『ルパン三世 PART6』第4話「ダイナーの殺し屋たち」
作品について
『ルパン三世』のテレビアニメ第6シリーズ。舞台はイギリス。テーマはミステリー。
押井守さんが脚本。『うる星やつら オンリー・ユー』(1983)、『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(1984)、『機動警察パトレイバー』シリーズ、『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(1995)、『イノセンス』(2004)の監督。最近では『ぶらどらぶ』(2020)を監督した。
長沼範裕さんが絵コンテ。『魔法使いの嫁』(2017)の監督。鏑木ひろ監督『君に届け』シリーズと『となりの怪物くん』(2012)の助監督・副監督。
そえたかずひろさんが演出。
感想
アーネスト・ヘミングウェイの短編小説『殺し屋』("The Killers")をオマージュした物語。ストーリーをそのまま使っているので換骨奪胎ではない。
入れ子構造になっている。
まさか、またルパンに関わるとは夢にも思っていませんでした。
シリーズ構成の大倉さんが、「好きに書いてください」と言ってくれたので好きに書かせて貰いました。
責任はとれませんが、きっと大倉さんを始めとした皆さんが戦ってくれるのでしょう。
この脚本を採用してくれた製作者の皆さまの英断に感謝します。
だから押井守監督はこういうコメントだったのだろう。
押井守監督を見直した。こんな脚本を書く作家だったとは。教養を活かした作品。
作中で変装したルパンが言うように、短編は長編より書くのが難しい。長編はどれだけ文字数をかけても可能だけど、短編はテーマを絞り、描写をそぎ落として、短く鋭くまとめる必要がある。
ルパンと次元の変装は men in black。それを元ネタに、バリー・ソネンフェルド監督『メン・イン・ブラック』シリーズが製作された。
店員は日笠陽子さんだったのか。全然気づかなかった。
変装したルパンと次元は小林親弘さんと白熊寛嗣さんかな。栗田貫一さんや小林清志さん(大塚明夫さん)のお芝居に寄せているね。
ダイナー
トイレに立ったのは痩せた若い男性だったが、戻ってきたのは頭がはげた中年の肥満の男性。
宅配でマシンガンを受け取る殺し屋。名前は東郷十三(じゅうぞう)。『ゴルゴ13』。
『名探偵コナン』の目暮警部の名前も目暮十三(じゅうぞう)。こだま兼嗣監督、古内一成脚本『名探偵コナン 14番目の標的』(1998)で、トランプになぞらえて、名前に数字が含まれる人が順番に殺害される物語のために考えられた設定。
「台詞の多い奴から死ぬ」。ゴルゴはほとんど喋らない。
スティーヴン・セガール。B級アクション映画にたくさん出ている。プロデューサーを兼ねていることが多い。劇場公開されず、最初からDVD発売(direct-to-video)の映画が多い。『沈黙の戦艦』(1992)以降、日本の配給会社が原題を無視して『沈黙の○○』という邦題をつけて公開している。『沈黙』シリーズと呼ばれているが、『沈黙の戦艦』("Under Siege")(1992)の正式な続編は『暴走特急』("Under Siege 2: Dark Territory")(1995)のみ。
MALユーザーによると、ジョン・ウー監督『狼 男たちの挽歌・最終章』(1989)の主人公ジェフリー(Ah Jong)、ロバート・ロドリゲス監督の監督デビュー作『エル・マリアッチ』(1993)の主人公エル・マリアッチが元ネタらしい。
ロバート・ロドリゲス監督やクエンティン・タランティーノ監督は、暴力映画が多いから好みではない。いくつか観たことはあるけれどあまり覚えていない。
ジョン・ウー監督は1990年代から2000前半にアメリカでアクション映画を製作していた。『ミッション:インポッシブル2』(2000)や『レッドクリフ』(2008)は覚えている。二丁拳銃と白い鳩の人。
Yes. Also Ah Jong from The Killer, El Mariachi from Robert Rodriguez's Mexico Trilogy, and I'm sure more that others will catch.
Lee Marvin in the 1964 adaptation of The Killers is likely part of the inspiration for Jigen, so this was a good fit.Lupin III: Part 6 Episode 4 Discussion - Forums - MyAnimeList.net
ヘミングウェイの『殺し屋』を翻案した、ドン・シーゲル監督『殺人者たち』(1964)の主人公チャーリー・ストロムを演じたリー・マーヴィンが、次元のインスピレーションの1つになったのかも、とこのユーザーは書いている。小林清志さんが吹き替えを担当した。
ただ、モンキー・パンチさんは
「次元はジェームズ・コバーンをイメージして描いていていました。その声優をされてる小林さんが次元をやられると知ったときには、演出家の方がちゃんと原作を読んでいてくださったのだと感激しました」
モンキー・パンチ、「ルパン三世」3D化が次の夢! アニメ化40周年を迎え「立体で活躍するルパンが観たい」|シネマトゥデイ
と述べている。
Ernest Hemingway
ダイナーの店名"White Elephant"(白い象)とは、「無用の長物」という意味の成句。
ヘミングウェイの短編小説『白い象のような山並み』("Hills Like White Elephants")からとったのかな。
「10人のインディアン」とは、アガサ・クリスティの名作小説『そして誰もいなくなった』の昔の題名。1939年の初出では"Ten Little Niggers"で、niggerは黒人を意味する蔑称であるため改題。1964年から1986年には"Ten Little Indians"という題名で、作中での言及は"Indians"や"Soldiers"と改訂されたが、こちらも差別的な意味合いがあるため再び改題。もともとアメリカで1940年に出版された際に"And Then There Were None"という詩的な題名を用いていた。それがイギリスでも、世界的にも正式な題名となった。
でもヘミングウェイが元ネタなので、短編小説『十人のインディアン』("Ten Indians")。
ルパンの台詞「簡単な質問だろ?」はヘミングウェイの短編小説『簡単な質問』("A Simple Enquiry")。
ダイナーの店員が読んでいた本は、ヘミングウェイの短編集『男だけの世界』("Men Without Women")。村上春樹も『女のいない男たち』という短編集を2017年に出版した。英題は同じく"Men Without Women"。アメリカ文学に造詣が深い村上春樹らしい趣向。
店内で飼われている鳥は、毒ガスを検知するためかな。ヘミングウェイの短編小説『贈り物のカナリア』("A Canary for One")。
店内にかけられた風景画はヘミングウェイの短編小説『アルプスの牧歌』("An Alpine Idyll")から。
"Che Ti Dice La Patria?"、イタリア語で「祖国は汝に何を訴えるか」。ヘミングウェイの短編小説『ケ・ティ・ディーチェ・ラ・パートリア(祖国は汝に何を訴えるか)?』。
金曜日の設定は、ヘミングウェイの短編小説『今日は金曜日』("Today is Friday")から。
「仲良く分けりゃ1人頭5万ドルにはなるが」は、ヘミングウェイの短編小説『五万ドル』("Fifty Grand")から。
「ここから先は追い抜きレースだ」は、ヘミングウェイの短編小説『追い抜きレース』("A Pursuit Race")から。
「まさに敗れざる者ね」は、ヘミングウェイの短編小説『敗れざる者』("The Undefeated")。
「まさに陳腐なストーリーだが」は、ヘミングウェイの短編小説『陳腐なストーリー』("Banal Story")。
アンドレ・アンダーソンがベッドに寝ていたことと、それについての不二子の台詞「原作でも死を覚悟して身を横たえていた男の消息は書かれていない」。ヘミングウェイの短編小説『身を横たえて』("Now I Lay Me")。
「やつにとっちゃあらゆる場所がアナザーカントリーだからな」は、ヘミングウェイの短編小説『異国にて』("In Another Country")。
以上、『殺し屋』を含め、すべて短編集『男だけの世界』の収録作からの引用。
映画監督
アキ・カウリスマキ監督。
ラース・フォン・トリアー監督。この監督の精神は常人の理解できるものではない。中学生の時に『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(2000)を観て酷い目にあった。観終わった後、恐怖で震えが止まらなかった。それ以来、パルム・ドールなどカンヌ国際映画祭の受賞作は、審査員の品性がねじ曲がっていないか、疑いの目で見るようになった。ちなみに第53回カンヌ国際映画祭コンペティション部門の審査委員長は、フランス映画界において自身の成功だけでなく、経営する製作会社ヨーロッパ・コープを通して若い人を育てているリュック・ベッソン監督(その割に監督やプロデューサーとして微妙な作品を生み出しているが)。審査員の1人は、『羊たちの沈黙』(1991)や『フィラデルフィア』(1993)のジョナサン・デミ監督。
アンジェイ・ズラウスキー監督。
余談
第5話は芦辺拓さんが脚本。しかも前編。後編があると。
キャスト
ルパン三世:栗田貫一
次元大介:小林清志(EPISODE 0)→大塚明夫
石川五ェ門:浪川大輔
峰不二子:沢城みゆき
銭形警部:山寺宏一
シャーロック・ホームズ:小原雅人
リリー・ワトソン:諸星すみれ
レストレード:志村知幸
ハドソン:園崎未恵
ワトソン:西村太佑
エリオット:濱野大輝
フォークナー:高桑満
ノーラ:渡辺ゆかり
ジョー:米田えん
オリバー:武田太一
マーティン:山橋正臣
第4話キャスト
アンドレ・アンダーソン:桐本拓哉
ウェイトレス:日笠陽子
殺し屋①:小林親弘
殺し屋②:白熊寛嗣
殺し屋③:星野貴紀
殺し屋④:藤高智大
殺し屋⑤:井原正明
殺し屋⑥:菊池通武
殺し屋⑦:奥田寛章
殺し屋⑧:小玉雄大
第4話スタッフ
原画:
第二原画:
美術監督:松宮由美
オープニングアニメーション
ディレクター・絵コンテ:依田伸隆
演出:安部祐二郎
作画監督:丸藤広貴
作画:
東出太 崎山知明 竹上貴雄
安藤義信 垣野内成美 清水洋
山川宏治 和田高明 小保方千奈
動画検査:国島裕子
動画:ORANGE
色指定:宮脇裕美
仕上:ORANGE トムス・フォト(T.D.I.) すたじおかぐら
特殊効果:西香代子
2Dデザイン:澤見泰治 西山裕子
CGプロデューサー:川嶋洋樹
CGディレクター:星野申匡
美術:李凡善
制作進行:石川梨菜
エンディングアニメーション
ディレクター:森山洋
撮影:佐々木明美
メインスタッフ
原作:モンキー・パンチ
監督:菅沼栄治
シリーズ構成:大倉崇裕
キャラクターデザイン:丸藤広貴
色彩設計:宮脇裕美
美術監督:松宮由美、備前光一郎、小倉宏昌、西澤航、李凡善、竹田悠介
撮影監督:佐々木明美
編集:吉武将人
音響監督:清水洋史
音響効果:倉橋裕宗
録音:池田裕貴
録音助手:金子諒
音楽:大野雄二
企画プロデュース:加藤州平、加藤良太
企画:篠原宏康、桑原佳子
プロデューサー:野﨑康次、塩出正樹
アソシエイトプロデューサー:國府田崇裕、鈴木禎、伴在正行
企画開発:鈴木常泰
アニメーションプロデューサー:徳丸恵一
制作デスク:山崎正雄
設定制作:伊藤将志
文芸担当:米山昂
制作:トムス・エンタテインメント
製作・著作:ルパン三世PART6製作委員会