映画の後には紅茶とお菓子を

百合とアニメと映画の感想

『マルサの女』感想

マルサの女
製作年:1986年
製作国:日本
公開日:1987年2月7日

 

 

作品について

伊丹十三監督・脚本。

ドラマ映画。

続編に伊丹十三監督『マルサの女2』(1988)がある。

 

 

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感想

おもしろい。

税務署員や、国税専門官である東京国税局査察部査察官(通称「マルサ」)の職務を描いている。特にバブル時代だから、お金を持っている人や企業の中には脱税していたのも多かっただろうね。

ガサ入れの際には、その家の子どもには親が査察を受けたとことを知られないようにしよう、と気遣う。

 

1.37:1のアスペクト比伊丹十三監督のこだわりなのかな。

テーマ曲を聞いたことがある。『マルサの女』の劇伴だったのか。

ナサケの女 国税局査察官』(2010)は『マルサの女』のオマージュだったらしい。脚本:中園ミホ。演出:松田秀知、田村直己。プロデューサー:内山聖子、木内麻由美、協力プロデューサー:梅田玲子。制作協力:ザ・ワークス、制作著作:テレビ朝日

「マルサのジャック・ニコルソン」。

 

身体検査

女性の身体検査を女性職員にさせず、男性職員たちが服や下着を脱ぐ女性を眺めているというのが時代を感じさせる。主人公・板倉亮子は男性職員による身体検査による身体検査が行われていることを無視して、1人で貸金庫の鍵を探していた。

国税通則法 第142条 所有者等の立会い
4 女子の身体について捜索をするときは、成年の女子を立ち会わせなければならない。ただし、急速を要する場合は、この限りでない。

国税通則法 | e-Gov法令検索

作中では身体検査も許可されていると査察官が言った。税理士の山口剛史さんによると、「警察の捜査と違って身柄を拘束したり、身体検査をすることはできませんが、持ち物検査はできるようです」とのこと。

ty-tax-accountant.com

つまり作中の男性職員たちは嘘をついて女性に服や下着を脱がせたことになる。東京国税局査察部による組織的な強制わいせつ事件。

現在では特別公務員暴行陵虐罪などで処罰される(隠蔽されなければ)。警察官が警察署内で支配下にある人に性暴力を振るうのと同じ。

ジョン・アクトンの名言「権力は腐敗する、絶対的権力は絶対に腐敗する」。警察官、検察官、裁判官、刑務官、自衛官海上保安官、消防士などによる犯罪は多い。

 

 

ufotable

アニメ制作会社ufotable代表取締役社長の近藤光は脱税で有罪判決を言い渡された。悪質な手口だったにもかかわらず、裁判での泣き落としが功を奏し、裁判官は騙されたようだ。

「弊社で利益が出ているのは、実のところカフェ事業と作品のグッズ販売。現在までアニメ制作を続けて来られたのはこの2つがあったからですが、作品がヒットせずカフェの集客やグッズ販売に見込みが立たなくなると、スタッフの給料や制作にかかる経費も支払えなくなります。そこで何かあった時に運転資金に困らないようにするため、頼りになる現金を少しでも確保しておきたいと思いました」

「脱税したのは会社に何か困ったことが起きた時のために現金を置いておきたかったからです」

www.dailyshincho.jp

製作委員会に出資し著作権を得て関連ビジネスを行う「製作」と異なり、現場でアニメを制作する「制作」は、作品がヒットしても利益を得られない。だから、製作委員会に出資する体力がない多くのアニメ制作会社は経営に苦しんでいる。でも脱税が発覚する制作会社や経営者はあまりいない。近藤光は甘えていただけ。

 

近藤光は『鬼滅の刃』シリーズで制作プロデューサーとしてクレジットされ続けている。

テレビアニメ第1期では、製作委員会への出資責任者という意味の「企画」、製作委員会出資企業の現場責任者という意味の「プロデューサー」、元請け制作会社のプロデューサーという意味の「制作プロデューサー」と、3つの肩書でクレジットされていた。

2020年6月3日に東京国税局が法人税法違反などで東京地検に告発したと報道されて以降に公開された作品では、「企画」「プロデューサー」のクレジットから名前が消えている。

アニプレックス集英社は大ヒット作品を続けるために、ufotableを切り捨てられなかったのだろう。ufotableは他社では真似できない技術を持っている。なので『鬼滅の刃』をufotableから引き揚げて、他社に制作させることはできなかった。

それでも近藤光に制作プロデューサーという作品作りの要所を続けさせているので、アニプレックス集英社は犯罪に甘い企業と言える。アニプレックスのアニメ製作事業はソニーグループの柱の1つなので、ひいてはソニーグループは犯罪に甘い企業と見なされる。

 

 

キャスト

板倉亮子:宮本信子
権藤英樹:山﨑努
花村:津川雅彦
伊集院:大地康雄
金子:桜金造
姫田:麻生肇
剣持和江:志水季里子
鳥飼久美:松居一代
石井重吉:室田日出男
宝くじの男:ギリヤーク尼ヶ崎(声:加藤精三)
食料品店の夫婦:柳谷寛、杉山とく子
リネンサービス社長:佐藤B作
特殊関係人:絵沢萠子
権藤太郎:山下大介
大谷銀行営業課長 染谷:橋爪功
パチンコ店の社長:伊東四朗
税理士:小沢栄太郎
露口:大滝秀治
秋山:マッハ文朱
山田:加藤善博
税務署長:嵯峨善兵
蜷川喜八郎:芦田伸介
査察部管理課長:小林桂樹
杉野光子:岡田茉莉子

査察部統括官:江角英明、小林勝彦
花のような少女:山下容莉枝
中年男:小坂一也
ラブホテルの経理係:横山道代
すばる銀行支店長:田中明
すばる銀行次長:成田次穂
すばる銀行取引課長:高橋長英
看護婦:渡辺まちこ
袴田利兵衛:竹内正太郎
蜷川の腹心:上田耕一、ジャンボ杉田
不動産屋:汐路章
パチンコ屋の店員:掛田誠
刑事:友金敏雄、小池雄介
菊池:辻村真人
マンションの若夫婦:ベンガル、畠山明子

 

 

スタッフ

監督:伊丹十三
脚本:伊丹十三
製作:玉置泰、細越省吾
撮影:前田米造
美術:中村州志
照明:桂昭夫
録音:小野寺修
編集:鈴木晄
効果:斉藤昌利
音楽:本多俊之
音楽プロデューサー:立川直樹
衣裳:小合恵美子、斉藤昌美
装飾:山崎輝
振付:宮崎渥巳
技斗:高瀬将嗣
演出助手:久保田延廣
助監督:白山一城
製作:伊丹プロダクション、ニュー・センチュリー・プロデューサーズ
配給:東宝