映画の後には紅茶とお菓子を

百合とアニメと映画の感想

『かげきしょうじょ!!』第8話感想: 青春の短編映画

『かげきしょうじょ!!』第8幕「薫の夏」

 

 

作品について

スピンオフ「星野薫の夏休み編」。

 

阿保孝雄さんが絵コンテを切った。阿保孝雄監督は、市村徹夫副監督、キネマシトラス×オレンジ制作『NORN9 ノルン+ノネット』(2016)、キネマシトラス制作『盾の勇者の成り上がり』第1期(2019)、髙橋さつき助監督、A-1 Pictures制作『22/7 ナナブンノニジュウニ』(2020)を監督した。

 

江副仁美さんが演出。

 

三橋桜子さんが単独で作画監督

 

 

感想

「もう花道は歩けなくても、私たちには銀橋があるよ」

 

日焼けしたさらさと愛は、うっすらピンクがかった色。色彩設計と色指定。

他の生徒たちとの対比。

 

薫がショートヘアに。可愛い。

薫の浴衣姿も可愛い。

 

紅華歌劇団の娘役トップだった祖母・星野静(ほしの しず)。

 

辻陸斗にはプロ野球選手の兄・辻海斗がいる。

兄に対して劣等感を抱く陸斗に自分を重ね、名前を教え、仲良くなった薫。

薫は陸斗の前では恋愛漫画の主人公のよう。

陸斗と擦れ違い。

陸斗がバス停に手紙を貼る。

伝えたい人がいるので
この夏だけ貼らせて下さい
あの時の君へ
僕は今も野球をやっています
ありがとう

青春映画。

 

大地葉さんすごいね。薫として、心情に沿って、声を震わせながら歌っている。

薫のソロ、エンディングテーマ「薔薇と私」。かっこいい。


TVアニメ「かげきしょうじょ!!」ノンテロップED | 星野 薫「薔薇と私」

梅木葵さんが歌うキャラクターに合わせてアニメーションを作っている。

青い薔薇はもともと自然界に存在せず、人工的に作り出すのも難しかったので、花言葉は「夢が叶う」。

 

 

演出

練習室から立ち去る薫から、同ポジションでそのまま過去回想へ。日傘を差した高校の制服姿。いいtransition

 

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星野薫と辻陸斗とバスのつり革 © 斉木久美子・白泉社/「かげきしょうじょ!!」製作委員会

薫が祖母と母の話をしたとき、カメラがpanして、バスのつり革が陸斗を取り囲む柵になる。フレーム内フレームは、その人が何かに囚われていることを表す。

「あなたと私ちょっと似てるなって」という台詞。薫をつり革で取り囲まない。つまり薫と陸斗は似てはいるが、薫の祖母と母と紅華に対する感情と、陸斗の兄や野球に対する感情は異なり、いわば別世界に住む人なので一緒になることはない、と示唆しているのかな。

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星野薫と辻陸斗の住む世界 © 斉木久美子・白泉社/「かげきしょうじょ!!」製作委員会

バスの2本の手すりで、一時的に同じ世界にいたけれど。

 

野球部マネージャーの動きが可愛い。

 

スポットライトに照らされている銀橋と、夏の太陽の光が差し込むバスの通路のmatch cut。だからカメラワークもtilt。

 

薫と陸斗の並行モンタージュでpacingがいいね。

 

声楽の先生に「大丈夫。上手になるわよ。お母さんもお祖母様もお上手だったんだから」と言われて目をそらす。

山岸さんに話しかけられて目をそらす。

 

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星野薫と鏡に映った本当の自分 © 斉木久美子・白泉社/「かげきしょうじょ!!」製作委員会

山岸さんが来たとき、薫だけが鏡に映り込んでいる。

鏡というのはその人の内面、特に本心を表している。本当の自分。

薫だけが鏡に映るように、慎重にレイアウトが描かれている。つまり登場人物と背景が配置されている。もう少しカメラが左を向けば、左端の少女も鏡に映った姿がカメラに入るから。

作画の最初の工程であるレイアウトは、このように演出意図を汲み取って描くもの。そのために作打ちで演出家と原画マンが演出プラン、演技プランを打ち合わせする。だから演出プランに沿っていない、かっこいいだけの作画は、アニメーターの自己満足に過ぎず、リテイク指示が出たり、没になって演出家と作画監督が必死で修正したりすることになる。そのため時間が食い潰され、後工程にしわ寄せがいき、クオリティが低下する要因の1つになっている。

 

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星野薫の心の揺らぎ © 斉木久美子・白泉社/「かげきしょうじょ!!」製作委員会

お祖母さんに、やりたいことがあるなら他の道に進んでいいと言われ、紅茶に反射した薫の表情、特に目を見せる演出がいい。水面の揺らぎが、薫の心の揺れ動きのメタファーとして使われている。目を伏せる。

バスのつり革の揺れを心の揺れ動きのメタファーとして使っていたのと同様の演出。

 

泣きながら「桜吹雪舞うなかに」を歌う薫を、波の合間から水面の反射で見せる。

鏡と同様の意味がある。

 

あれだけ日焼け対策を怠らなかった薫が、街頭テレビで高校野球を見るために日傘を投げ出した。

男役はプライベートでも男のように生活するから、今のうちにスカートを履いて楽しんでおく、と言っていた薫が、ヒールを履いた脚で地面に踏ん張り、テレビに見入る。

陸斗との関係を吹っ切るためにLINEをブロックしたのに、ベンチから試合に出場して、ホームランを打ったのを見て涙を流した。

 

キャストのクレジットが、星野薫を演じている大地葉さんと辻陸斗を演じた畠中祐さんがトップになっている。

 

 

余談

江畑諒真さんが原画を描いている。バレエのカットかな? ただ、第3話のタップダンスシーンはAteiler Gokujouさんの原画らしい。第8話のバレエのカットは誰だろう?

 

 

Redditにいい言葉があった。

Not necessarily how she feels about him -- but about how she felt about him.

Not certain there will be romance in their future -- but just knowing how strong the feelings were in the past will be a treasure all the same.

という書き込みに対して、"Yeah, I noticed that too. This ship isn't sailing."と返事した人がいる

英語圏のオタクは、relationshipを略してshipやshippingをカップリングの意味で使っている。そのshipを船と引っかけて、"This ship isn't sailing."としたのに感心した。現在進行形なのがミソ。

 

 

CD

 

 

 

Blu-ray Disc

 

 

 

キャスト

渡辺さらさ:千本木彩花
奈良田愛:花守ゆみり
杉本紗和:上坂すみれ
星野 薫:大地葉
山田彩子:佐々木李子
沢田千夏:松田利冴
沢田千秋:松田颯水
野島 聖:花澤香菜
中山リサ:小松未可子
竹井朋美:寺崎裕香
安道 守:諏訪部順一
奈良田太一:野島健児
里美 星:七海ひろき
城花るり:古賀葵
渡辺 健:中博史
渡辺美代子:平野文
白川暁也:高梨謙吾
白川暁也(幼少期):山村響
白川煌三郎:子安武人
白川歌鷗:麦人
白川幸恵:久保田民絵
白川 巴:今泉葉子
暁也の母:河瀬茉希

穴井一尉:若本規夫
桐島:鈴木れい子
大木:葛城七穂
橘:伊藤静
奈良田君子:三石琴乃
正二:上田燿司
黒毛勲:近藤浩徳
みき:田中美海
みきの母:吉岡茉祐
北大路幹也:水島大宙
小野寺:飛田展男
小園桃:逢田梨香子
山田清子:ファイルーズあい
ロミオ:内海安希子
ジュリエット:岸本望
マキューシオ:七海ひろき
医師:近藤浩徳
寮母:八百屋杏
辻陸斗:畠中祐
星野マリ:前田真里
星野由紀子:森なな子
山岸:吉岡茉祐
監督:近藤浩徳
マネージャー:本泉莉奈

 

 

第8話スタッフ

脚本:松本美弥子
絵コンテ:阿保孝雄
演出:江副仁美

総作画監督:福永智子
作画監督:三橋桜子

原画:
杉山京子 Ateiler Gokujou
柴田知波 櫻井拓郎
浦野達也 下地彩加
野口智也 岩垂瑞樹
日下部唯津 藤田紗葵
山本もも 垣内彩子
石井みゆき 馬場充子
五十嵐心 西村真理子
江畑諒真 倉田衛
岡本恵里香

第二原画:
中沢志帆 岸田くるみ
中屋了 酒井愛理
竹田理央 新井駿
加藤大

朱夏
FelixFlim
スタジオリング
スタジオ・ミュウ
サンシャインコーポレーション

動画検査:中沢志帆

動画:
PINE JAM
中沢志帆 岸田くるみ
結城貴光 大毛恭平
鳥谷部雪奈

バイブリーアニメーション
グレーン
スタジオリング
未来動画
Studio μ

色指定・仕上検査:山本真希

仕上:
山本真希

スタジオエル
studioぱれっと
グレーン
スタジオグラム
未来動画
Studio μ
 
デジタル動画・仕上:岡本恵里香、岩垂瑞樹

特殊効果:長澤諒司

美術監督補佐:臼田安成
美術担当:相原澄子
美術担当補佐:菅原瑛真

背景:
スタジオイースター
神山瑶子 清水順子
真鍋暁子 阿部真大
片岡乃梨子 中村逸人
居垣宏 干場佳織
白波瀬宏美 曽根原理恵
木津海音 温水陽子

美術担当制作:高橋諒

撮影:
chiptune
浅黄康裕 頓所信二
東郷香澄 小池真由子

レヴォルト
中村亮太 彭婕妤

2Dマテリアルデザイン
chiptune
由佐万織 粂澤由理

予告デザイン:由佐万織

CG:chiptune
3Dモデラー小林亮 江田恵一

エンディングテーマ
「薔薇と私」
作詞・作曲・編曲:斉藤恒芳
歌:星野薫(CV:大地葉)

劇中歌
「桜吹雪舞うなかに」
作詞:斉藤恒芳・斉木久美子
作曲・編曲:斉藤恒芳
歌:星野薫(CV:大地葉)

エンディングアニメーション:梅木葵

制作進行:奈良牧人

 

 

メインスタッフ

原作:斉木久美子
監督:米田和弘
シリーズ構成:森下直
キャラクターデザイン:岸田隆宏
サブキャラクターデザイン:飯田恵理子、髙田晃、牧孝雄
プロップデザイン・衣装デザイン:古賀美裕紀
総作画監督:今岡大、髙田晃、福永智子、牧孝雄、坂本ひろみ
色彩設計坂上康治
美術設定・美術監督:谷川広倫
CGディレクター:江田恵一
CGプロデューサー:奈良井昌幸
撮影監督:浅黄康裕
編集:今井大介
音響監督:長崎行男
音響効果:安藤由衣
録音調整:星野賢爾
音楽:斉藤恒芳
音楽プロデューサー:諏訪豊
音楽制作:キングレコード
特別協力:池田理代子プロダクション
企画:三嶋章夫、柳沢仁
企画協力:メロディ編集部、武田直子、滝澤晃人
製作:中西豪、髙橋竜、冨岡幸雄、西矢泰之、森直樹、武智恒雄、山崎明日香
プロデューサー:諏訪豊、矢田晶子
アシスタントプロデューサー:杉田萌
アニメーションプロデューサー:向峠和喜
制作デスク:佐々木亜彩乃
制作デスク補佐:藤原源之介
設定制作:杉田萌
アニメーション制作:PINE JAM
製作:「かげきしょうじょ!!」製作委員会