映画の後には紅茶とお菓子を

百合とアニメと映画の感想

『裏世界ピクニック』第1話の感想

『裏世界ピクニック』第1話「くねくねハンティング」

 

 

作品について

宮澤伊織さんの小説が原作。百合SF小説として2017年の出版当時から話題になっている。*1

2018年からは水野英多さんによる漫画が月刊少年ガンガンに連載されている。水野英多さんは『スパイラル 推理の絆』など城平京さんとのコンビで知られている。

サイエンス・フィクション推理小説/ミステリーをはじめとする海外文学の出版で知られる、早川書房の小説がアニメになるとは思わなかった。*2

 

アンドレイ・タルコフスキー監督のSF映画(1979)にもなった、ストルガツキー兄弟の小説『ストーカー』の影響を受けている。ロシア語の原題«Пикни́к на обо́чине»は「路傍のピクニック」という意味。英語題名は"Roadside Picnic"。
ちなみに、ご多分に漏れずアンドレイ・タルコフスキー監督の映画は現在の映像演出とは大きく異なるので、最後まで観るのに苦労する。

アンドレイ・タルコフスキー監督『ストーカー』を、ロシア政府所有の映画会社モスフィルムが公式配信している。日本語字幕もあるよ。


Сталкер (фантастика, реж. Андрей Тарковский, 1979 г.)

 

メインスタッフ

佐藤卓哉監督は近年『あさがおと加瀬さん。』(2018)、『フラグタイム』(2019)と立て続けに百合作品を監督している。また同性愛を描いた話を含む『どうにかなる日々』(2020)も監督した。

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STEINS;GATE』(2011)を浜崎博嗣監督と共同で監督したり、『好きっていいなよ。』(2012)、『舟を編む』(2016)、『selector infected WIXOSS』及び『selector spread WIXOSS』(2014)など、作品の幅が広い監督。

佐藤卓哉監督は、監督・シリーズ構成・音響監督・音楽プロデューサー、さらに各話の脚本と絵コンテ、エンディングアニメーションの構成・演出と、八面六臂の活躍。

 

小説の担当編集の溝口力丸さんがプロデューサーを務めている。担当編集がアニメのプロデューサーを兼ねるのは電撃文庫など旧メディアワークスみたい。

 

キャラクターデザインと総作画監督の西畑あゆみさんは、一時期P.A.WORKSに籍を置きメインスタッフとして参加していた。水島努監督『SHIROBAKO』(2014)の作中作『第三飛行少女隊』のキャラクターデザインと総作画監督を務めていた。それに加えてローテーションで作画監督したり、原画を描いていた。

w.atwiki.jp

色彩設計の岩井田洋さん、撮影監督の口羽毅さん、編集の後藤正浩さんは『あさがおと加瀬さん。』『フラグタイム』からのチーム。また美術監督の松本浩樹さんは『あさがおと加瀬さん。』のアニメーションクリップ「キミノヒカリ」で美術設定を担当した。

エフェクト作画監督の吉田徹さんは上手いアニメーター。役職の通り、エフェクト作画の面から作品の質を底上げしてくれるだろう。

クリーチャーデザインの江間一隆さんは、クリーチャーとはまったく関係ないけれど、加藤誠監督、TROYCA制作『やがて君になる』(2018)で小物設定を担当し、3話数で原画を描いていた。

 

オープニングアニメーションの絵コンテ・演出は、『Lapis Re:LiGHTs』の畑博之監督。

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制作会社

ライデンフィルムが元請け制作会社なのは『どうにかなる日々』からの縁かな。京都スタジオが中心になって制作した。

ライデンフィルムは複数の制作ラインがある。

ライデンフィルムは2021年1月番は4作品を元請け制作。4月番は2作品、そのうち1作品はテレビシリーズ放送直前の4月1日に映画を公開する。去年の元請け制作は2作品、そのうち1作品はショートアニメで約1年間放送していた(している?)。今年放送や公開の作品の中には、先行で制作していたラインもあるだろうと思う。あるいはCOVID-19の影響で、内々で放送時期が延期になった可能性もある。

『裏世界ピクニック』はライデンフィルムとFelixFilmの共同制作。というよりFelixFilmが主体になって制作しているのでは?と推測している。FelixFilmのアニメーションプロデューサー菊地悠太さんが制作デスクと設定制作を兼務していることからもうかがえる*3。また『裏世界ピクニック』のメインスタッフのアニメーターたちはFelixFilmの過去作品に参加していた。

佐藤卓哉監督の言葉がその裏付け。

 

FelixFilmの取締役でCGプロデューサーの田中臥竜さんによると、話数毎にFelixFilmとライデンフィルムが担当制作を交代しているようだ。

 

幾原邦彦監督、古川知宏副監督、SILVER LINK.制作『ユリ熊嵐』(2015)は、幾原邦彦監督が拠点にしているラパントラックが制作を主導していて、SILVER LINK.がそれを様々な面で支えていたように。その後ラパントラックが体力をつけて、『さらざんまい』(2019)をMAPPAと共同で元請け制作した。

 

 

感想

アニメ化が発表されてからずっと楽しみにしていた。好きな小説や漫画がどう映像化されるのか、監督たちがどう解釈したのかをいつも楽しみにしている。

 

ネットロアというか都市伝説が元ネタ。まったく知らない。

 

背景美術と撮影が美しい。全体的に彩度が低い美術と色彩設計

メインスタッフとしてエフェクト作画監督を立てているから、視覚効果がいい。手描き作画と2DCG/3DCGと撮影。

エンディングアニメーションが綺麗。

各種作画監督たちが原画も描いているから、第1話の制作スケジュールは良好だったのかな。

 

空魚も鳥子も可愛い。

「知ってる? 共犯者ってこの世で最も親密な関係なんだって」

 

おもしろい。これから3か月間楽しみ。

Blu-ray Discを買う予定。監督をはじめスタッフのインタビューやキャストのインタビューや設定資料集が掲載されたブックレット、絵コンテ集などが特典としてついてくるといいな。

 

 

Ophelia

「オフィーリアかと思った」
鳥子が初対面で空魚を例えた言葉。

ウィリアム・シェイクスピアの戯曲『ハムレット』の登場人物。フランコ・ゼフィレッリ監督・共同脚本の1990年版映画では、あのヘレナ・ボナム=カーターが可憐なオフィーリアを演じていた。ケネス・ブラナー監督・脚本・主演の1996年版映画ではケイト・ウィンスレットが可憐なオフィーリアを演じていた。

ジョン・エヴァレット・ミレーによる絵画が有名。

 

 


主題歌

早川書房は去年12月から児童書レーベル「ハヤカワ・ジュニア・ブックス」でジュニア版の刊行を始めた。早川書房の編集部のブログ記事によると、小学生や中学生の読者からの声が多く寄せられたそうだ。

www.hayakawabooks.com

www.hayakawabooks.com

CHiCO with HoneyWorksは小学生、中学生、高校生の女子たちから支持されている。CHiCO with HoneyWorksの今までのタイアップを考えると、『裏世界ピクニック』の製作委員会や音楽制作会社の売り出し方が想像できて興味深い。監督やプロデューサーや音楽プロデューサーの考えも。

 

エンディングテーマは佐藤ミキさん。

 

オープニングテーマ「醜い生き物」もエンディングテーマ「You & Me」もどちらもいい楽曲だね。

 

2月2日追記:
佐藤ミキさんの「You & Me」のミュージックビデオを観ると、この楽曲は特に若い女性を主なお客さんと考えて宣伝する方針だと思う。


佐藤ミキ『You & Me』M/V(「裏世界ピクニック/Othreside Picnic」ED)【先行配信中】

 

 

キャスト

紙越空魚:花守ゆみり
仁科鳥子:茅野愛衣
小桜:日高里菜
瀬戸茜理:富田美憂

 

 

第1話スタッフ

脚本:佐藤卓哉
絵コンテ:佐藤卓哉
演出:牧野友映

作画監督坂本千代子、佐藤哲也(ラインファーム)
アクション作画監督:小田裕康(スタジオもがな)
銃器作画監督:松本弘(アニモキャラメル)
クリーチャー作画監督:吉田徹(アニメアール)
総作画監督:西畑あゆみ

動画検査:元木香澄
色指定・検査:山弥夕夏(ラインファーム)、岩井田洋(Assez Finaud Fabric.)

 

 

シリーズスタッフ

原作:宮澤伊織 (ハヤカワ文庫JA / 早川書房刊)
キャラクター原案:shirakaba

監督・シリーズ構成:佐藤卓哉
キャラクターデザイン・総作画監督:西畑あゆみ
総作画監督:三島千枝、福地友樹、坂本千代
サブキャラクターデザイン:福地友樹
クリーチャーデザイン:江間一隆
プロップデザイン:新谷真昼、木村友美、松本弘
エフェクト作画監督:吉田徹
色彩設計:岩井田洋
美術監督:松本浩樹
3Dディレクター:白石優也
3Dリードアニメーター:鈴木雅臣
2Dワークス:松田陵平
CGプロデューサー:田中臥竜
3DCGI:FelixFilm
撮影監督:口羽毅
編集:後藤正浩
音響監督:佐藤卓哉
音響効果:川田清貴
音楽:渡辺剛
音楽プロデューサー:小倉充俊、佐藤卓哉
音楽制作:グッドスマイルフィルム
音楽制作協力:ミュージックブレインズ
チーフプロデューサー:深尾聡志
プロデューサー:石川義洋、小倉充俊、渡瀬昌太、溝口力丸、菊地洋平、大和田智之、相田剛、阿部隆二、木村康貴、林信仁
アニメーションプロデューサー:里見哲朗、中智仁、菊地悠太
制作デスク・設定制作:菊地悠太
アニメーション制作:ライデンフィルム × FelixFilm
製作:DS研(博報堂DYミュージック&ピクチャーズ、グッドスマイルフィルム、エー・ティー・エックス早川書房ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントBS11フロンティアワークススクウェア・エニックスアミューズメントメディア総合学院)

*1:SFとは何か?という議論は不毛なので。各々が思うSFがSF。

*2:実際はハヤカワ文庫JAから出版された小説が多数アニメ化されているけれど。2010年代だと故・伊藤計劃SF小説が原作の、なかむらたかし監督、マイケル・アリアス監督『ハーモニー』(2015)、村瀬修功監督『虐殺器官』(2017)などがある。

*3:SHIROBAKO』を観れば制作デスクが現場の要であることがわかると思う。