『イエスタデイをうたって』第10話「はじまりの新年」
感想
福田梢さん素敵。
榀子がパーティーに来たのに合わせて、ネックレスを包みなおしてリクオに渡す。もともと榀子にプレゼントすればいいのにと思っていたのだろうね。
しかも榀子に悟られないよう、コーヒーを入れるお手伝いという名目で。
「頑張って」の表情が可愛い。
ネックレスの出所を白状してやっぱり気分が悪いよなと言ったリクオに、榀子が噴き出す芝居が上手い。
うつむいて、顔が右を向き、反動で髪が大きく揺れる。髪が顔に覆い被さる。
小さく跳ねるような頭の動き。
女の子に贈り物をしたのは初めてと聞いて、目を見開いた榀子の感情芝居が良い。
髪の毛がハラリと垂れ下がる。
榀子の目とペンダントの石のマッチカット。振り子のように揺れる石は、榀子の揺れ動く心のメタファー。
魚住君、私、年末に金沢帰るの止める。だからお正月一緒に過ごさない?
――森ノ目榀子
積極的な榀子。
リクオの家の前でずっと待っていて、リクオが返ってきたのに気づいた時のハルの感情芝居が良い。
目を見開いて、口元が緩み。
「あんま無理して会いに来ることないぞ」と言われていたけれど、会いに来たことにバツが悪く目をそらし、口をぎゅっと結ぶ。
笑顔を浮かべて、「メリークリスマス」。
好きな人の部屋に初めて足を踏み入れた時の、ハルの興味津々な芝居が可愛い。
わかってるよ。でもこうでもしなきゃ会えないじゃん。あたしは努力しないと会えないじゃん。
重いのはわかってるよ。でも何もしないでじっと待つより、こうしてる方が楽しいんだよ。
だから深く考えないでよ。好きでやってるんだから、大目に見てよ。
リクオの顔も見れたし、部屋も見れたし。それで十分。
これ飲んだら帰るよ。――野中晴
マグカップを象徴的に使った演出。マグカップを何度も同ポジションのレイアウトで。温かい飲み物を飲んだら、そのままハルが帰ったこと、ハルの気持ちを表す。
対して、リクオについては背中をずっと映し、表情を見せない。微動だにしない。言葉や吐息などの反応も一切視聴者に見せない、聞かせない。
これによってハルの辛さがよりいっそう強調されている。
「いや、でも別に深い意味はないんだし。向こうだってきっとわかってるし」
そう思っているのは榀子さん、貴女だけでは?
リクオからの連絡がないことに、「なんでないのよ」と速足になる演出が良い。
以前から何度も、電話しても外出中だったという台詞があったけど、この時代は留守電はなかったの?
手持無沙汰に受話器のコードを指に巻きつける芝居が上手い。
「どうしようか」という言葉で暗転させて、次のシーンにつなぐ編集が上手い。
窓を雑巾で拭くハルの芝居が上手い。
ハルのお母さんと再婚による義父が登場。
ハルも年末年始は実家に帰るんだ。
一緒に年越し蕎麦を買いに行くよとお母さん。
貰ったネックレスを着けてきた榀子。
結局、年越しの瞬間を飲食店で過ごすことにしたリクオと榀子。折衷案かな?
「結構酒強いのな」と言われて、口のにおいを気にする榀子が可愛い。
「酔い覚ましにコーヒーでも飲む? うちで」
色気のない誘い方。
こぼれたコーヒーの動きが上手い。テーブルの淵から何滴も落ちて、水たまりの端が淵から少し引く。液体の中心に引き戻される。液体作画。
違う。悪いのは私。圧倒的に私が一番悪いの。
わかってるのに、いつまでもぐずぐずして。
でも、魚住君もちょっとは悪いと思う。強引になれないのは優しいから? それとも野中さんがいるから?――森ノ目榀子
私、昔好きだった人のときと同じ気持ちにならないと、嘘なんじゃないかと思ってたの。でも人を好きになる感情はひとつじゃないかもしれない。だから、ゆっくりでも前に進もうと思う。
――森ノ目榀子
リクオが思わず榀子を抱き寄せたのを、コマ撮りのように見せる演出が良い。
リクオに頬を撫でられて唇が小刻みに震える榀子。
「ゆっくりだもんな。今日は帰るよ」
リクオの、緊張で口の中が乾いてかすれたような声、そして囁くような声のお芝居が上手い。
小林親弘さんはナチュラルな演技が持ち味の声優さんだけど、これは特に良い。
一人暮らしのハルが不審な物音を聞いて、リクオに来てと電話をかける。
EDがまた変わった。
映像も今までの回想。
最終話でもなく、話がひと段落したところでもない。ポジティブな回想ではない。
本編の終わり方といい、不穏だ。
終わりに
今回はキャラクターの感情を途切れずに見せるための長回しの演出が印象に残った。
そしてクリフハンガー。
スタッフ
藤原佳幸監督
伊藤良太副監督
脚本:田中仁
絵コンテ:原口浩
演出:原口浩、山﨑みつえ、野呂純恵
制作進行:小泉百華
作画監督:
渥美智也
澤井駿
長尾圭吾
山野雅明
尾辻浩晃
寿門堂
海保仁美
金璐浩
永田文宏
原画:
狩野正志 澤井駿
立口徳孝 長尾圭吾
平塚知哉 室賀彩花
山野雅明 山本悦子
浅田真里 池上理恵
和泉晃耶 上西麻耶
尾辻浩晃 合田麻美
小暮梨奈
第二原画:
朝倉夕貴 上田由希子
大迫光紘 小室有土
齋藤めぐみ 佐藤光晃
杉浦涼子 曾我篤史
全後映 水野公彰
安江杏珠
石井円香 浦松貴楽
小暮梨奈 鹿戸大介
酒井ひかる 山﨑梨楽
山道到威 久保山誠士
動画:
石井邦俊 佐藤歩野花
式地和也 八木佐織
石井円香
寿門堂
色指定・検査:呉政弘(呉政宏の誤記)
仕上げ:
石黒けい 伊藤裕香
竹内優太 呉政宏
真壁源太 芦原明音
寿門堂
背景:
スタジオイースター
干場佳織 石川真理
曽根原理恵 妹尾想
平田卓也 関口蓮
王葆祺 相澤諒
木津海音 村上悠太
田中伸哉 牧岡聡
片岡乃梨子 香取希
岩田百代
撮影:
伊藤邦彦 工藤康史
杉浦誠一 福岡由惟
水沼賢誠
撮影協力:
アスラフィルム
デファー
戯画プロダクション
取材協力:
東京武蔵野美術学院
インタニヤ