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『ID:INVADED イド:インヴェイデッド』の演出: あおきえい監督と碇谷敦さんによる解説

『アニゲー☆イレブン!』第228回は、『ID: INVADED イド:インヴェイデッド』の監督あおきえいさんとキャラクターデザイン・総作画監督の碇谷敦さんがゲストだった。

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絵コンテ・演出

絵コンテについては様々な監督・演出家が説明しているけれど、「制作スケジュールや予算に収まる」ことを公言したのはあまりないと思う。

 

一般的に脚本はあまり細部を書き込まない、細かく指定しない。細部は映画監督や演出家の領分だからだ。特にアニメ制作では演出家と監督が絵コンテ段階で映像を設計するため。
舞城王太郎の脚本には「バラバラの世界」としか書かれていない。どうバラバラなのか、何がどう固まっているのか。映像内の物体がバラバラすぎても、視聴者に見てほしいところに気づいてもらえない可能性がある。

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『ID: INVADED イド:インヴェイデッド』第1話より引用 ©IDDU/ID: INVADED Society

あおきえい監督は天の河のような破片の帯を用いて、主人公に視聴者の視線を誘導した。
視線誘導も映像演出の大切な役割の1つ。

 

作品を観れば、あおきえい監督の演出はときどきめんどくさい作業を要求される、と碇谷敦さんが言ったのも理解できる。
ロングショットやフルショットでキャラクターに芝居をさせる。人間の全身の動き、筋肉のつき方と動きを理解していなければならない。
カットを細かく割らない。つまりしっかりしたレイアウトが求められる。

 

碇谷敦さんによると、日本のアニメはジャッキー・チェンのようなアクション作画が多いそうだ。飛んだり跳ねたりといった動きが。
碇谷敦さんは絵コンテ・演出を担当した第9話ではプロレスを参考にしたと。考えていた技だと視聴者にわかりにくいので変更したと言っていたが、プロレスを知らないので技の名前を聞いてもわからない。

安藤真裕さんがかつて描いていた格闘アクションは、映像映えするものよりもリアルな動きを目指していたと思う。

 

キャラクターデザイン

キャラクターデザインについては小玉有起さんのキャラクター原案があるので、線を整理するキャラデ作業だったそう。
普通テレビアニメでは脚本を全部読んでデザインすることはないので、今回すべての話や要素を把握してデザインできたのでとても幸せだったと碇谷敦さんは語った。アニメは分業制作の文化なので、監督は全体を把握しているが、キャラクターデザイナーですらも脚本を読ませてもらえない。各セクションのスタッフにはその工程で必要な情報や資料しか渡されないし、スタッフも自分のセクションに関係ない部分には触れないと。
今作では碇谷敦さんが集めた作画さんたちにも読んでもらってモチベーションを高めてもらったそうな。