映画の後には紅茶とお菓子を

百合とアニメと映画の感想

『白い砂のアクアトープ』第7話感想: くくると空也にとって、がまがま水族館がない日常が迫っている。

『白い砂のアクアトープ』第7話「アイスで乾杯」

 

 

作品について

安藤真裕さんが第2話に続いて絵コンテを切った。安藤真裕監督もローテーションで参加してくれそうだ。

熨斗谷充孝さんが演出。僧侶枠の監督。P.A.WORKS作品でよく演出している。『凪のあすから』演出、『グラスリップ』演出、『SHIROBAKO』演出、『Charlotte』演出、『ハルチカハルタとチカは青春する~』の絵コンテ・演出、『クロムクロ』演出、『ウマ娘 プリティーダービー』第1期の演出、『天晴爛漫!』演出。

 

 

感想

コマカ島。

沖縄の人はあまり水着を着て遊ばないというあるあるネタ。紫外線が強い。

風花の水着姿も可愛い。慌てて岩手の家から送ってもらった。グラビア撮影に使ったもの。

 

夏凛と空也は同級生で腐れ縁。

空也は小学生女子も苦手。

おじいが紹介してくれた新しい職場の件に納得できない空也。名前はティンガーラ。

 

櫂の妹はくくると犬猿の仲。うどんちゃんや夏凛が気にするほど。

一人っ子だから兄弟姉妹のいる子がうらやましかったというくくるとうどんちゃん。くくるはもともと双子で、兄弟姉妹が生まれてくることなく亡くなったのでは、という推測。

運動会の思い出で半分個の話をしていたくくるに、知ってか知らずか、アイスを半分個しようと提案する風花。

どんちゃんが言うように、風花はくくるのお姉ちゃんのようになってきた。

 

真帆が付き合いたい人は「お兄ちゃんみたいにかっこいい人」。ブラコン。仲良し兄妹。櫂は真帆に手を焼いているようだけど。

真帆の幼馴染・類は空也をライバル視。真帆の前で、類に花を持たせてあげなさいと空也にはっぱをかける夏凛。

全力疾走の成人男性とほぼ同じ速さで走れる類が凄いのか、空也が遅いのか。

空也が敵わなかった相手はおじい。だから類に、上には上がいる、と諭した。

 

「大人になると飲みたくなることもあるんだよ」

 

空也は高校生の時、女子に告白されて断ったら、グループに嫌がらせを繰り返され、警察を呼ばれるような事態に嵌められ、人間不信になり退学。

ふらふらしていたところ、おじいに水族館の仕事をさせられるようになり、気づいたらがまがま水族館が好きになっていた。

 

夏凛は「ちょっとたちの悪い女子グループの中心にいた子」と言っていた。

夏凛がその空也を好きになり告った女子の可能性がないわけではない。空也を不幸にしてしまったことで自分を責めており、自虐を込めての発言。最初は、好きな人に振り向いて欲しくて嘘をついた(噂を流した)。尾ひれがついて、というのは夏凛が想定していなかった事態の推移だったと。

夏凛が空也を気にかけているのは贖罪のため。どうすれば罪を償えるのか探している。

あくまで可能性の話。

 

アメリカの映画やテレビドラマで、チアリーダーをやっているようなクイーン・ビー(queen bee)が好きな男子に告って(あるいはデートに誘って)、興味がないと断られ、怒り狂う姿が目に浮かぶ。

取り巻きの女子たちがクイーン・ビーを慰めている。そして仕返しを企む者も。

 

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「私女嫌いじゃないし!」 ©projectティンガーラ

「違うよ! 私女嫌いじゃないし!」と風花に抱き着く。風花を愛するようになる可能性がある。

 

 

演出

皆で休暇を楽しみなさいと言われたくくるの「えー!」と、うどんちゃんの「えー!」を繋ぐ演出。同じ感嘆の言葉でもキャラクターの感情の違いを強調。

 

くくるのヤケ酒ならぬヤケジュース。安藤真裕監督は、『花咲くいろは』第13話で松前緒花に同じことをさせていた。このときは祖母・母・娘という3世代の女性の話だった。

 

「よし、今日は一日遊ぶ!」と立ち上がったくくると、スカートを下に落とす風花の、カット繋ぎ。アクションカット(cutting on action)のよう。

 

安藤真裕さんは、他の演出家の話数ではあまりない表情芝居をさせるね。

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ふくれっ面の海咲野くくる ©projectティンガーラ
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松前緒花と押水菜子の表情芝居。『花咲くいろは』第13話と第18話より引用。 ©花いろ旅館組合

ヤケジュースでカウンターに突っ伏するくくる。これは『花咲くいろは』で緒花やなこちに見られた表情芝居。第18話「人魚姫と貝殻ブラ」は篠原俊哉監督の絵コンテ・演出回。今にして思えば、後の『凪のあすから』『色づく世界の明日から』『白い砂のアクアトープ』を予感させるフィルムだった。

海で泳いでいるとき夏凛に「それだめな上司がやるやつ」とからかわれ、「はーい」と舌を出して笑ったり。

 

アイスを半分個という話に合わせて、くくるが食べていたチョコレートアイスと同じ色の長方形が上下に分かれる演出。パキッ。

内古閑智之さんがサブタイルデザインを、石川将也さんと坪谷サトシさんがサブタイトルモーションデザインを担当している。毎回、話に合わせたサブタイトル演出をしている。

 

「あれ? 何してるの? 空也君」というおじいの声を聴いて、焦ってドアの陰に隠れるくくるのお芝居(作画)。可愛い。

 

がまがま水族館がなくなるという現実に苛立ち、髪をぐしゃぐしゃに搔く空也の感情芝居がいい。

 

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風花の胸に抱かれるくくる ©projectティンガーラ

弱気になっているくくるは風花の胸に抱かれ下手を向き、くくるを励ます風花は上手を向いている。

「一人じゃないからね。私も一緒にやるよ、くくる」

 

類を見つけた空也が砂浜を走ってきて、止まった直後に一歩横に跳ぶ芝居付けがいい。

 

「類君、空也さんのことライバル視してるの。魚の知識どっちが詳しいかっていっつも張り合ってて」と、半ばあきれながら、左目を閉じ、人差し指で頭をツンツンつつく芝居がいい。

 

夏凛が空也に、類は真帆に片思いしているから花を持たせてあげなさいと言うとき、夏凛が空也の視線から類と真帆を遮るように立つ演出がいい。

 

運動神経悪そうと類に言われた空也が前に出た拍子に夏凛にぶつかり、痛みで顔をしかめる夏凛の表情芝居。

類に何か言おうとした空也をつねって黙らせる。夏凛によると、高校時代は勉強も運動もできたらしいので、運動は得意だと言おうとしたのだろう。

ビーチフラッグに決まり、「ねっ」といい笑顔。

 

類の真帆へのデートの申し込みに、胸が高鳴る女子4人(月美、夏凛、風花、くくる)。

「考えときまーす」と嬉しそうに答える真帆。

 

真帆が類に近づき、スカートに手を当ててしゃがむ。

 

空也も夏凛も、お酒の最後のしずくを舌を突き出して受け止め飲む。

 

水切りの描写が上手い。

 

髪を搔き上げる空也のお芝居がいい。

 

日没前のブルーアワーの背景美術が美しい。そしてその紫色の背景に綺麗に溶け込ませる、キャラクターの色彩設計と色指定もいい。

 

 

余談

東映アニメーション制作『SLAM DUNK』(2022)が発表された。スタッフにP.A.WORKS出身者や縁がある人たちが参加している。

kai-you.net

演出の1人、菅沼芙実彦さん。P.A.WORKS生え抜きの演出家。

サブキャラクターデザインの番由紀子さんは『true tears』の原画と『RDG レッド・データ・ガール』のOP原画を描いていた。

作画の大東百合恵さん。P.A.WORKS生え抜きの作画さん。『白い砂のアクアトープ』にも参加しているようだ。

作画の佐古宗一郎さんは、『天狼 Sirius the Jaeger』では松浦麻衣さんと共同でキャラクターデザインと総作画監督を務めた。他には『凪のあすから』の原画、『サクラクエスト』のキャラクターデザイン補佐と、EDの作画監督と原画。

作画の高橋英樹さんは『凪のあすから』のキーアニメーター。P.A.WORKSプロデューサーの辻󠄀充仁さんから依頼されて参加したそうだ。『凪あす』はエフェクト作画もよかった。高橋英樹さんは御霊火のエフェクトを描いたらしい。他には『true tears』のOP原画、『CANAAN』の原画、『Angel Beats!』のOP原画、『花咲くいろは』のOP原画、『さよならの朝に約束の花をかざろう』の原画。

作画の星野円哉さんは『さよならの朝に約束の花をかざろう』の原画。井上俊之さんが『さよ朝』に呼んだとBDブックレットで語っていたはず。井上俊之さんが自分で最後まで責任を持って描けなかったカットを担当してもらったとか。他には『有頂天家族』第1期の原画と第二原画。

作画の山方春香さんは『色づく世界の明日から』『Fairy gone フェアリーゴーン』『劇場版SHIROBAKO』『神様になった日』の作画監督P.A.WORKS生え抜きの作画さん。

仕上げチーフの中野尚美さん。『白い砂のアクアトープ』でも色彩設計をしている。

仕上げ検査の永井唯香さん。『白い砂のアクアトープ』でも仕上げ検査をしている。

スタッフリストから考えて、おそらく手描き作画と3DCGのハイブリッド。バスケシーンはCGIだと思う。

一番の問題点は原作者の井上雄彦さんが監督と脚本であること。井上雄彦さんは優れた漫画家であって、脚本家でもなければ、ましてやアニメ監督でもない。映像演出の知識も経験もない素人監督に数億円から十数億円の予算のプロジェクトを任せるなんて、プロデューサーと製作委員会はおかしい。現在のテレビアニメの制作費は1クールで3億円。原作者が監督します、脚本を書きます、と宣伝で箔付けしたかっただけだろう。「お客さん」に振り回される現場の人たちが可哀想。大友克洋監督の『AKIRA』も現場が阿鼻叫喚だったという話がある。

 

 

Blu-ray Disc

 

 

 

CD

 

 

 

キャスト

海咲野くくる:伊藤美来
宮沢風花:逢田梨香子
照屋月美:和氣あず未
久高夏凛:Lynn
仲村 櫂:土屋神葉
屋嘉間志空也阿座上洋平
具殿轟介:櫛田泰道
おじい:家中宏
おばあ:定岡小百合
宮沢絵里:園崎未恵
照屋さつき:儀武ゆう子
城居ルカ:菊池紗矢香
マネージャー:前田玲奈
竹下先生:花澤香菜
キジムナー:儀武ゆう子
くくる母:前迫有里紗
くくる父:村井雄治
先生:丹波正人
神里:田中秀幸
仲村真帆:広瀬さや
知念 類:北守さいか

 

 

第7話スタッフ

脚本:柿原優子
画コンテ:安藤真裕
演出:熨斗谷充孝

総作画監督:秋山有希
作画監督:鍋田香代子、Eom Ik-hyeon

原画: 
 P.A.WORKS
 柳原一義 松宮杏実 田邊有紀

 DRMOVIE
 Lee jong-il Kang hyeon-guk
 
第二原画:
 P.A.WORKS
 天野和子 西澤皓人 三好有香
 米本えり 田中未来 小林瑞季
 塩川友哉

 DRMOVIE
 Yoon Sheung-hyun Hom Gyeong-mi Shin Seung-sook

動画検査:
 P.A.WORKS
 藤嶋未央 髙田友美 白敷桃子

動画:
 P.A.WORKS
 茶山咲良 福島賢治 北原沙恵美
 菅野楓 菊池桃佳 二藤部桃汰
 安部紗矢香

 DRMOVIE
 Min Hong-yi Park Hyeon-ju Yoon Eun-joo
 Lee So-yeong Gong Jin Lee Seon-mi
 Kim Boo-kyung Son Yeong-ju Anh Mi-gyeong
 Kim Kwan-woo Jung Ju-ri Cho Chae-won
 Choi Mi-na Lee Mi-ok Heo Young-jin
 Ko Jin-ju Jang Sun-hye Choi Eun-ju
 Jang Hee-doek Lee You-jin Yi Min-kyoung
 Kim Young-won Lee Eun-bin Lee Da-young
 Yoon sheung-hyun

 Jeon Hae-jin Jang Chul-ho Yoon Seung-hyeon

色指定:
 ステラ・ロード
 越田侑子

仕上げ検査:
 ステラ・ロード
 中野尚美

仕上げ検査補佐:
 ステラ・ロード
 門松諭生
 遠藤花歩
 永井唯香

仕上げ:
 ステラ・ロード
 門松諭生 遠藤花歩 江口亜紗美 永井唯香
 奥智恵 新井理恵 大場昭子

 スタジオ・ロード
 五十嵐遥 高木美幸 原田怜旺
 水野多恵子 曽根久美子

 DRMOVIE
 Yoo Young-hye Park Se-na Jung Su-hyun Kim A-jin
 Kim Min-lee Park One-jung Kim Kwan-woo Hwang Seong-kyeong
 Lim Jung-a Kim Min-ju Kim Ok-hee Jung su-young
 Choi So-ri Lee Eun-jeong Jo Ye-jin Kwon Min-kyoung
 Kim Min-one

 Lee Jin-hee Lim Jeong-a Kim Miok

 D-COLORS
 橋本千春 鴨井さつき 圓次美和 角下瑞絵
 那須彩香 小暮将大

 J-CUBE
 Kil Eun Sook Yoo Haigen Kim Hwa Ryong Jang Sung Su
 Hyeon So Hee Baek Soong Hee Jung Hye Sook Kim Tae Hyun
 Kim Hee Sook Byun Sang Soon

背景
 スタジオ・イースター
 曽根原理恵 秋山慎太郎 阿部真大
 石川真理 朝倉大智 干場佳織
 志村美幸 田中伸哉 片岡乃梨子
 牧岡聡 妹尾想 小高猛
 岩田百代 楊梦龍 小浦未来
 今井公平 季豊裕 鈴木くるみ

撮影:
 T2studio
 並木智 朝日康平
 福島敏行 高橋智
 兼久卓

2D works:村上瞭

3DCG:
 P.A.WORKS
 林誠一郎 森重柚香 田口優香
 伊東大毅
 
3Dモデリング
 P.A.WORKS
 井上佑紀 大野陽生 森重柚香
 郭超儀 川上真菜美 田口優香
 伊東大毅 林誠一郎 鈴木晴輝
 市川元成

 T2studio
 武川佳史 日塔友恵 秋元央

 バイブリーアニメーションCG
 箕輪綾二 菊地学 河野真一朗
 李植 原品貴好

 株式会社 Marco
 小川耕平 Pan Xiaofeng

 IKIF+.inc
 佐藤良樹 渡部里奈

Special Effects:村上寿美江

担当制作:城村輝

 

 

メインスタッフ

原作:projectティンガーラ
監督:篠原俊哉
シリーズ構成:柿原優子
キャラクター原案:U35
キャラクターデザイン・総作画監督:秋山有希
生きもの設定・サブキャラクターデザイン:牧野博美
プロップ設定:宮岡真弓
色彩設計:中野尚美
美術監督:鈴木くるみ
美術監修:東潤一
美術設定:塩澤良憲
撮影監督:並木智
撮影監督補佐:朝日康平
3D監督:鈴木晴輝
特殊効果:村上正博、村上寿美江
編集:髙橋歩
音響監督・整音:山田陽
音響効果:山谷尚人
録音:松下春香
音楽:出羽良彰
音楽プロデューサー:臼倉竜太郎
音楽A&R:吉池真由美
音楽制作:ランティス
方言監修:儀武ゆう子
水族館監修:魚津水族館
水族館取材協力:足立区生物館、サンシャイン水族館しながわ水族館、DMM かりゆし水族館、横浜・八景島シーパラダイス
協力:一般社団法人 南城市観光協会
企画:鶴田直一、安藤卓、櫻井優香、辻󠄀充仁、横沢隆、金子広孝、前田吉輝、小川泰
製作:町隆幸、白石俊博、吉江輝成、堀川憲司、篠崎文彦、伊藤幸弘
プロデューサー:藤野麻耶、山口慶、臼倉竜太郎、仲村直人、尾形光広、齋藤宙央、岩佐貴博、大森慎司
プロデュース:infinite、永谷敬之、茂山愛保、浜辺恵那
アシスタントプロデューサー:池亀彩加、池田智和、片山怜子
ラインプロデューサー:橋本真英
制作デスク:小西翼
設定制作:舘彩華
アニメーション制作:P.A.WORKS
製作:「白い砂のアクアトープ」製作者委員会(DMM pictures、フォアキャスト・コミュニケーションズバンダイナムコアーツ、ピーエーワークス角川メディアハウスTOKYO MX、AQUA ARIS、BSフジ)