紡ちゃん可愛いな、ということで気づいたことを書いておく。
2015年12月1日公開の『MEMORiES MELODiES』MVはボンズ制作で、2018年から放送中のテレビシリーズはTROYCA制作。
個々の作品の制作意図もスタッフも全部違うので、作風も画作りも違う。
あらかじめ断っておくが、優劣をつける意図はない。ほめるために書いている。
始めに
ボンズ撮影部とTROYCAデジタル部では撮影処理が異なる。
当然、監督と撮影監督が打ち合わせして作品ごとに方針を決めるから。
ボンズはもともとサンライズ第2スタジオの南雅彦プロデューサーと逢坂浩司さんや川元利浩さんたちスタッフが独立、設立した制作会社。レイアウトやアニメートに長けたアニメーターとの人脈を持ち、作画に定評のある作品群を制作している。
当初は撮影(デジタルコンポジット)を外注していたけれど、2000年代半ば頃に社内に撮影部を立ち上げ、次第に自社作品の撮影を一手に担うようになる。
現在はABCDEの5スタジオ(5ライン)ある。スタジオごとにプロデューサーがいて、それぞれ作風が違う。
制作進行から演出家になった人が何人もいて、様々な制作会社で監督してる。
ボンズの撮影は作画の力を補強する、また引き出す撮影処理。わかりやすいフィルターやエフェクトや派手なものはあまり多用しない傾向にあるため、一見地味に見え、撮影が優れた制作会社の話題であまり名前が挙がらないけれど、私はボンズの撮影を評価している。
2021年5月25日追記:最近は色収差などを使うようになった。松本理恵監督が影響をもたらした印象がある。
TROYCAはかつて存在したAIC Classic*1の長野敏之プロデューサー、加藤友宜撮影監督、あおきえい監督たち『放浪息子』を手掛けたスタッフが中心になり独立、設立した制作会社。加藤友宜撮影監督が設立者の1人で取締役と副社長を兼務しているため、設立当初より撮影に力を入れている。
ちなみに加藤友宜さんはアニナナではデジタルプロデューサーを務めている。
TROYCAの撮影は写実的な映像を志向していると思われる。光と影・陰に特徴がある。実写映画のカメラとレンズを念頭に置いた画作りは、京都アニメーションの撮影処理が知られている。ufotableの撮影処理は……何だろう? ufotableの撮影は、作画、仕上げ、背景、2DCG、3DCGを馴染ませるのに長けている。この系統の画作りは作画(正確には彩色を施した動画)も背景美術もあくまで素材の1つとして考え、作画の線をそのまま見せることに必ずしも拘らない。
ボンズの紡ちゃん
池添隆博監督。
コンテ・演出は山岸大悟さん。
永作友克さんが作画監督。*2
動画検査は戸津由美子さん。
色彩設計・色指定・検査は後藤ゆかりさん。
撮影監督は佐々木康太さんと張盈穎さんの2人。
『SHOW BY ROCK!!』のチームがそのまま制作したっぽい。
紡ちゃんの妖精さん。
木の陰から覗き見ているので、日中の太陽光を浴びて少し白飛びしている。
手前の木の幹は多少ボケている程度だけど、遠くの木々はディテールがわからなくなっている。
妖精さんなので、羽根にパーティクルなどキラキラしたエフェクトがかかっている。妖精さんが飛んだり羽根を動かしたりしているとき鱗粉が舞う。
IDOLiSH7のステージを見守っているので、照明の照り返しを再現している。
目に浮かんでいる涙で、その奥の目やまぶたがかすんでいる。
夜の背景が羽根を通して透けて見える。
ダンス
このミュージックビデオで特筆すべきはIDOLiSH7の皆とダンスするシーン。カップルダンス/ペアダンスはソロダンスよりも描くのが難しい。2人の動きを同期させないといけないし、位置を合わせないといけないから。なので『ボールルームへようこそ』を制作した板津匡覧監督とProduction I.Gとスタッフたちは称賛に値する。
アイドルのようなグループダンスは、こちらはこちらで難しい。特に物量的に。だからアイドルアニメは歌唱シーン・ダンスシーンを3DCGで描くのが主流なのだろう。
ボンズは重原克也監督によるTRIGGERの『DAYBREAK INTERLUDE』*3で全部手描き作画で踊らせてて、ようやるわと思った。
他のMVだとこれが手描き作画のダンスかな。
田頭しのぶ監督によるRe:valeの『NO DOUBT』*4。Production I.G制作。
境宗久監督によるIDOLiSH7の『ナナツイロ REALiZE』*5。MAPPA制作。
宍戸幸次郎監督によるŹOOĻの『Bang!Bang!Bang!』*6は3DCGかな? 撮影処理で2D作画っぽく見えるけど。キャラクターの3Dモデルを作って、モーションキャプチャーのデータをもとに動かしてるし。ufotable制作。
5月5日追記:
TROYCAも手描き作画で踊らせてた。
『アイドリッシュセブン Vibrato』第1話のフリーダンス。
原画は牧野竜一さん。TROYCA所属のアニメーターの中でも、アニメート(動き)が上手い作画さんの1人。
フリーダンスのカット群は牧野竜一さんの特徴がよく出ているし、もしかして作画監督修正をほとんど入れてないのかな?
別所誠人監督。
第1話の絵コンテがあおきえいさん、演出が馬川奈央さん。
作画監督が合田浩章さんと猪股雅美さん、作画監督協力が大橋知華さん。
総作画監督が猪股雅美さんとサトウミチオさん。
TRIGGERフリーダンス原画が牧野竜一さん。
動画検査が内村美佳子さん。
色指定・検査が橋本朋美さん。
撮影監督が津田涼介さん。
TROYCAの紡ちゃん
別所誠人監督。
第1話の絵コンテ・演出は別所誠人さん。
アニメーションキャラクターデザインは深川可純さん。
作画監督は猪股雅美さん。総作画監督の猪股雅美さんが作監として全カット見ただろうし、(他の)総作監は入れてないのかな。
第1話の動画検査は内村美佳子さんと宮本雄介さん。
色彩設計と第1話の色指定・検査は篠原真理子さん。
撮影監督は津田涼介さん。
第1期第1話ラスト、紡ちゃんがIDOLiSH7となる皆に挨拶した時、「こちらこそよろしく」「マネージャー!」と声をかけられ満面の笑顔を浮かべた紡ちゃん。
スタジオ内の蛍光灯が当たっている。
背景の打ちっぱなしコンクリート壁がボケている。紡ちゃんにカメラのフォーカスを当てているので、背景はボケる。被写界深度が浅い。
目の虹彩がガラス玉っぽい。宝石ほどではない処理。グラデーション処理は色彩設計の人と打ち合わせして、彩色部署と連携して行う。
スノードロップ
トロイカとつながりの深い制作会社スノードロップについても記しておこう。
スノードロップはAICのプロデューサーだった福家日左夫さんが設立した制作会社で、神戸にある。2011年の設立から現在まで元請けは行わず、一貫して制作グロス*7や作画協力などを行っている。
総作画監督の日下部智津子さんを筆頭に、少人数で原画・動画・仕上げを高いクオリティでこなす。おそらく制作進行をしている福家日左夫さんのスケジュール管理が優秀なのだと思う。人によっては原画・動画・仕上げの工程の枠を超えて仕事していることも。
グロス回は作画が悪い、と思い込んでいる人も多いが、グロス会社やスタッフ、製作委員会や元請け制作会社から与えられたスケジュールによってはクオリティの高い仕事をする。
スノードロップはその1社だ。
TROYCA作品によく参加していて、『アイドリッシュセブン』第10話、『やがて君になる』第7話、『ロード・エルメロイII世の事件簿 -魔眼蒐集列車 Grace note-』第7話がスノードロップの制作によるもの。
アニナナ第2期にも参加しているらしい。
いよいよ本日より放送開始ですね!
— 株式会社 スノードロップ (@snowdrop_anime) 2020年4月5日
もう少し先の話数になりますが、スノードロップでもアニナナ制作中です(^o^)/
今期も1話から目が離せません!#アイナナ #アニナナ2期#アニナナSB観ようぜ https://t.co/ACZPM3Sp9r
6月11日追記:
アプリのアニメーションもスノードロップが制作していた。
【アイドリッシュセブン第4部】
— 株式会社 スノードロップ (@snowdrop_anime) 2019年12月27日
16章1話冒頭のアニメーションムービーをスノードロップで制作しました。
一部ですが線撮りのムービーを公開します。
STAFF
監督.絵コンテ.総作画監督:日下部智津子
演出:鳥井聖美
作画監督:松林志穂美
アニメーション制作:スノードロップ pic.twitter.com/RCXb6HWaWz
映像制作に使われた原画と、全スタッフリストはブログにて公開してます ↓https://t.co/YZbokkjavH
— 株式会社 スノードロップ (@snowdrop_anime) 2019年12月27日
キャラクターデザイン
種村有菜さんの原案と深川可純さんのキャラクターデザインをもとにしていても、アニメーションキャラクターデザインやもろもろの処理が違う。
MVを含めた作品ごとにアニメーションキャラクターデザインを作っているようだ。
これも監督とキャラクターデザイナー、プロデューサーや製作委員会、原作者側とのすり合わせが関与する。
メモメロのMVは丸みを帯びた顔のデザイン。
テレビシリーズは細長くシュッとした顔のデザイン。
髪の毛の房のとらえ方が違う。
まつ毛の処理が異なる。MVはギザギザが多く、TVは少ない。
眉毛はMVが目頭側だけ厚みがあり目じり側は一本の直線。TVは弓のように弧を描いている。
二重瞼や目のくぼみも線の入れ方が違う。
ほっぺたはMVがほほブラシで、TVは実線で描きボカす。実線ボカしはこのカットの描き方で、いつもはTVもほほブラシだった。
正面顔の鼻を線で描く処理も微妙に違う。
声優
佐藤聡美さんの紡ちゃんの芝居も可愛い。
そして可愛いだけじゃなくて格好良いも併せ持つ。
結論
どの紡ちゃんも可愛いのです。
*1:株式会社アニメインターナショナルカンパニーの内部スタジオの1つ
*2:永作友克さんは上手いから、総作監修正なしでもキャラ似せできるだろうね。
*3:ディレクターが重原克也さん、アニメーションキャラクターデザインと作画監督が竹知仁美さん、作画監督補佐が杉泊朋子さん、メインアニメーターが楡木哲郎さん、動画検査が今西麻綾さんと石橋佳奈さん、色彩設計・色指定・検査が竹澤聡さん、撮影監督が佐々木康太さん。
*4:田頭しのぶ監督が1人で絵コンテ・演出、キャラデ、作画監督、原画(第一原画)をやっていて、これまたようやるわ。第二原画としてProduction I.Gのアニメーターが清書しているけれど。動画検査が菅田朋子さん、色彩設計・色指定・検査が中田亮太さん、撮影監督が中田祐美子さん。
*5:『ゾンビランドサガ』のチーム。監督・絵コンテが境宗久さん、演出が佐藤威さん、キャラデ・総作画監督が深川可純さん、作画監督が桑原幹根さんと桑原剛さん、ダンスアニメーション監修が立中順平さん、動画検査が増子裕美さんと小原優佳さん、色彩設計・色指定・検査が佐々木梓さん、撮影監督が柳田貴志さん。
*6:宍戸幸次郎監督は3DCG畑出身だけど。こちらも内村瞳子さんが1人でキャラデ・作画監督・原画(第一原画)。動画検査が小林友衣さん、動画検査補佐が川嶋優香さん、色指定・検査が松岡美佳さん、撮影監督が寺尾優一さん。