『スーパーカブ』第7話「夏空の色、水色の少女」
作品について
五十川久史さんが絵コンテ・演出。
『7SEEDS』第1期で演出デビュー、第2期で絵コンテ・演出。
『スーパーカブ』第1話の原画、第2話の原画、第6話の共同作画監督の1人。クレジットの仕方から、第6話の共同作監はヘルプっぽいけれど。
感想
礼子の髪からイチョウの葉を取る小熊。「これで勘弁してあげる」
礼子に対して、強気な言動をとれるようになった小熊。打ち解けた証。
小熊が礼子のマニアックな話を聞き流すので、「小熊さん、小熊さーん」と呼びかける礼子。
原付なんかにエスプレッソマシンは運べない、というクラスメイトの言葉に反応して立ち止まった小熊。
椎たちと付き合いがないので、「私たちが運ぶよ」と言わずに話を進める小熊。礼子もフォローしない。だから椎は戸惑う。
プランBの話はもっと早くしましょう。
夏休みのクーリエのバイトでは1人だったけど、今回は礼子と2人で甲府一高に。
国語教師と再会。
おじいちゃんのカブをもらって、「困らせてほしいのよ」。手のかかる子ほど愛おしい。国語教師の言葉を理解した礼子と、真意がつかめない小熊。
お礼を言った後の去り際に、転びそうになって恥ずかしがる椎。
バール
バール(bar)。イタリア語でカフェ、コーヒーショップ。スペイン語だとバル。
Wikipediaイタリア語版によると、barは劇場やホテルやレストランの中にあり、バリスタが運営している。アルコールやノンアルコールの飲料、ソフトドリンク、ブリオッシュやクロワッサンやパイやチョコレートやアイスクリームなどのお菓子、サンドイッチやパニーノ(パニーニ)やハンバーガーやホットドッグやピッツァなどファストフードを出す。特にお酒を提供するお店のことをAmerican barと言うそうだ。
ケンブリッジ大学出版局の伊英辞典の定義。
bar
noun [ invariable ]
[ masculine ] /bar/(locale)
coffee shop , coffee bar , cafè
演出
ハンターカブで登校する礼子のほつれ毛を効果的に使っている。キャラデ・総作監の今西亨さんが語っていたように。ほつれ毛は藤井俊郎監督の要望でもあると。
小熊が上靴を取り出す姿を、下駄箱の中から写した構図。藤井俊郎監督の「カメラが置けない場所にはカメラを置かない」という演出方針だけど、この構図はいいのか。映画カメラは靴箱の中に置けないけれど、Blackmagic Pocket Cinema Camera、あるいはGoProやアクションカムは置けるかな。
流石に、クロースアップでミシンの手元を描くことは避けたようだ。絵コンテ段階で。手や布より、ミシン針の動きと糸を縫う動きを描くのは大変だから。2D手描き作画にしろ、3DCGにしろ。
カブの出前機が上手く整備できたので、色彩が鮮やかになる演出。彩度が上がる。
不安そうな椎をバックミラー越しに描く。つまり小熊が椎の様子を意図的に確認した。同様に、後ろを走る礼子を確認する。
コーヒーを入れているときの椎の笑み。やりたかったことが実現できた嬉しさ。
小熊と同じような表情芝居。小熊にとってのカブが、椎にとっての文化祭。
ガソリン代100円を自販機の下に落としたことにする、と礼子。椎がお礼にコーヒーを持ってきてくれたことの前振り。
省略
椎にエスプレッソマシンを届けた描写を省略して、文化祭当日の模擬店の描写を視聴者に見せる。描く必要のない時間を飛ばす脚本+絵コンテ・演出。
スティーヴン・スピルバーグ監督と編集技師のマイケル・カーンが『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』(2002)で行ったことと同じ。イアキ氏が書いているように、「予測」と「省略」がpacingに効果的。
夏空の色
以下の小熊のモノローグに合わせるために、椎が届けたカフェラテのマグは青色。
「思いがけず巻き込まれてしまった文化祭。てきぱきと作業をこなす、その華奢な少女が、さっきよりも少し大きく見える。淡くて儚い水色、それが彼女の印象だった。けど、それは間違いだったみたい。そう、あれは色味は薄くても日差しの激しい夏空の色だ」
椎の笑顔を見せる。「夏空の色だ」という言葉を、少し間をおいて言って、サブタイトルを表示する。
3DCG
小熊の出前用箱や礼子のリアカーなど、カブの3Dモデルを改造して使った。第7話のために。
Gymnopédies
エリック・サティ作曲『ジムノペディ』第1番「ゆっくりと苦しみをもって」。
題名の由来は、古代ギリシアの都市国家スパルタの祭典「ギュムノパイディア」(英語: Gymnopaedia; 古代ギリシア語: Γυμνοπαιδίαι)。
辻井伸行さんの演奏。
Nobuyuki Tsujii - Erik Satie: Gymnopedies
カティア・ブニアティシヴィリの演奏。
Khatia Buniatishvili - Erik Satie: Gymnopédie No.1
友人のクロード・ドビュッシーによる管弦楽版もある。ピアノ版の第1番が管弦楽版の第3番、ピアノ版の第3番が管弦楽版の第1番。
指揮:アラン・アルティノグリュ(Alain Altinoglu)、管弦楽:hr交響楽団(旧 フランクフルト放送交響楽団)。
Satie: Gymnopédies 1 & 3 (Orchesterfassung: Debussy) ∙ hr-Sinfonieorchester ∙ Alain Altinoglu
指揮:ジャン・レイサム=ケーニック(Jan Latham-Koenig)、管弦楽:フランダース交響楽団、ソプラノ:ナタリー・ゴーデフロイ(Nathalie Gaudefroy)。
Erik Satie - Gymnopédies No. 1 and 3 | Symfonieorkest Vlaanderen
アニメ「#スーパーカブ 」第7話のピアノ曲は調性をぶっ壊しにかかった変人、エリック・サティの「ジムノペディ」第1番「ゆっくりと苦しみをもって」でした。ドビュッシーが管弦楽に編曲したのもあります。
— TOMOHISA ISHIKAWA (TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND) (@ishikawa_limite) 2021年5月20日
オリジナルはZAQやん中心で構成されてます。私のは「時速20キロ」1曲。
次回もお楽しみに。 pic.twitter.com/Oh4KjHkZAr
余談
MK SEOULのグロス? 作監はMK SEOULのKIM YONG-SIKさん。原画はKIM YONG-SIKさんを含むMK SEOULのアニメーター4人が参加。二原動仕はMK SEOULとシード。動検もMK SEOUL。
キャスト
小熊:夜道雪
礼子:七瀬彩夏
恵庭椎:日岡なつみ
シノさん:魚建
椎の父:宮本崇弘
椎の母:筒井真理子
担任教師:原えりこ
家庭科教師:白須慶子
数学教師:下鶴直幸
国語教師:茅原実里
教頭先生:星祐樹
信用金庫課長:宮澤正
山小屋店主:石井康嗣
第7話スタッフ
脚本:根元歳三
絵コンテ・演出:五十川久史
作画監督:KIM YONG-SIK
MK SEOUL
KIM YONG-SIK、CHOI EUN-YOUNG、YOO YOUNG、KIM YOON SEONG
五十川久史、藤井俊郎
第二原画:MK SEOUL、シード
動画検査:MK SEOUL
色指定・仕上検査:飯島孝枝、土屋智
動画:MK SEOUL、シード
仕上:MK SEOUL、シード
メインスタッフ
原作:トネ・コーケン
イラスト:博
監督:藤井俊郎
助監督:相浦和也
シリーズ構成・脚本:根元歳三
キャラクターデザイン:今西亨
総作画監督:今西亨、齊藤佳子、井上英紀
プロップデザイン:芝田千紗、乙幡忠志、杉村友和
色彩設計:大西峰代
美術監督:須江信人
美術設定:多田周平、伊良波理沙
美術ボード:横山淳史
背景統括:内田勉
背景:草薙
CGIプロデューサー:大橋広明、服部豊和
CGIディレクター:檜垣賢一
3DCG制作:スタジオKAI
3DCG制作協力:タイプゼロ
2Dデザイン・特効効果:チップチューン
撮影監督:浅川茂輝
編集:齋藤朱里
音響監修:鶴岡陽太
音響監督:矢野さとし
音響効果:倉橋裕宗
フォーリー:渡邊雅文
音響制作:楽音舎
音楽:石川智久、ZAQ
音楽プロデューサー:竹山茂人
音楽制作アシスタント:新木美成
音楽制作:バンダイナムコアーツ
協力・監修:本田技研工業株式会社
企画:菊池剛、工藤大丈
企画協力:森井巧
企画プロデューサー:伊藤敦
共同製作:井上伸一郎、安藤晃義、武智恒雄、山崎明日香、篠崎文彦、櫻井優香、青柳昌行、石田耕大
アソシエイトプロデューサー:川本晃生、小澤文啓、山本哲也、礒谷徳知、尾形光広、鈴木めぐみ
アニメーション制作統括:金子文雄
制作プロデューサー:上間康弘
プロダクションマネージャー:篠笥和也
設定制作:稲吉衛
制作:スタジオKAI
製作:ベアモータース(KADOKAWA、ドコモ・アニメストア、クロックワークス、エー・ティー・エックス、角川メディアハウス、バンダイナムコアーツ、キャトルステラ)