映画の後には紅茶とお菓子を

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ショーランナー: テレビ番組の最高責任者

ショーランナーは脚本家がプロデューサーを兼ねることで、作品の根幹から制作現場での日常業務まで統括する。

かつてはアメリカのテレビ業界も、テレビネットワーク(e.g. ABC, CBS, NBC)のプロデューサーが番組制作の実権を握っていた。1970年代にシットコム "The Mary Tyler Moore Show" でプロデューサーが脚本家に自由に書かせたところ、テレビ業界全体に波及したらしい。おそらく、他作品の脚本家たちもプロデューサーに自由に書く権限を求め、脚本家たちと脚本家組合のストライキを恐れたプロデューサーたちが従わざるを得なかった、ということだと推測する。事実、2007年-2008年全米脚本家組合ストライキにより、アメリカのエンターテインメント業界は大打撃を受けていた。

製作会社もテレビネットワークも作品をヒットさせるため、ヒット作を長く続けるために、脚本家にどんどん製作の権限を与えるようになった。そして製作会社は脚本家に企画立ち上げまで任せるようになった。脚本家兼エグゼクティブプロデューサーが誕生した瞬間である。

映画は、プロデューサーが作品の責任者で、エグゼクティブプロデューサーはプロデューサーと製作会社・配給会社の間に立ち、状況を報告する人。お目付け役みたいな側面もある。テレビは、エグゼクティブプロデューサーが企画・脚本会議・主要スタッフ選び・キャスティングなど重要事項に関わる人で、プロデューサーは現場での日々の業務を統括する人。

アメリカの映画もテレビもエグゼクティブプロデューサーの肩書がどんどん増えるようになった。たとえば、製作会社幹部、製作費を提供した人(個人)や投資会社の幹部、原作者、原作の映像化権取得を仲介した人、ヒット作の主演俳優など、名誉の肩書の人も多い。契約の際に肩書きを要求されるからだ。

特にテレビ業界は、エグゼクティブプロデューサーが増えすぎて誰が本当の意味で責任者かわからなくなってしまった。そこでショーランナーという言葉が生まれた。文字通り、番組を経営する人という意味。1992年に業界紙『バラエティ』が showrunner という言葉を使い始めたらしい。

1995年に『ニューヨーク・タイムズ』が『ER』のショーランナー、ジョン・ウェルズを紹介した。その中でショーランナーについてこう説明している。

For the last 10 years at least, the person with that unofficial title has been the true auteur of series television. Day to day, a show runner makes all important decisions about the series' scripts, tone, attitude, look and direction. He or she oversees casting, production design and budget. This person chooses directors and guest stars, defends the show against meddling by the network or production company and, when necessary, changes its course.

理由は不明だが、ショーランナーがショーランナーとしてクレジットされることはなく、エグゼクティブプロデューサーとしてクレジットされる。