映画の後には紅茶とお菓子を

百合とアニメと映画の感想

『竜とそばかすの姫』感想

『竜とそばかすの姫』
製作年:2021年
製作国:日本
公開日:2021年7月16日

 

 

作品について

細田守監督・脚本・原作。

スタジオ地図 企画・アニメーション制作・製作。

サイエンス・ファンタジー・アニメーション映画。

ryu-to-sobakasu-no-hime.jp

 

 

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感想

途中まではおもしろい。壮大なミュージックビデオの映画。音楽が『竜とそばかすの姫』の売り。

細田守監督は演出が抜群に上手い。いい物語を用意できれば鬼に金棒。

露悪的ではある。

フランスの民話をもとに編纂したジャンヌ=マリー・ルプランス・ド・ボーモン夫人の『美女と野獣』(1756)を下敷きにしている。また、ゲーリー・トゥルースデイル監督、カーク・ワイズ監督、リンダ・ウールヴァートン脚本、ドン・ハーン製作、ウォルト・ディズニー・フィーチャー・アニメーション制作・製作『美女と野獣』(1991)からもインスピレーションを得ている。

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ジャスティンはガストンだね。

デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』(2000)、『サマーウォーズ』(2009)に続き原点回帰とも考えられる。

 

〈U〉の背景美術と撮影は、CGI-driven の実写映画やテレビシリーズとも、3DCGアニメーションとも異なる魅力がある。

スティーヴン・スピルバーグ監督・製作『レディ・プレイヤー1』(2018)ともまた違う。

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女性

ワシントン・ポストの『竜とそばかすの姫』評論は正しいが、その一方で主張がステレオタイプであり知識に偏りがあるとも言える。

The film's message of female empowerment has gained attention for flipping the script on anime, Japan's signature style of animated movies and graphic novels that often portrays girls and women as weak, vacuous and hyper-sexualized.

www.washingtonpost.com

細田守監督の過去作品には女性の描写に問題があるのだが、それに言及しないのは公平ではないね。何故か英語圏の映画評論家から、細田守監督作品はずっと絶賛されているけれど。

 

アメリカのアニメーション業界は現在もなお男性社会。少しずつ女性スタッフが活躍できるようになってきた。

アメリカの長編アニメーション映画の最初の女性監督は、『プリンス・オブ・エジプト』(1998)のブレンダ・チャップマン監督。新興アニメーションスタジオだったドリームワークス・アニメーションの作品。スティーヴン・スピルバーグ監督*1と、上司マイケル・アイズナーの不義理でウォルト・ディズニー・スタジオの会長職から追い出されたジェフリー・カッツェンバーグらが設立したアニメーションスタジオという皮肉。

ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオは、クリス・バック監督、ジェニファー・リー監督『アナと雪の女王』(2013)でようやく女性監督が誕生した。しかも、もともとクリス・バック監督の単独監督だったが、ジェニファー・リーが脚本執筆だけでなく幅広く関与したので、監督に昇格したという経緯がある。1923年の設立から90年後のことである。

ピクサー・アニメーション・スタジオは、『メリダとおそろしの森』(2012)でジョン・ラセターがブレンダ・チャップマン監督を一方的に解雇してマーク・アンドリュース監督に後を継がせた。ピクサーから女性監督が誕生したと言えるまでには、ドミー・シー監督『私ときどきレッサーパンダ』(2022)まで待たなければならなかった。

 

日本のアニメ業界が優れているとは必ずしも言えないけれど、2014年時点で確認できただけでも女性監督が大勢いる。

togetter.com

日本のアニメ業界は実力主義なので、能力がある人なら性別に関係なく昇進する。

アニメーターの半分は女性(半分以上かも?)。原画や動画のクレジットを見れば、女性が多いことを理解できるだろう。動画が正しく描かれているかをチェックする動画検査も女性が多い。アニメの作画監督総作画監督も女性が大きく担っている。キャラクターデザインも女性が多い。

彩色はほぼ女性のセクションと言われている。色彩設計、色指定、仕上げ検査も大抵の作品は女性が担当している。

背景美術はまだ男性中心だと思う。でも女性の美術監督も何人もいる。

撮影は半々くらい? 女性の撮影監督はまだ少ないかな。

制作進行は長らく男性中心だった。セル画の時代は、セル画が数十枚入った重たいカット袋や箱を抱えて移動しなければならなかったそうだ。その影響で、制作進行は力仕事の職務であり女性は少なかったようだ。現在のデジタル制作では、女性が半々くらいいるかもしれない。制作進行から昇進して制作デスク、そしてプロデューサーになる女性も増えている。

(各話を担当する)演出家も女性が結構いる。監督経験者も結構いる。

 

 

細田守監督

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リコリス・リコイル

絵しか描いたことがないアニメーターの足立慎吾さんが、初監督作品なのに初シリーズ構成・初脚本を書いた『リコリス・リコイル』というおバカアニメを知ってしまったので、これからは細田守監督にやさしくなれると思う。まあ細田守監督と比べるのもおこがましいのだけれど。

細田守監督作品は酷いところがあるけれど、それでも彼は物語を書いている。細田守監督は物語を書くとはどういうことか理解している。細田守監督には書きたいことがある。

足立慎吾さんは描きたいイメージやシーンをたくさん並べただけで、物語を作っていない。足立慎吾さんには書きたいテーマがないので、様々な要素を入れたのにどれも中途半端。主人公2人の物語すら書けていない。制約の中で取捨選択したと言っているが、その取捨選択を大きく間違えている。

もともとクエンティン・タランティーノ監督『パルプ・フィクション』(1994)を観て、映画は「ストーリーはどうでもいい」と公言する人だから。

わざわざ殺し屋だという説明もしないし、どういう性格なのか、ふたりの関係性がどうなのか、そういうことが連続する会話のなかから滲み出してくる。とても自然で説明的でもない、耳を傾けたくなる会話ですよね。

ストーリーやキャラクターの関係性を伝えるために、ここでこのセリフを喋らせておかなければいけない等と考えてしまいがちだと思うんですけども。この映画観てるとそういうストーリーを駆動させるためのセリフは不要なのかもって思っちゃう。

もっと言うなら、映画におけるストーリーって、実はどうでもいいのかなという風にも感じたり…。

【TV Bros. WEB】 『パルプ・フィクション』足立慎吾 第3回【連載 アニメ人、オレの映画3本】

あらゆる創作者への侮辱だと理解していないので、こんな発言をする。案の定「ストーリーはどうでもいい」テレビアニメが出来上がった。

films.hatenablog.com

「DA*2がしていることの是非は視聴者に考えてもらいたい」「監視社会に対するアイロニーもあるかな?」と放送開始前にインタビューで大言壮語していたが、批判が高まるにつれ、主人公2人だけを見てほしいと繰り返すようになった

インタビュアーからストーリーや設定を掘り下げる質問をされると、「まあまあ、そんな難しいことは考えないでほしい(笑)。」と逃げた。自分で考え、監督し、シリーズ構成プランを作り脚本を書いたのに、主人公の本質がわからないと言っていた。これが『リコリス・リコイル』であり足立慎吾さんである。

films.hatenablog.com

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製作

CGキャラクターデザインの Jin Kim さんは韓国出身のアニメーター。1995年から2016年までウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオにて、『塔の上のラプンツェル』(2010)の Character Designer、『アナと雪の女王』(2013)の Visual Development Artist、『アナと雪の女王2』(2019)の Character Designer、『モアナと伝説の海』(2016)の Visual Development Artist などを務めた。

www.imdb.com

プロダクションデザインの Eric Wong さんはイギリスの建築家・イラストレーター。

www.ericwong.co.uk

cargocollective.com

www.instagram.com

 

 

著作権

著作権表記の「スタジオ地図」は、アニメ制作会社スタジオ地図(株式会社地図)のことではなく、スタジオ地図有限責任事業組合(LLP)のことらしい。製作委員会の弱点である権利分散や収益配分の煩雑さを避け、迅速な決断の実現のために取っている資金調達手法。

anime.eiga.com

 

 

キャスト

すず / 内藤鈴 / ベル (Belle):中村佳穂
しのぶくん / 久武忍:成田凌
カミシン / 千頭慎次郎:染谷将太
ルカちゃん / 渡辺瑠果:玉城ティナ
ヒロちゃん / 別役弘香:幾田りら
すずの父:役所広司
恵(けい) / 竜:佐藤健

合唱隊
吉谷さん:森山良子
喜多さん:清水ミチコ
奥本さん:坂本冬美
中井さん:岩崎良美
畑中さん:中尾幸世

〈U〉の世界
ジャスティン:森川智之
ペギースー:ermhoi
アナウンサー(冒頭):水卜麻美
アナウンサー(コンサート):桝太一

その他の人物
ひとかわむい太郎 & ぐっとこらえ丸:宮野真守
すずの母:島本須美
恵・知の父:石黒賢
知(とも) / 天使:HANA
イェリネク:津田健次郎
スワン:小山茉美

 

 

スタッフ

監督:細田守
脚本:細田守
原作:細田守
現実世界キャラクターデザイン・作画監督青山浩行
〈U〉作画監督・CG作画監督山下高明
竜デザイン:秋屋蜻一
CGキャラクターデザイン:Jin Kim、秋屋蜻一、岡崎能士、ippatu、岡崎みな、イケガミヨリユキ、Emmanuel Edeko
動画検査:坂詰かよ、秋山訓子、寺田久美子、玉木雅代、長命幸佳、大島明子
色彩設計:三笠修
色彩設計補佐・色指定・検査:駒田法子(チーフ)、忽那亜実、岡田絵美子
美術監督:池信孝
美術監督補佐:大久保錦一
プロダクションデザイン:上條安里、Eric Wong
コンセプトアート:上国科勇、Tomm Moore、Ross Stewart、Allice Dieudonné、Almu Redondo、Maria Pareja
衣装:伊賀大介、森永邦彦、篠崎恵美
撮影監督:李周美、上遠野学、町田啓
CGディレクター:堀部亮、下澤洋平
編集:西山茂
リレコーディングミキサー:佐藤忠治
スーパーヴァイジングサウンドエディター:勝俣まさとし
ミュージックスーパーヴァイザー:千陽崇之
音楽監督岩崎太整
音楽:岩崎太整、Ludvig Forssell、坂東祐大、挾間美帆
キャスティングディレクター:増田悟司、今西栄介
助監督:守泰佑
演出助手:仲野良
演助補佐:岡田彩
予告編演出/OPタイトル:隅田結子
製作:伊藤響、田中伸明、菊池剛、齋藤佑佳
プロデューサー:齋藤優一郎、川村元気、高橋望、谷生俊美
制作プロデューサー:石黒裕之
制作チーフ:友近雅美
企画・アニメーション制作:スタジオ地図
製作幹事:スタジオ地図有限責任事業組合(LLP)、日本テレビ放送網
共同事業体:日本テレビ放送網NTTドコモKADOKAWAスタジオ地図ブックウォーカー、ムービーウォーカー、角川メディアハウス
プロモーションパートナーズ:読売テレビ放送電通博報堂DYメディアパートナーズジェイアール東日本企画、ローソンエンタテインメント、読売新聞社ムービック札幌テレビ放送宮城テレビ放送静岡第一テレビ中京テレビ放送広島テレビ放送、福岡放送、青森放送、テレビ岩手、秋田放送、山形放送、福島中央テレビテレビ新潟放送網、テレビ信州、山梨放送北日本放送テレビ金沢福井放送日本海テレビジョン放送山口放送四国放送西日本放送南海放送高知放送長崎国際テレビ熊本県民テレビ、テレビ大分テレビ宮崎、鹿児島讀賣テレビ
配給:東宝

 

主題歌
『U』
作詞・作曲:常田大希
歌唱:Belle(中村佳穂)
millennium parade & Belle

*1:スティーヴン・スピルバーグ監督は長い映画監督・映画プロデューサー人生の中で多くの人を育ててきた。その中には映画プロデューサーのキャスリーン・ケネディとクリスティ・マコスコ・クリーガーがいる。

*2:筆者注:何千年も前から日本にある、政府の秘密暗殺組織。孤児で無戸籍児の女子高校生だけで構成された暗殺部隊「リコリス」が下部組織としてある。司法手続きを取らず、犯罪未遂の被疑者を問答無用で射殺している。そのため国民は日本が「平和」だと思っている。