映画の後には紅茶とお菓子を

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『Wの悲劇』(1984)の感想

Wの悲劇
製作年:1984
製作国:日本

 

 

作品について

夏樹静子さんの推理小説Wの悲劇』が原作としてクレジットされているけど、推理小説の映像化ではなく、推理小説を劇中劇として利用したオリジナル映画。

角川映画なので、そういう路線になってしまったのもやむなし。

 

こういう構成になったのは、澤井信一郎に監督の依頼する前に、ミステリーの謎解きの説明が映画的でないという理由で既に何人かの監督に断られていて、澤井は原作を劇中劇にして、劇団の研究生の青春映画にすることを条件に引き受けたため。

Wの悲劇 (映画) - Wikipedia

すでに何人もの映画監督に断られたため、素直な映画化を断念した経緯については理解できるけど。

 

澤井信一郎監督には、原作の『Wの悲劇』の和辻摩子を撮りたいのではなく、20歳の薬師丸ひろ子の人生を切り取りたいとの思いがあり、それには原作通りに映画化するよりも演劇志望の子が劇中劇で和辻摩子を演じるオリジナル脚本が相応しいと判断した。

Wの悲劇 (映画) - Wikipedia

もともと澤井信一郎監督はそのまま映像化する気はなかったと。

出演者ありきで、出演者に合わせて原作を改変する慣習は、現在でも邦画界、実写業界で続いている。
プロデューサーや、もっと上の製作委員会の出資企業、またメインキャストが所属する芸能事務所、さらには電通博報堂などの広告代理店が魑魅魍魎のごとく暗躍しているから。プロデューサーは芸能事務所や広告代理店にはいい顔して、現場に丸投げ。現場のスタッフは上の命令に右往左往。という印象がある。

 

麻雀放浪記』のシナリオを手伝ったことで縁のあった和田誠からの「謎解きミステリに名画はない」との言葉も後押しとなった。

Wの悲劇 (映画) - Wikipedia

極端な、そして偏見のある意見だね。
和田誠なら様々な映画を観ていただろうと思うけれど。

 

原作に比較的忠実なテレビドラマが何度も制作されているから、その点では良い。

この映画自体は良い映画。

 

 

感想

前に観た。おもしろい。

 

蜷川幸雄さんが舞台演出家役で。

 

音楽は久石譲さん。当時、映画音楽は宮崎駿監督『風の谷のナウシカ』(1984年、トップクラフト制作)の1作しか経験がなかった新人作曲家だった。
候補である作曲家5人のデモテープを聴いて久石譲さんに決めたと。久石譲さんのデモテープは『風の谷のナウシカ』の劇伴だったとか。
その後澤井信一郎監督は5作品で久石譲さんと仕事をしている。
間接的に、宮崎駿監督と『風の谷のナウシカ』のプロデューサーを務めた高畑勲監督のおかげということかな。

 

 

キャスト

三田静香(女中→和辻摩子):薬師丸ひろ子
森口昭夫:世良公則
羽鳥翔(和辻淑枝。摩子の母親で与兵衛の姪):三田佳子

五代淳(中里右京。和辻家の事件を捜査する警部):三田村邦彦
嶺田秀夫(和辻道彦。淑枝の二人目の夫で摩子の義理の父親):清水紘治
安恵千恵子(和辻みね。与兵衛の妻):南美江
城田公二(間崎鐘平。会長の主治医):西田健
小谷光枝(一条春生。摩子の家庭教師):香野百合子
佐島重吉(和辻与兵衛。和辻製薬会長。通称「おじい様」):日野道夫
木内嘉一(和辻繁。与兵衛の弟):草薙幸二郎
水原健(和辻卓夫):堀越大史
林年子(女中頭):野中マリ子

菊地かおり(和辻摩子→途中降板):高木美保
宮下君子:志方亜紀子
劇団の主催者:内田稔
安部幸雄:蜷川幸雄

堂原良造:仲谷昇
レポーター:梨元勝福岡翼須藤甚一郎、藤田恵子
将棋をさす老人:藤原釜足
その他:絵沢萌子、団巌、塚田聖見、寺杣昌紀、岸加奈子、日下由美 ほか

 

 

スタッフ

監督:澤井信一郎
脚本:荒井晴彦澤井信一郎
原作:夏樹静子
製作者:角川春樹
プロデューサー:黒澤満、伊藤亮爾、瀬戸恒雄
音楽:久石譲
撮影:仙元誠三
編集:西東清明
製作会社:角川春樹事務所
配給:東映

 

舞台監修:蜷川幸雄
舞台美術:妹尾河童
舞台監督:高田憲治、岡本義次、村井秀安、中村信一

美術:桑名忠之
録音:橋本文雄
照明:渡辺三雄
助監督:藤沢勇夫、鹿島勤、大津是
音響効果:小島良雄
記録:宮本衣子
制作進行:大塚泰之
現像:東映化学
製作協力:セントラル・アーツ

主題歌:薬師丸ひろ子「Woman "Wの悲劇"より」(作詞: 松本隆、作曲: 呉田軽穂(松任谷由実)、編曲: 松任谷正隆)