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『リコリス・リコイル』足立慎吾監督の言い訳


ゲスト:足立慎吾監督【リコリス・リコイル】「ANIPLEX presents ANIMEコンシェルジュ」#33


ゲスト:足立慎吾監督【リコリス・リコイル】「ANIPLEX presents ANIMEコンシェルジュ」#34

 

 

監督

足立慎吾さんは監督やりたいと思ったことはなかった。プロデューサーなど周りの人たちに「○○はこうすればいいのでは?」など、夢を語っていた。すると、足立慎吾さんが監督をやりたがっていると思われたのか、A-1 Pictures 社長の柏田真一郎さんに誘われた。

 

仕事

足立慎吾さんは「お話を考えて、それをどうおもしろいものにするか」が自分の仕事だと思い込んだ。初監督なのに、シリーズ構成・脚本という今までにやったことがない新しい仕事をやろうとした。

自分の能力を過信していたのか、私が話を考えるんだと最初から意気込み、シリーズ構成・脚本をやった。インタビューでも、他人にはそう思われてないけれど、自分には監督・シリーズ構成・脚本の才能がある、と言いたげでしたね。

足立慎吾さんは「おだてに弱い」という自己評価を持つ。

 

シリーズ構成プラン

千束とたきなが一緒に仕事ができるようになるまでを第3話までで描く、というシリーズ構成プラン。どういうシーンで作ればそれを実現できるのか本当に難しかった、と。

足立慎吾さんは見せたいシーンしか考えておらず、そこに至るまでの過程をろくに考えていないから、『リコリス・リコイル』はストーリーテリングが雑。

 

リアリティ

街中でバンバン銃を撃っていたら住人が気づく。『シティーハンター』では作中で問題にならない。だからリアルなことはあまり考えないようにしたそうだ。

シティーハンター』は読者・視聴者が創作の嘘に邪魔されないように気を配って作られている。一方『リコリス・リコイル』は足立慎吾さんが作った設定のせいで現実世界に近い世界観となり、現実世界との齟齬が目立っている。作中のリアリティレベルが描きたいシーンと合っていない。設定構築の失敗。

足立慎吾さんやアサウラさんのインタビューを読むと、『リコリス・リコイル』はアサウラさんが考えたプロットや設定はあまり使われず足立慎吾さんが監督兼シリーズ構成として大部分のプロットや設定を決めたようだ。

 

千束の能力

遮蔽物を使った銃撃戦はアニメで映えないし、銃の所作でリアルに描くとプロっぽく見えるかもしれないが作画カロリーが高い。すると接近戦しかない。

千束は不殺キャラクターに決まったので、必然的に非殺傷弾を使う。非殺傷弾は命中率が極めて低いと設定したので、近づいて撃つ。

主人公だから何かすごい能力が必要だ。どんな能力にするかをアサウラさんにも聞き、脚本会議で話し合ったが決まらなかった。時間もなかった。だから、弾を避けられるようにしようと、足立慎吾さんが独断で決めた。

アニメ制作における制限があるから、身の丈に合ったシーンを考えたと足立慎吾さんは発言した。ディストピア設定や国家の話は、足立慎吾さんの身の丈に合っていない。

 

足立慎吾さんはこのラジオ番組で、「シーン」についてしか言わない。「プロット」「ストーリー」「シリーズ構成」「脚本」については言及しない。

 

自信がない

アニメ制作者はどの作品もおもしろいと思って作っている。ただ、それがどう受け止められるか、足立慎吾さんは自信がない。後学のためにどこがよかったのか聞きたいらしい。

初監督なのに、初シリーズ構成・初脚本もやろうとしたのがそもそものもの間違い。根本的な失敗。商業的には大成功しても、足立慎吾さんとアニプレックスプロデューサーと A-1 Pictures プロデューサーの失敗。

 

Twitter

視聴者の邪魔をしたくないから作品について Twitter には書かないと言うくせに、インタビュー記事では余計なことを言うし、ラジオ番組に出演して語る。矛盾している。

 

宣伝

足立慎吾さんの指示で、キービジュアル第1弾第2弾は意図的に喫茶店が舞台の日常ものを装い、ガンアクションであることを隠した。

 

初体験

足立慎吾さんは監督をやって初めて、企画段階からアニメに携わり、アニプレックス本社に足を踏み入れた。本読み(脚本会議)はアニプレックスの会議室で行われていた。足立慎吾さんはアニメーターなので、普段は「制作」会社でしか仕事をしない。「製作」会社には制作プロデューサーなど一部のスタッフしか行く機会がない。

各話演出家も、アニメーターも、本読みに参加することはない。監督になって初めて、本読みに参加する。だから足立慎吾さんは本読みの存在意義も、脚本の重要性も、それまで理解していなかったのだろう。本読みで脚本を参加者皆で読み、意見を言い合い、脚本家がその結果を持ち帰って第2稿を書き、また本読みの議題にかけ、第3稿第4稿第5稿とひたすら書き直し、本読みでOKが出てようやく決定稿になる。そのプロセスが作品作りにとってどれだけ大切なことなのか、足立慎吾さんは理解していなかったはずだ。だから絵しか描いたことがないのに、初監督作品でシリーズ構成・脚本をやると厚顔無恥な選択ができたのだろう。

だから、同じく絵しか描けないアニメーター仲間の鹿間貴裕さんにも脚本を書かせたのだろう。

シリーズ構成は一般的に経験豊富な脚本家が務める。新人脚本家が参加した場合、シリーズ構成担当者が新人をサポートし、上がって来た脚本を使い物になるまで底上げする。

足立慎吾さんは素人なので、鹿間貴裕さんの素人脚本を直せずそのまま世に出した。

映画業界には「いい脚本からだめな映画が出来上がることはあるが、だめな脚本からいい映画ができることはない」という格言がある。

 

予算

一般論として、アニメの予算は、監督、シリーズ構成、キャラクターデザインの3つの最重要要素の影響がある。オリジナルアニメはそれが顕著だ。実績のある人、実力のある人、有名な人ほど、製作委員会が作品にかけられる予算が上がりやすい。

この考え方で言うと、『リコリス・リコイル』の座組みは無名のスタッフたちを起用したプロジェクトと大して違いはない。でもアニプレックスは「あの『ソードアート・オンライン』の足立慎吾さんが監督デビュー!」と華々しく送り出したかっただろうからゴリ押し。

  • 監督:足立慎吾 (アニメーターとしての実績はあるが、演出経験は少ないうえに初監督)
  • シリーズ構成:足立慎吾 (アニメーターとしての実績はあるが、脚本を書いたことすらない素人が初シリーズ構成)
  • キャラクターデザイン:いみぎむる (イラストレーター・漫画家としての実績はあるが、アニメの原画や動画を描いたことがない素人が初キャラクターデザイン)

スタッフのネームバリューが低ければ、「違う監督にしろ」「違う脚本家をシリーズ構成にしろ」などとプロデューサーや製作委員会出資企業から指示が出ると思う、と足立慎吾さんはちゃんと理解していた。つまり、足立慎吾さんは自分にネームバリューがあると自負しているし、プロデューサーや製作委員会出資企業も素人集団による座組みに何も反対しなかった、ということになる。

 

キャラクターデザイン

足立慎吾監督のゴリ押しで、いみぎむるさんにキャラクター原案ではなくキャラクターデザインをやらせた。アニメ用キャラクターデザインは、どの角度からでも破綻がないデザインを起こす必要があり、アニメーター経験がない人には難しい。また1つのアニメは原画・動画含めて数百人規模のアニメーターが描くので、誰でも描きやすいように線を整理する必要がある。だからイラストレーターや漫画家にオリジナルアニメのキャラクターデザインを頼むときは「キャラクター原案」扱いで、それを経験豊富なアニメーターがデザインし直す。

いみぎむるさんの絵は素敵だけど、いみぎむるさんはアニメのキャラクターデザインには向いていない。版権絵を見ると、自分でデザインしたキャラクターを安定して描けていない。これがアニメーターとそれ以外の絵描きさんの違いでもある。

アニメーターは、設定画の通りに描く仕事。原画は、絵コンテや設定画を読み込み、演出意図を理解したうえで、レイアウトや原画を描く。動画は、原画やタイムシート(本来は絵コンテも)を読み込み、演出意図を理解したうえで原画の清書と中割りを描く。

今回、足立慎吾監督は脚本と演出に集中するため、作画には一切関わっていない。副監督の丸山裕介さんと、総作画監督たち、作画監督たちに丸投げ。素人によるキャラクターデザインのゴリ押しの尻拭いをさせた。

 

本音

足立慎吾さんのありがたいお言葉。

「さっきのあらすじとか聞いてるとめちゃくちゃ物騒な話で社会派みたいに見えるかもしれないですけど、いやそんな全然わかんなくても、千束とたきなだけの感情で見てもらえれば大丈夫なように作ってあるつもりなんで、まああの細かいことは考えずに千束とたきなだけ追ってもらえれば、ま、彼女たちの[に]まつわる物語っていうものに触れられるんじゃないかなと思います。彼女たちを好きになってもらえると、それだけで嬉しいです。」

足立慎吾さんの自己満足のせいで、千束とたきなの物語すら散り散りになってしまっているのですが。

足立慎吾さんの自己満足のせいで、ノイズだらけなのですが。

 

社会風刺

「DAがしていることの是非は視聴者に考えてもらいたい」「監視社会に対するアイロニーもあるかな?」とインタビューで語ってらっしゃいましたね

社会風刺はとても繊細な扱いが必要で、頭のいい作者が慎重に見極めながら仕込まないと、笑えない、おもしろくないものになるのですが。しかも社会情勢や観客の心理状態などにも左右される、創作において危険な劇薬なのですが。

世界中のコメディに影響を与えたと言われる、イギリスのモンティ・パイソンをご存知ですか?

 

 

絵コンテ

足立慎吾さんは iPad のアプリ e-Conte Board で絵コンテを切っている。

 

 

 

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