『リコリス・リコイル』第1話「Easy does it」
作品について
オリジナルアニメ。
アニメーターの足立慎吾さんが監督。初監督。
丸山裕介さんが副監督。ゲーム『星と翼のパラドクス』PVの監督。中村亮介監督、柴山智隆助監督『灰と幻想のグリムガル』の監督助手。米田和弘監督『暁のヨナ』の演出など。
ライトノベル作家のアサウラさんがストーリー原案。『メルヘン・メドヘン』では金月龍之介さんと共同脚本、『revisions リヴィジョンズ』では深見真さんや茗荷屋甚六(木村航)さん、そしておそらくアニメ制作スタッフチーム「S.D.S.」との共同脚本。『Phantom in the Twilight』では単独脚本の経験がある。
漫画家・イラストレーターのいみぎむるさんがキャラクターデザイン。キャラクター原案ではない。
A-1 Picturesが制作。
感想
よくあるストーリーと設定。今後おもしろくなるかどうかは未知数。なにせアニメーターが初めて監督し、初めて脚本を書くくらいだから。ライトノベル作家によるストーリー原案があるとはいえ。
足立慎吾さんは『GUNSLINGER GIRL』や真下耕一監督作品の二番煎じにはならないようにしたと述べている。
「治安がいい日本」。監視社会・管理社会のディストピアを、表面上の平和に仕立てて取り繕っている。足立慎吾さんも「監視社会に対するアイロニーもあるかな?」と自覚的。
フィリップ・K・ディックの短編小説及びスティーヴン・スピルバーグ監督・製作『マイノリティ・リポート』(2002)。
DAは秘密警察であり、孤児を集めて洗脳・訓練し、職務に従事させている。
警察よりは軍隊に近い。人命救助や被疑者の確保ではなく、事態の鎮圧、生死を問わない点が。
ただ、千束は人命優先、被疑者を生け捕りにする。DAの中では異端?
護衛対象の女性をわざと拉致させるたきな。目的のためなら他人を駒として利用する。サイコパス。
人質に取られた仲間ごと被疑者を殺傷するためにマシンガンを乱射していたし。結果的にエリカは無事だったけれど。パートナーのフキに殴られ、左遷されたのもむべなるかな。
千束から人間性を学べと、DA司令官の温情人事異動。たきなが千束の影響を受けて柔和になるというベタな展開かな。
敵は内部にいる。
足立慎吾さんの演出経験は、『ロックマンエグゼBEAST+』第16話の絵コンテ、『流星のロックマン トライブ』オープニングアニメーションの絵コンテ・演出、『今日の5の2』オープニングアニメーションの絵コンテ、『フラクタル』第4話の絵コンテ・演出、『ソードアート・オンラインII』オープニングアニメーションの絵コンテ・演出、『ピングー in ザ・シティ』第14話の絵コンテ・演出、『ソードアート・オンライン アリシゼーション』オープニングアニメーションの絵コンテ・演出。
演出経験が少ない足立慎吾さんに監督を任せたのは、A-1 Pictures 社長の柏田真一郎さんの差し金。
A-1 Pictures / CloverWorks は、演出経験が乏しいアニメーターにいきなり監督させる傾向がある。他の制作会社でもあるが、アニプレックス子会社は特にその傾向が強い。演出軽視。演出と作画は違う。優れたアニメーターが優れた演出家とは限らないし、優れた演出家が優れた監督とは限らない。優れたアニメーターが優れた監督になるとは限らない。プロデューサーの考え方に疑問。作画がいいだけではいい作品にはならない。
絵コンテの絵が整っていると、いい演出だと勘違いしやすい。だから実際にアニメが完成して、思っていたのと違う、となることがよくある。
そして足立慎吾さんがシリーズ構成を考え、脚本まで書いている。製作委員会で脚本をチェックするので、脚本を書かずに直接絵コンテを切ることは少ない。特に原作ものなら、原作者チェックもある。
脚本協力が1人、文芸協力が2人。A-1 Pictures / CloverWorks 作品でしか脚本を書いていないから、アニプレックス スクリプトルームの人たちかな?*1 アニプレックスは業務委託契約で募集していた。
足立慎吾さんが、漫画家・イラストレーターのいみぎむるさんにキャラクター原案ではなく、キャラクターデザイン(アニメ制作用の設定資料作成)を任せた。いみぎむるさんは「原案ではダメでしょうか?」と2回くらい尋ねたそうだ。
アニメのキャラクターデザインは作画に必要な設定画を描く。演出に応じて360度どの角度からでも描く可能性があるので、破綻がない設定をデザインする必要がある。関わる数百人のアニメーターが描きやすいキャラクターをデザインする必要がある。だからイラストレーターや漫画家には原案のみ描いてもらい、それをアニメーターがデザインし直すのが一般的。
でも彼はアニメーターじゃないから総作監はできない。総作監人事が未定だったあの頃では、いみぎさんの雰囲気をフィルムに焼き付ける自信は無かったです。
2ページ目:夏アニメ『リコリス・リコイル』足立慎吾監督が語る、アニメを作り上げるうえでのこだわり【連載 第3回】 | アニメイトタイムズ
足立慎吾さん自身は総作画監督を務めないので、他人に仕事を丸投げ。総作画監督の4人と作画監督たちが尻拭い。
足立慎吾さんの謙遜が入っているだろうけれど、足立慎吾さんは実質「総監督」で、丸山裕介さんが(制作現場の)実質「監督」とのこと。
絵やフィルムなど、映像に関しては、ほぼ副監督の丸山裕介くんに任せていたので、現場の監督は副監督の丸山くんと言っていいと思います。
僕はシナリオと絵コンテという足立にしかできない事に集中すべきだと思いましたし、現場は信頼できる人に任せるのが今回の制作ラインとスケジュールでは一番合理的だと考えました。本来ならレイアウト時に監督チェックをしたりするんでしょうけど、そこも飛ばして1秒でも長く制作進行と作画に時間を与える事がいみぎさんの絵を表現するのにも繋がるかなと。
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でもリソースのコントロールをして限られた時間の中での最高点を叩き出す方法を考えるのが監督の仕事で、任されたチームでどうすればいいのかを考えなければいけないのはスポーツでも同じでしょう?
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それに身の丈を超えたブチ上げた内容にしても現場が壊れるだけですし、スタッフを不幸にしますからね。それは脚本段階からそう考えていました。
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殊勝な心がけですこと。
丸山裕介さんはゲームPVの監督経験がある。
アニメーターがいきなり監督し、あまつさえ脚本を書こうとするから、様々な人におんぶにだっこ。
カフェを舞台にした日常もののように途中まで宣伝していたのは、ガンアクションに興味がない人にも見てもらいたいから。ここまで隠すとは思わなかったとアサウラさんは語っている。
リドリー・スコット監督・製作『プロメテウス』(2012)が『エイリアン』(1979)の前日譚である事実を、20世紀フォックスが意図的に隠して宣伝していた。
アニメでも、まるで詐欺のように隠して宣伝していた作品がいくつもあった。
株式会社オルクス代表の萩原猛さんが企画協力として携わっている。
富士見書房やKADOKAWAで、ファンタジア文庫編集部 副編集長、富士見L文庫初代編集長、カドカワBOOKS初代編集長、「カクヨム」初代編集長を歴任した人。
今期は『リコリス・リコイル』だけでなく『Engage Kiss』にも携わっている。アニプレックス製作、A-1 Pictures制作、ライトノベル作家やイラストレーターのメインスタッフ起用を売りにしたオリジナルアニメという点が共通している。過去には同様の企画『戦翼のシグルドリーヴァ』にも参加。
だめそう。
アニプレックスの神宮司学さんは『戦翼のシグルドリーヴァ』のプロデューサーでもある。
『戦翼のシグルドリーヴァ』も、演出経験が少ないアニメーターに初監督させた。
アニメ制作には時間がかかる。原作ものでも企画から放送まで2年、オリジナルは企画から放送まで3年以上はかかると言われている。過去の失敗から学ぶ前に、この企画は既に始まっていたのかな。
演出
DAのシステムがハッキングされたシーンで、リスの絵が表示される。神山健治監督『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』のオマージュ。"I have you properly taped, my lad" は、ジェイムズ・ジョイスの短編小説集『ダブリン市民』に収録されている「恩寵」("Grace")からの引用。
"God!" he [Mr. Kernan] exclaimed, resuming his natural face, "I never saw such an eye in a man's head. It was as much as to say: I have you properly taped, my lad. He had an eye like a hawk."
Page:1917 Dubliners by James Joyce.djvu/221 - Wikisource, the free online library
ジェイムズ・ジョイス作品は言葉遊びで知られていて、翻訳が難題。『ユリシーズ』も『フィネガンズ・ウェイク』も、柳瀬尚紀さんが日本語訳を成し遂げた。おすすめ。
シークエンス内の、同ポジションによる場面転換。
尾行されていることを、そばに駐車されていた車のミラー越しに見せる。
エンディングアニメーションでは、ジョルジュ・メリエス監督・脚本『月世界旅行』(1902)の引用。ジュール・ヴェルヌ原作。古典SF映画。
アイキャッチは、たきなが千束に銃口を向け、千束はたきなにリコリスの花を捧げている。
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CD
Blu-ray Disc
キャスト
錦木千束:安済知佳
井ノ上たきな:若山詩音
中原ミズキ:小清水亜美
クルミ:久野美咲
ミカ:さかき孝輔
春川フキ:河瀬茉希
楠木:沢海陽子
第1話スタッフ
脚本:足立慎吾
脚本協力:長谷川崇
文芸協力:神林裕介、枦山大
絵コンテ:足立慎吾
演出:柴田裕介
制作進行:望月貴博
原画:
八角彩香 栗西祐輔 村谷貴志
晶貴孝二 沢田犬二 大貫巧
戸髙真希 佐藤ひかる 中村真那海
安岡幸恵 森田勝志 竹内由香里
橋元快斗 高橋沙江子 竹田茜
松本美雪 丹羽巧 森田莉奈
前田顕 小松沙奈 菊池和希
第二原画:
玉腰桃子 塩本彩璃紗 金炅垠
横山優衣 鈴木理彩 佐藤綾香
たかはし隆子 進藤麻耶 吉本哲也
亰須佑樹 林珈虹 杉浦ゆとり
三角れしき
動画検査:玉腰桃子
動画:
A-1 Pictures
玉腰桃子
スタジオディーン EOTA スタジオギムレット SILVER LINK.
チップチューン マカリア ライデンフィルム大阪スタジオ PaTHoS
ENGI 旭プロダクション スタジオグラム reboot
セブンシーズ
色指定・検査:北東真奈
仕上検査補佐:中原あゆみ
仕上:
A-1 Pictures
村上彩夏 河野祥子 大塚実梨 植田友佳
山澤美紗紀
CloverWorks
原恭子 枝川茜 五十嵐るみ 奥原薫
辻桃佳 岩渕里菜 鞠川未来
D-COLORS R.I.C ステラロード デファー バード
スタジオグラム セブンシーズ reboot
CGモデリング:
堀井慎也 佐納達也
田中雪乃 小野辺青葉
戸田和隆(幻影)
CGアニメーション:
A-1Pictures
野間裕介 佐々木進伍
Edit Polygone
高木則雄 佐藤美零
中川伸子
CG制作担当:堀口滋
背景:草薙(KUSANAGI)
美術設定協力補佐:岩佐禎 松澤猛
3Dモデル:柿木彩花 ヒデグレン・クリストファー・ラウス
3Dレイアウト:関谷薫
背景協力:
NAM HAI ART
THAO PHUONG THAI VU
NAM DUT NGUYEN THUY
MINH NGUYET NGOC ANH
LE MINH DOAN DUY
背景進行:平田浩章
背景進行補佐:NGOC THO CONG TRI
撮影:
A-1 Pictures
冨田結伊 黒岩悟
小寺竜輔 王希
新谷幸歩
旭プロダクション
中西康祐 藤田大暉
EOTA 撮影ユニット
小早川侑 木舩颯人
撮影監督補佐:田村有弓
モーショングラフィックス・2DWK:TOM
アイキャッチイラスト:浮き足
エンディングアニメーション
絵コンテ・演出:足立慎吾
原画:山本由美子
動画検査:三浦綾華
動画:
A-1 Pictures
冨田さおり 村松千鶴
杉浦ゆとり
A-1 Pictures福岡スタジオ
下司彩音
三浦綾華
OLM Asia
色指定・検査:佐々木梓
仕上:
A-1 Pictures
村上彩夏
ステラ・ロード
門松諭生 遠藤花歩
菊地慶翔 永井唯香
スタジオ・ロード バード
CG ワークス:
野間裕介
森岡俊宇
背景:
草薙(KUSANAGI)
岡本穂高
浅井唯奈
藤井星夏
撮影:TOM
制作進行:土屋祐夏
メインスタッフ
原作:Spider Lily
監督:足立慎吾
副監督:丸山裕介
ストーリー原案:アサウラ
シリーズ構成:足立慎吾
脚本協力:長谷川崇
文芸協力:神林裕介、枦山大
キャラクターデザイン:いみぎむる
サブキャラクターデザイン:山本由美子
衣装デザイン:鈴木豪、浮き足
総作画監督:山本由美子、鈴木豪、竹内由香里、晶貴孝二
プロップデザイン:朱原デーナ
銃器デザイン:寺岡賢司
銃器・アクション監修:沢田犬二
リコリス制服デザイン原案:尾内貴美香(ALCATROCK)
色彩設計:佐々木梓
美術監督:池田真依子
美術ボード:岡本穂高
美術設定:六七質
美術設定協力:綱頭瑛子
CGディレクター:森岡俊宇
撮影監督:青嶋俊明
編集:須藤瞳
音響監督:吉田光平
音響効果:上野励
音楽:睦月周平
音楽プロデューサー:山内真治
音楽ディレクター:安谷屋光生
音楽制作:アニプレックス
チーフプロデューサー:三宅将典
プロデューサー:神宮司学、吉田佳弘、大和田智之
制作統括:柏田真一郎、加藤淳
アニメーションプロデューサー:中柄裕二
制作デスク:佐々木雄
制作:A-1 Pictures
製作:アニプレックス、ABCアニメーション、BS11
企画:岩上敦宏、西出将之、田﨑勝也
企画協力:萩原猛(オルクス)、岡田武士、松﨑由美子、安井一成、佐藤茂薫、月岡佑紀
アソシエイトプロデューサー:深田有紀、東真央
アシスタントプロデューサー:正木美有
宣伝プロデューサー:高橋里美
フォーリーアーティスト:渡邊雅文
録音・調整:藤原淳平
録音助手:大東潤
音響制作担当:渡辺悠介、菊池みなみ
音響制作:HALF H・P STUDIO
オフライン編集:REAL-T
オンライン編集:ソニーPCL、舘遼太朗、鈴木萌
スタジオコーディネート:伊藤秀樹、竹村知己