映画の後には紅茶とお菓子を

百合とアニメと映画の感想

『宇宙戦争』(2005): COVID-19の今観るとまた違ったおもしろさがある

宇宙戦争
原題: War of the Worlds
製作年:2005年
製作国:アメリカ合衆国

 

 

作品について

パラマウント映画とドリームワークス・ピクチャーズ*1の共同製作・共同配給作品。
分担がおもしろい。パラマウント映画がアメリカ合衆国の劇場配給と世界でのホームビデオ発売、ドリームワークス・ピクチャーズが国際劇場配給とアメリカ合衆国のホームビデオ発売。
設立当初はドリームワークス・ピクチャーズ作品の配給をユナイテッド・インターナショナル・ピクチャーズ(UIP)が担っていたので、多くの国ではUIPが劇場配給した。

 

原題の"War of the Worlds"は字義通りに解釈すると、地球人の世界と地球外知的生命体(宇宙人)の世界という2つの世界がぶつかる戦争。
「世界戦争」と逐語訳すると、第一次世界大戦第二次世界大戦第三次世界大戦……のようになってしまう。だから「宇宙戦争」と翻訳したのだろうね。
Wikipediaによると、「宇宙戦争」という題名の初出は最初の日本語訳である、1915年に秋田書院が出版した光用穆訳らしい。

 

 

感想

ちょうど1年前の2019年4月14日にBS日テレで字幕版を本編ノーカット放送していた。今日はBSテレ東で吹き替え版(2か国語版)を放送。
今回はCMを含めて2時間14分枠(134分)だった。米田匡男氏の解説もあった。『宇宙戦争』は116分。エンディングを除いた本編ノーカットかどうかは後で確認してみないとわからない。
エンディングは高速スクロールだった。

 

何度観てもおもしろい。

新型コロナウイルス(COVID-19)の危機的状況の最中に観ると、以前とはまた違った印象を受ける。

 

H・G・ウェルズの小説に加え、オーソン・ウェルズ監督・主演のラジオドラマ(1938)、バイロン・ハスキン監督とジョージ・パル製作の映画(1953)をもとにしている。*2

ちなみに先日4月17日から4月24日まで、シネマトゥデイが「金曜レイトショー」と銘打って1953年の『宇宙戦争』を無料配信していた。*3

www.cinematoday.jp

 

トム・クルーズがプロデューサー兼主演の映画は、トム・クルーズが格好良く活躍する話が多い。
宇宙戦争』はトム・クルーズがだめな父親を演じているのが興味深い。それでも何とか子どもたちを守ろうとする。家族を守るので精一杯、世界を救うことなど無理。

典型的なハリウッド映画のヒーロー願望を描いていないのが良い。
スティーヴン・スピルバーグ監督は2001年9月11日の出来事を念頭に置いて今作を演出した。

 

元妻の家の地下室で夜を明かし、翌朝レイが1階に上がるとリビングが散らかっていた。カメラが後ろに下がるにつれ家が半壊していることがわかる。レイのとぼとぼとした歩きに合わせて、燃えているジェットエンジンの前をカメラが横切り、飛行機の残骸が転がっている様子を映し出す。
演出が巧みだよね。
登場人物がフレームの外を凝視している。その顔に喜びや悲しみ、驚きや怒りなどの感情が浮かんでいる。その後で、その登場人物に強い感情を抱かせた物事を観客に見せる。すると観客もより強く感じる。スティーヴン・スピルバーグ監督がよく使う演出。

 

 

ウェブ上でこの映画の感想を読むと、女の子の叫び声がうるさいという主張が多々ある。話の流れの中で自然な叫びであるのに、うるさいと主張する人は「そういう人」なのかなと思う。
叫び声の音量? 音高? 視聴者のために声を抑えて叫べとでも言うのかな?
今作に関して、音量が大きい、音圧が高い効果音にはあまり文句を言わないのに?

 

 

Ultra HD Blu-ray

6月24日に『宇宙戦争』などの4K UHD BDが発売される。

av.watch.impress.co.jp

英語音声はDolby Atmos。日本語音声は相変わらずDolby Digital 5.1chのまま。

 

北米盤の情報によると、映像はネイティブ4K(2160p)のDolby Vision HDR / HDR10らしい。

www.blu-ray.com

ultrahd.highdefdigest.com

35mmフィルム撮影だったしね。
2020年公開のリマスター版は4K DI*4

www.imdb.com

shotonwhat.com

ヤヌス・カミンスキー撮影監督はイーストマン・コダック富士フイルムのネガフィルムを使い分けたらしい。メーカーによって、型番によって、特徴や得られる画像の質感が異なる。撮影監督は、監督と打ち合わせして、監督の演出方針や作品の意図を汲んで画作りを決める。撮影の機材や使用するフィルムを選ぶ。シーンやショットごとにレンズを使い分けるし、フィルムも使い分ける。監督が思い描くイメージを映像として実現させるのが撮影監督の役割。だから映画賞の授賞式などで、監督は撮影監督に惜しみない賛辞を贈る。
2012年に富士フイルムが映画撮影用カラーネガフィルムと上映用ポジフィルムの生産から撤退する前だからね。

 

 

キャスト

レイ・フェリエ:トム・クルーズ(森川智之)
レイチェル・フェリエ:ダコタ・ファニング(三村ゆうな)
ロビー・フェリエ:ジャスティン・チャットウィン(野島健児)
メリー・アン・フェリエ:ミランダ・オットー(本田貴子)
ハーラン・オグルビー:ティム・ロビンス(てらそままさき)
ナレーター:モーガン・フリーマン(津嘉山正種)

 

吹替演出:三好慶一郎
吹替翻訳:岸田恵子
字幕翻訳:戸田奈津子

 

 

スタッフ

監督:スティーヴン・スピルバーグ
脚本:ジョシュ・フリードマンデヴィッド・コープ
原作:H・G・ウェルズ
製作:キャスリーン・ケネディコリン・ウィルソン
製作総指揮:ダミアン・コリアー、ポーラ・ワグナー
音楽:ジョン・ウィリアムズ
撮影監督:ヤヌス・カミンスキー
編集:マイケル・カーン
製作会社:パラマウント映画、ドリームワークス、アンブリン・エンターテインメント、クルーズ/ワグナー・プロダクションズ
配給:パラマウント映画 (米国)、UIP (日本)

 

プロダクションデザイン:リック・カーター
セット装飾:Anne Kuljian
衣装デザイン:Joanna Johnston

特殊効果スーパーバイザー:David Blitstein, Connie Brink on New York unit, Gintar Repecka

視覚効果スーパーバイザー:Dennis Muren as senior visual effects supervisor; Pablo Helman for ILM; Matthew Gratzner for New Deal Studios, Inc., Edward Hirsh as additional visual effects supervisor for ILM, Ian Hunter for New Deal Studios, Inc., Kim Libreri as additional visual effects supervisor for ILM, Ricardo Ramos
視覚効果プロデューサー:Sandra Scott for ILM, Cari Thomas

アニメーションスーパーバイザー:Randy M. Dutra for ILM, Jenn Emberly as associate animation supervisor for ILM, Tim Harrington as associate animation supervisor for ILM

合成スーパーバイザー:Marshall Richard Krasser for ILM

practical effects supervisor: Robbie Clot for ILM, Geoff Heron for ILM

モデル/ミニチュアスーパーバイザー:Steve Gawley for ILM
デジタルモデルスーパーバイザー:Michael Koperwas for ILM, Russell Paul for ILM

visual effects director of photography: Kim Marks for ILM, Marty Rosenberg for ILM

*1:当時は映画スタジオだった。現在は製作会社アンブリン・パートナーズの製作レーベル。

*2:ローランド・エメリッヒ監督『インデペンデンス・デイ』は『宇宙戦争』(1953)のオマージュが随所に盛り込まれている。(地球製の)Macで作成したコンピューターウィルスが宇宙船のコンピューターを乗っ取り、宇宙船を破壊した点は置いといて。

*3:COVID-19感染拡大防止で自宅にいる間、名作映画を観て楽しみましょうという趣向。

*4:digital intermediate; デジタル・インターミディエイト