lay-duce 作画部
寿門堂
仕上げ:
石黒けい 伊藤裕香
竹内優太 呉政宏
真壁源太 芦原明音
スタジオ・エル
森脇弘史 木下美佳
大西幸恵 中野夏帆
千葉涼香 渡辺悠佳
手塚美寿々 佐伯桃果
寿門堂
背景:
スタジオイースター
坂下祐太 秋山慎太郎
曽根原理恵 干場佳織
妹尾想 石川真理
王葆祺 関口蓮
相澤諒 平田卓也
木津海音 村上悠太
田中伸哉 牧岡聡
片岡乃梨子
撮影:
伊藤邦彦 工藤康史
杉浦誠一 福岡由惟
水沼賢誠
撮影協力:
アスラフィルム
戯画プロダクション
3DCG・3DLO:藤井祐太、渡辺悦啓