『ハリー・ポッターと秘密の部屋』
原題: Harry Potter and the Chamber of Secrets
製作年:2002年
製作国:イギリス、アメリカ合衆国
作品について
クリス・コロンバス監督・エグゼクティブプロデューサー。
デヴィッド・ヘイマン プロデューサー。
J.K.ローリングのベストセラー小説が原作。全7巻がある程度同じスタッフやほぼ同じキャストによって全8作の映画シリーズになった。
上映時間は『ハリー・ポッター』シリーズで最も長い161分(劇場公開版)。編集段階で final cut から削除したシーンを追加・再編集した extended version は174分。一部のBDパッケージに収録されている。『賢者の石』と『秘密の部屋』だけは extended version が存在する。アメリカでテレビ放送するときに、放送枠に合わせるためクリス・コロンバス監督に依頼して制作してもらったそうだ。
金曜ロードショー
日本テレビが金曜ロードショーで「4週連続ハリポタ&ファンタビ祭り」として放送。21:00-23:24。30分拡大。
Amazon Prime Video
感想
Wizard's Collection (Blu-ray Disc Box)を持っているけれど、テレビ放送を観た。何度観てもおもしろい。
ジョン・ウィリアムズさんの音楽はいつ聞いてもいい。
Harry Potter - The John Williams Soundtrack Collection (CD-Box)を持っている。
スチュアート・クレイグさんが率いる美術が素晴らしい。『ファンタスティック・ビースト』シリーズでもプロダクションデザインを担当している。
『ハリー・ポッター』シリーズは実在のイギリスの風景や歴史ある建造物をふんだんに撮影している。それがホグワーツ魔法魔術学校やホグワーツ城の歴史を醸し出している。
トリビア
マルフォイの「字が読めたのか?」はトム・フェルトンの即興らしい。"I didn't know you could read."
Albus Dumbledore
アルバス・ダンブルドア校長を演じたリチャード・ハリスは、『秘密の部屋』公開前に死去した。病を患いながらのお芝居だったそうだ。『秘密の部屋』でのダンブルドアが『賢者の石』よりやつれて見えるシーンがあるのはそのためだろう。
Kenneth Branagh
『秘密の部屋』で特筆すべきは、ギルデロイ・ロックハートを演じた Sir ケネス・ブラナー。シェイクスピア俳優。
ロックハートの候補として、1990年代以降のロマンティックコメディ映画*1で人気を博していたヒュー・グラントが挙がっていた*2。ヒュー・グラントもロックハート役に乗り気で出演を決めたけれど、他作品とのスケジュールの都合で諦めざるを得なかった。
結果的にケネス・ブラナーが観客にロックハートを強く印象付けた。
同様にオファーを受けて快諾したものの、他の映画のスケジュールと重なって辞退した俳優に、ティム・ロスがいる。彼もセブルス・スネイプをぜひ演じたいと希望していたのだ。アラン・リックマンがこの人しか考えられないというほどのスネイプ像を作り上げた。
製作
クリス・コロンバス監督は、『賢者の石』のポストプロダクションをしながら『秘密の部屋』のプリプロダクションをしなければならなかったとインタビューで語った。大変な時期だったと。*3
このような大作映画は撮影開始前の時点ですでに公開日が決まっている。すでに決まっている公開日までの短期間では満足できるクオリティの映画を制作できないという理由で、映画監督が仕事を降りるのはよくある。映画はプロデューサーのもの(より正確には製作会社と映画スタジオのもの)なので、議論して意見のすり合わせを試みても落としどころを見つけられない場合は監督が辞める。
『秘密の部屋』は前作より視覚効果を制作する時間を確保するため、クィディッチの試合シーンから撮影を始めた。『賢者の石』では、演技の経験がまったくない子どもたちが大勢出演するため、撮影するシーンの順番を考慮しなければならなかった。
「賢者の石」の公開3日後にスタートしていたという「#秘密の部屋」の撮影🎥。1作目に続いて🎬メガホンを取ったクリス・コロンバス監督は、1作ごとの「変化」や「成長」を見せることにこだわり撮影監督を変えるなどして「変化」を出したそうです。#ハリポタ #ハリーポッター #金曜ロードSHOW pic.twitter.com/DZAZ5ENuj7
— アンク@金曜ロードSHOW!公式 (@kinro_ntv) 2020年10月30日
クリス・コロンバス監督とロジャー・プラット撮影監督は、『秘密の部屋』で手持ちカメラ(hand-held camera)を多く使うようにした。*4
「変化」や「成長」については、全8話のドキュメンタリーシリーズ "Creating the World of Harry Potter" の第5話"Evolution"と第8話"Growing Up"で詳しく語られている。このドキュメンタリーシリーズは、24枚組のコンプリート 8-Film Boxに収録されている。この24枚組ボックスは、海外で発売されたHogwarts Collectionの日本盤に相当する。Hogwarts Collectionは、Wizard's Collectionの化粧箱やホグワーツ城周辺の地図やスチュアート・クレイグさんのスケッチなどの物理的な特典を除いた、BD&DVD31枚のセット。24枚組コンプリート 8-Film BoxはHogwarts Collectionに含まれていた全8作の本編DVDが省かれているものの、日本版独自の特典BDが付いている。また現在では、ドキュメンタリーシリーズは『ハリー・ポッター』シリーズのUltra HD Blu-rayにも収録されている。欲しいならUHD BD単巻を買うこと。どうやらUHD BD Boxには同梱されていないらしい。
音楽
ジョン・ウィリアムズは『賢者の石』に続き『秘密の部屋』の音楽も担当する予定だった。しかしスティーヴン・スピルバーグ監督『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』(2002)の音楽制作とスケジュールが重なってしまったため、ウィリアム・ロスが、ジョン・ウィリアムズがすでに書き終えた楽曲の編曲とレコーディングの指揮を担当した。
ロンドン交響楽団が演奏した。LSOは映画音楽の収録をよく担当していることでも有名。
録音はザ・ビートルズで知られる、アビー・ロード・スタジオ(Abbey Road Studios)で行われた。
著作権
『秘密の部屋』の著作権表記は MIRACLE Productions GmbH & Co. KG となっている。また『アズカバンの囚人』の著作権表記は P of A Productions Limited となっている。『ハリー・ポッター』シリーズの著作権表記がワーナー・ブラザースになっていないのはこの2作品だけ。けれど対外的には Warner Bros. Entertainment Inc. が著作権を含む知的財産を保有していることになっている。2社とも、それぞれ『秘密の部屋』『アズカバンの囚人』でしか製作会社としてクレジットされていない。つまり第2作と第3作だけ映画製作のための会社を設立して、契約や権利処理を一元化したということだろうか。P of A Productions Limited は "the Prisoner of Azkaban" の省略だろうし。
キャスト
ハリー・ポッター:ダニエル・ラドクリフ、小野賢章
ロン・ウィーズリー:ルパート・グリント、常盤祐貴
ハーマイオニー・グレンジャー:エマ・ワトソン、須藤祐実
アルバス・ダンブルドア:リチャード・ハリス、永井一郎
ミネルバ・マクゴナガル:マギー・スミス、谷育子
ルビウス・ハグリッド:ロビー・コルトレーン、斎藤志郎
ルビウス・ハグリッド(学生時):マーティン・ベイフィールド、斎藤志郎
セブルス・スネイプ:アラン・リックマン、土師孝也
ギルデロイ・ロックハート:ケネス・ブラナー、内田直哉
ドビー:トビー・ジョーンズ、高木渉
ドラコ・マルフォイ:トム・フェルトン、三枝享祐
ネビル・ロングボトム:マシュー・ルイス、上野容
ジニー・ウィーズリー:ボニー・ライト、山田千晴
ポモーナ・スプラウト:ミリアム・マーゴリーズ、山本与志恵
フィリウス・フリットウィック:ワーウィック・デイヴィス、田村錦人
アーガス・フィルチ:デイビッド・ブラッドリー、青野武
マダム・ポンフリー:ジェマ・ジョーンズ、麻生美代子
マダム・ピンス:サリー・モルトモア
バーノン・ダーズリー:リチャード・グリフィス、楠見尚己
ペチュニア・ダーズリー:フィオナ・ショウ、さとうあい
ダドリー・ダーズリー:ハリー・メリング、忍足航己
モリー・ウィーズリー:ジュリー・ウォルターズ、一龍斎貞友
アーサー・ウィーズリー:マーク・ウィリアムズ、梅津秀行
フレッド・ウィーズリー:ジェームズ・フェルプス、尾崎光洋
ジョージ・ウィーズリー:オリバー・フェルプス、尾崎光洋
オリバー・ウッド:ショーン・ビガースタッフ、川島得愛
ビンセント・クラッブ:ジェイミー・ウェイレット
グレゴリー・ゴイル:ジョシュア・ハードマン
シェーマス・フィネガン:デヴォン・マーレイ、渡辺悠
ディーン・トーマス:アルフレッド・イーノック、山本隆平
パーシー・ウィーズリー:クリス・ランキン、宮野真守
リー・ジョーダン:ルーク・ヤングブラッド、進藤一宏
ケイティ・ベル:エミリー・デイル
アンジェリーナ・ジョンソン:ダニエル・テイラー
ラベンダー・ブラウン:キャスリーン・コーリー
コリン・クリービー:ヒュー・ミッチェル、有馬優人
マーカス・フリント:ジェイミー・イェイツ、天田真人
ジャスティン・フィンチ=フレッチリー:エドワード・ランデル、海宝直人
スーザン・ボーンズ:エレノア・コロンバス
ペネロピー・クリアウォーター:ジェンマ・パドリー
アーニー・マクミラン:ルイス・ドイル
ハンナ・アボット:Charlotte Skeoch
ほとんど首無しニック:ジョン・クリーズ、たかお鷹
嘆きのマートル:シャーリー・ヘンダーソン、坂本千夏
コーネリウス・ファッジ:ロバート・ハーディ、篠原大作
グレンジャー氏:トム・ナイト
グレンジャー夫人:ヘザーブリーズデール
メーソン氏:ジム・ノートン
メーソン夫人:ヴェロニカ・クリフォード
キングス・クロス駅の駅員:ハリー・テイラー、石住昭彦
ボージン(未公開シーン):エド・チューダー=ポール
アーマンド・ディペット:アルフレッド・バーク
アラゴグ:ジュリアン・グローヴァー、益富信孝
組分け帽子:レスリー・フィリップス、石森達幸
ジェームズ・ポッター:エイドリアン・ローリンズ
リリー・ポッター:ジェラルディン・ソマーヴィル
ルシウス・マルフォイ:ジェイソン・アイザックス、諸角憲一
トム・マールヴォロ・リドル:クリスチャン・コールソン、石田彰
演出:木村絵理子
翻訳:岸田恵子
翻訳監修:松岡佑子
録音:高久孝雄、田中和成、金谷和美、池田裕貴
編集:オムニバス・ジャパン
録音:高久孝雄、田中和成、金谷和美、池田裕貴
プロデューサー:尾谷アイコ、小出春美
日本語版制作:ワーナー・ホーム・ビデオ、東北新社
スタッフ
監督:クリス・コロンバス
脚本:スティーブ・クローブス
原作:J・K・ローリング
製作:デヴィッド・ヘイマン
製作総指揮:マーク・ラドクリフ、マイケル・バーナサン、クリス・コロンバス、デヴィッド・バロン
音楽:ジョン・ウィリアムズ
音楽編曲・指揮:ウィリアム・ロス
撮影監督:ロジャー・プラット
編集:ピーター・ホーネス
製作会社:ワーナー・ブラザース・ピクチャーズ、ヘイデイ・フィルムズ、1492ピクチャーズ
配給:ワーナー・ブラザース映画
キャスティングディレクター:Karen Lindsay-Stewart
プロダクションデザイナー:スチュアート・クレイグ (Stuart Craig)
美術監督:Neil Lamont as supervising art director; Andrew Ackland-Snow, Mark Bartholomew, Peter Francis, John King, Steven Lawrence, Lucinda Thomson
セット装飾:ステファニー・マクミラン (Stephenie McMillan)
衣装デザイン:リンディ・ヘミング (Lindy Hemming)
特殊メイクアップデザイナー:ニック・ダドマン (Nick Dudman)
第二班監督:Peter MacDonald
Sound Designer & Supervisor: David Randall Thom
sound supervisor: Dennis Leonard
supervising sound editors: Dennis Leonard (uncredited), Randy Thom (uncredited)
re-recording mixers: Adam Daniel, Graham Daniel, Rick Kline, Ray Merrin
特殊効果スーパーバイザー:ジョン・リチャードソン (John Richardson)
クリーチャー効果:ニック・ダドマン (Nick Dudman)
視覚効果スーパーバイザー:ジム・ミッチェル (Jim Mitchel), ニック・デイヴィス (Nick Davis); Tim Burke for Mill Film, Bill George for ILM, Tom Wood for MPC, Benoit Girard for Digital Dimension (uncredited)
視覚効果プロデューサー:Fiona Chilton for Framestore CFC, Theresa Corrao, Rob Delicata for Mill Film, Martin Hobbs for MPC, Christian Kubsch, Nikki Penny for Mill Film, Sandra L. Scott for ILM
視覚効果エグゼクティブプロデューサー:Drew Jones for Framestore CFC (uncredited)
視覚効果制作:インダストリアル・ライト&マジック、ミル・フィルム、ムービング・ピクチャー・カンパニー、フレームストアCFC、コンピューター・フィルム・カンパニー、シネサイト、ジム・ヘンソン・クリーチャー・ショップ、リーダー・セレビック
アニメーションスーパーバイザー:David Andrews for ILM, Michael Eames for Framestore CFC, Ivor Middleton for Mill Film
CGスーパーバイザー:Sally Goldberg for Framestore CFC, Chas Jarrett for MPC
*1:後に『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』を監督したマイク・ニューウェル監督『フォー・ウェディング』(1994)、ロジャー・ミッシェル監督『ノッティングヒルの恋人』(1999)、シャロン・マグワイア監督『ブリジット・ジョーンズの日記』(2001)及び続編のビーバン・キドロン監督『ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12か月』(2004)、マーク・ローレンス監督『トゥー・ウィークス・ノーティス』(2002)、リチャード・カーティス監督『ラブ・アクチュアリー』(2003)など。
*2:Hugh Grant は以前クリス・コロンバス監督『9か月』(1995)で主人公を演じた。
*3:映画シリーズで監督が次々に交代する理由の1つがこれ。2作品を同時並行で動かすのは身体的にも精神的にもとてもきつい。
*4:撮影監督は監督の思い描いたビジョンを実際の映像に具現化する責任者。映画監督の右腕。だから映画賞の授賞式のスピーチなどで、監督は撮影監督に謝意を表明する。