『東京24区』第1話「RGB」*1
作品について
オリジナルアニメ。
津田尚克監督。『妖狐×僕SS』(2012)、『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズ、『planetarian ちいさなほしのゆめ』(2016)の監督。いずれもデイヴィッドプロダクション制作。
髙橋英俊副監督。ぴえろ制作、スタジオ サインポスト アニメーション制作『織田シナモン信長』(2020)の監督。窪岡俊之監督、C2C制作『はるかなレシーブ』(2018)の助監督。
ニトロプラス所属の下倉バイオさんがシリーズ構成・脚本。ニトロプラスはアニメの脚本を書いたり製作委員会に出資したりと積極的だけど、下倉バイオさんはアニメ脚本は初めてのようだ。
岸田隆宏さんがキャラクターデザイン。売れっ子キャラクターデザイナー。2021年には、米田和弘監督、PINE JAM制作『かげきしょうじょ!!』が素晴らしかった。
柳沢テツヤ監督、A・C・G・T制作『オリエント』でもキャラクターデザインを務めている。しかも放送開始日が同じ1月6日(放送業界的には早朝に放送開始するまで24時以降も含めるので1月5日の扱い)。
企画プロデュースの鳥羽洋典さんは、アニメ脚本に向いていない麻枝准によるオリジナルアニメ企画をゴリ押ししているプロデューサー。
CloverWorks制作。
第1話は1時間スペシャル。
感想
2021年5月8日。2020年5月10日に火災事件発生。
東京湾に浮かぶ人工島「極東法令外特別地区」、通称「東京24区」。戦後連合国が統治した。沖縄県以外にもあったという設定かな。実在する場所をディストピア作品で描くのを避けるための設定かな。
東京23区は23ある特別区の総称として使われるけれど、『東京24区』は24番目の特別区という意味のようだ。"Tokyo 24th Ward" "Tokyo Twenty Fourth Ward" という英語題名が示している。
まだ日本の領土ではないので、警察の代わりに「外地警備隊」(通称「ガイケイ」)が治安維持にあたっている。シュウタは警部である筑紫渉に補導された過去がある。
特殊能力者でもないようなのに、シュウタは人並み外れた身体能力を持つ。「アスミ」からの電話をきっかけに、シュウタ、ラン、コウキは身体能力が強化された。
まりのお好み焼きが上手。
「海辺のピカソ」。思考実験。レイ・ブラッドベリの短編小説『穏やかな一日』が初出。短編集『メランコリイの妙薬』に収録されている。
窓から見える砂浜に、おじいさんが絵を描いている。絵の特徴から、そのおじいさんがパブロ・ピカソだと気づく。潮が満ちれば、砂浜の絵はやがて消えてしまう。もしカメラで写真を撮影したとしても、それは写真にすぎず、作品そのものではない。カメラを探して写真に残すべきか、限られた短い時間だけでもその作品を鑑賞し味わうべきか。
ちょくちょく話題になる「トロッコ問題」。「トロッコ問題」は、出題者が回答者の回答を批判するために行わせる思考実験。どんな答えを出しても罵倒される。
高架橋を走る高速鉄道の線路の先に女性が倒れている。線路を切り替えると、脱線して乗客乗員が死傷する。そのまま走れば女性は死亡する。
高架橋に女性がいる理由は、出題者は設定しない。周囲の環境も出題者は設定しない。
「アスミ」からの電話は、テレパシーのように映像を3人の脳に送り込む。女性は「まり」。
梢が火災現場で「ごめんなさい! ごめんなさい!」と泣いて謝っていた。火災の原因は自分にあると梢は思っているのかな。たとえば、友達と花火で遊んでいたら周囲に燃え広がってしまったとか。
コウキが早紀子さんと、「違法行為に着手しない限り処罰されない」という原則について話していた。ということは、放火事件の被疑者を追い詰める物語になる可能性がある。
現実だと、現住建造物等放火罪は法定刑に死刑が含まれる重罪。特に被害者に死者がいれば死刑の可能性が高い。(殺人罪は幅が広いので)殺人罪よりも重い傾向がある。
失火罪は罰金刑。
梢はセーラー服を着ていたので中学生かな。
少年法により14歳未満の子どもは刑事責任年齢に達していないので、違法行為を行っても処罰されない。児童相談所で手続きを受ける。警察の調査を受ける場合もある。触法少年と呼ばれている。「おおむね12歳以上」の子どもは、少年院送致の対象となっている。
犯罪がテーマなのかな。
未来予知による防犯。
スティーヴン・スピルバーグ監督、スコット・フランクandジョン・コーエン脚本、フィリップ・K・ディック原作『マイノリティ・リポート』(2002)だね。
本広克行総監督、塩谷直義監督、虚淵玄ストーリー原案『PSYCHO-PASS サイコパス』(2012)及び続編は、明らかにフィリップ・K・ディック著『マイノリティ・リポート』の影響下にある。『東京24区』も同様。
石浜真史さんによるオープニングアニメーションがいい。
1時間枠なので、演出3人、総作監2人、作監8人、作監補佐7人は、CloverWorksならそんなもの。
木田和哉さんがラインプロデューサーなので、伊藤祐毅監督、倉田綾子アニメシリーズディレクター『GRANBLUE FANTASY The Animation』第1期(2017)、増井壮一監督、いわたかずや助監督『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』(2018)及び『青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない』(2019)のスタッフが参加している。
シュウタが火災現場の小学校で梢とアスミを見つけたシーンは、カットのつなぎに違和感を覚えた。他にも、梢が手を伸ばしたカットに、本来真上にいるべきアスミがいなかったり。
2D作画は実写や3DCGIのようなパースの変化を描けないので、それ故にアニメとしての嘘をつくレイアウトが用いられてきた。『東京24区』は実写や3DCGIのようなパースを2D作画に落とし込む絵コンテ・演出・レイアウト・撮影がとられている。3D背景も多用されている。
まりスペシャルのブルーハワイいか焼きを中心に、シュウタ、ラン、コウキ、まりを見上げてカメラがぐるぐる回る。
テレビアニメなのに、カメラを引いた構図、long shot でキャラクターにお芝居をさせている。スケジュールや人手が限られているテレビシリーズで広景構図のお芝居をあまりやらないのは、クロースアップのお芝居より全身のお芝居の方がより難しいから。
富野由悠季監督がよく用いる「カットイン」や、ビデオゲームの「スプライト」のような、キャラクターのセル(レイヤー)を重ねる演出。シュウタがお母さんからパンを渡されるシーンなど。
スプレーを使って wipe の場面転換。お好み焼きにかけるマヨネーズで wipe の場面転換。走るまりの身体で natural wipe。
ランがシュウタのお好み焼きの上に乗せた4分の1のグラフィティは、Apple の AirMac (AirPort) ロゴに似ている。
線路の枕木を壊してまりを助けたカット、不自然なカメラワークによる演出・撮影。はっきり見せたくない理由か演出意図があったのかな? まりの足はレールに挟まってたようだった。
ブログには書かなかった内容を、FANBOX限定で投稿した。
キャスト
蒼生シュウタ:榎木淳弥
朱城ラン:内田雄馬
翠堂コウキ:石川界人
翠堂アスミ:石見舞菜香
櫻木まり:牧野由依
きなこ:兎丸七海
黒葛川早紀子:生天目仁美
翠堂豪理:楠大典
翠堂香苗:大原さやか
きなこ:兎丸七海
クナイ:斉藤壮馬
ヤマモリ:伊丸岡篤
ラッキー:喜多村英梨
白樺広樹:上田燿司
白樺 梢:日高里菜
白樺美野里:大井麻利衣
筑紫 渉:中村悠一
宍戸花奈:花守ゆみり
進藤 薫:江頭宏哉
蒼生桐子:野中藍
櫻木松子:遠藤綾
デイジー:中根久美子
第1話スタッフ
脚本:下倉バイオ
絵コンテ:津田尚克
演出:津田尚克、髙橋英俊、安川央里
総作画監督:伊藤公規、田村里美
作画監督:森藤希子、藤澤俊幸、ハンミンギ、野々下いおり、清水陽一、清水裕輔、伊藤公規、田村里美
作画監督補佐:前澤弘美、大塚八愛、和田賢人、渡辺浩二、藤裕子、関口亮輔、張昀
服装デザイン:髙木恵湖、ゴンタ
動画検査:冨田さおり、谷口梓紗
動画検査補佐:榊原大河
色指定・検査:長井彩香、奥原薫
メインスタッフ
原作:Team 24
監督:津田尚克
副監督:髙橋英俊
構成・脚本:下倉バイオ(ニトロプラス)
キャラクター原案:曽我部修司(FiFS)、ののかなこ(FiFS)
キャラクターデザイン:岸田隆宏
総作画監督:伊藤公規、髙田晃、まじろ
サブキャラクターデザイン:伊藤公規、田村里美
プロップデザイン:髙田晃
グラフィックデザイン:河原秀樹、添野恵
美術設定:塩澤良憲
美術監督:春日美波
色彩設計:中島和子
2Dデザイン:久保田彩
特殊効果:清水彩香
CGディレクター:宮地克明
撮影監督:佐久間悠也
編集:三嶋章紀
音響監督:岩浪美和
音響効果:小山恭正
音楽:深澤秀行
音楽制作プロデューサー:山内真治
音楽制作:アニプレックス
企画:岩上敦宏、西出将之、大和田智之、金子広孝、松岡雄浩、國枝信吾、小坂崇氣
エグゼクティブプロデューサー:三宅将典
チーフプロデューサー:瓜生恭子
企画プロデュース:鳥羽洋典
プロデューサー:野村智香子、蔡愛蓮、東真央、北澤史隆、早野義人、外川明宏、田村智
アニメーションプロデューサー:木田和哉
制作統括:清水暁
制作:CloverWorks
製作:東京24区プロジェクト(アニプレックス、ABCアニメーション、BS11、TOKYO MX、メ〜テレ、ムービック、ニトロプラス)