映画の後には紅茶とお菓子を

百合とアニメと映画の感想

『駒田蒸留所へようこそ』感想

『駒田蒸留所へようこそ』
製作年:2023年
製作国:日本
公開日:2023年11月10日

 

 

作品について

原正行監督。

P.A.WORKSがアニメーション制作。

ドラマ・アニメーション映画。

 

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花咲くいろは』『SHIROBAKO』『サクラクエスト』『白い砂のアクアトープ』に続くP.A.WORKSの「お仕事シリーズ」第5弾。

films.hatenablog.com

 

 

感想

おもしろい。亡き父の跡を継ぎ、ジャパニーズウイスキーの蒸留所を立て直そうとする若き社長や周囲の人たちの物語。

仕事、家族、人生を題材にしたドラマを、90分の映画に手堅くまとめている。質が高い小品。佳作。

脚本家チームの木澤行人さんと中本宗応さんは出版編集者出身で、今まで基本的にライトノベルや漫画原作の脚本しか書いた経験がなかったが、オリジナル脚本もそつなくこなせるようだ。

駒田琉生が主人公だけど、高橋光太郎がもう一人の主人公。輝いて見える新進気鋭の女性社長と、やりたいことが見つからずふてくされていたニュースサイトの男性記者。他人から見える外見と内面は異なる。

高橋光太郎が間違えて修正前の原稿を公開してしまった後、編集長の安元広志が自分の失敗談を話す。私も後輩や部下に教えるとき、自分の経験や失敗を具体例として挙げるようにしている。同じ轍を踏まないでくれたらいいなと。

題名にもなっている「駒田蒸留所へようこそ!」という台詞は、冒頭で光太郎が初訪問するシーンと、3年後に光太郎が後輩と訪問するシーンの2回繰り返される。そしてタイトルカードが表示される。

加藤達也さんによる音楽がいい。劇伴も主題歌もジャズやブルースっぽいのかな。最近のアニメの劇伴は印象に残る作品が少ない。*1

女子の私服が可愛い。パンフレットに髙田友美さんのキャラクター原案と川面恒介さんによるキャラクターデザインが掲載されている。最終的な絵柄は川面恒介さんの特徴がよく出ている。

美術監督の竹田悠介さんたちによる背景美術もいい。

 

ウイスキーではないけれど、子どものとき家族でアサヒビールの工場見学に行った。ビールができる様子がおもしろかった。試飲の時間では、子どもやお酒を飲めない人にはジュースやお茶が振る舞われていた。

成人してから、たまにお酒を飲むけれど、お酒を美味しいと思ったことはあまりない。カルーア・ミルクやカシス・オレンジなどのカクテルはジュースみたいでおいしい。

飲むときも、家族や友人と飲む。1人で飲むことはない。

 

原正行監督は社長の堀川憲司さんと一緒にP.A.WORKSを設立し、アニメーターの育成を担っている。そのため監督作品は少ない。

堀川憲司さんは岡田麿里さんの監督作品『さよならの朝に約束の花をかざろう』(2018)を最後に現場から退くと発言していたけれど、『駒田蒸留所へようこそ』で再びプロデューサーを務めている。

films.hatenablog.com

 

 

作画

日常芝居がいい。

アニメーション研究者・田中大裕さんが指摘しているように、3Dレイアウトによる作画工程の底上げが功を奏している。

最近はレイアウトを描けるアニメーターが少ない、と様々なアニメ制作関係者が述べている。

絵コンテのコマを拡大コピーするだけではだめ。絵コンテに書かれている演出意図を汲み取り、監督や演出家の話を咀嚼し、人や物の配置をレイアウトに落とし込む能力が求められている。

 

 

余談

P.A.WORKSと縁が深い岡田麿里さんの監督作品『アリスとテレスのまぼろし工場』(2023)もいい映画だった。

films.hatenablog.com

P.A.WORKSのオリジナルアニメ、柿本広大監督『菜なれ花なれ』の制作が発表された。脚本は柿本広大さん、綾奈ゆにこさん、後藤みどりさん。

narenare-anime.com

 

 

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キャスト

駒田琉生(こまだ るい):早見沙織
高橋光太郎:小野賢章
河端朋子:内田真礼
安元広志:細谷佳正
東海林 努:辻親八
斉藤裕介:鈴村健一
駒田 滉:堀内賢雄
駒田澪緒:井上喜久子
駒田 圭:中村悠一

 

 

スタッフ

原作:KOMA復活を願う会
監督:吉原正行
脚本:木澤行人中本宗応
絵コンテ:吉原正行
演出:許琮、藤井康雄、太田知章、今泉賢一、阿部ゆり子
キャラクター原案:髙田友美
キャラクターデザイン・総作画監督:川面恒介
作画監督:川面恒介、秋山有希、水野紗世、三宮哲太
サブキャラクターデザイン:藤嶋未央、秋山有希、水野紗世
美術設定・プロップデザイン:宮岡真弓
色彩設計田中美穂
美術監督:竹田悠介
3D監督:市川元成
撮影監督:並木智
編集:髙橋歩
音響監督:明田川仁
音響効果:上野励
音楽:加藤達也
主題歌:駒田琉生(CV.早見沙織)「Dear my future」(作詞:Zinee、作曲・編曲:加藤達也)
音楽プロデューサー:斎藤滋
音楽ディレクター:タノウエマモル
音楽制作:ハートカンパニー
プロデューサー:山田昇、古澤佳寛、堀川憲司
ラインプロデューサー:相馬紹二
アソシエイトプロデューサー:平木稜子
アシスタントプロデューサー:蔡香穂
アニメーション制作:P.A.WORKS
製作:DMM.com
配給:ギャガ

*1:ハリウッドでは近年、意図的に観客の印象に残らない映画音楽を志向するようになった。