BS1スペシャル『黒澤明の映画はこう作られた〜証言・秘蔵資料からよみがえる巨匠の制作現場〜』
番組について
NHK BS1
2020年11月8日(日) 19:00-20:50
出演:仲代達矢、山崎努、井川比佐志、山田洋次、黒澤久雄、小泉堯史、木村大作、池辺晋一郎、野上照代
語り:鶴見辰吾
感想
興味深い。黒澤明監督について、様々な関係者の証言で構成されている。
野上照代さんの証言によると、黒澤明監督にとって現場で撮影したフィルムはあくまで素材であり、編集で演出する、と。完璧主義や妥協を許さないなどpre-productionやproductionでの逸話は多いけれど、黒澤明監督が(post-productionである)映像編集をいかに重視していたかを推察できる話。
映画は誰のものか
『トラ・トラ・トラ!』(1970)に関して。1968年当時の日本映画界では映画は監督のものという考え方のはず。アメリカでは映画はプロデューサーのもの(あるいは製作会社やfilm studioのもの)。監督はプロデューサーに雇われたスタッフであり、creativityの最高責任者。でも製作・配給・興行を見据えたプロジェクト全体の最終決定権はプロデューサーにある。プロデューサーと監督の方針が違い、議論しても意見のすり合わせで落としどころが見つからなかった場合は、監督が降板する。だからハリウッドでは監督の交代が業界紙でよく報道される。
映画はプロデューサーのものだから、映画賞では作品賞を受け取るのはプロデューサー。優れた作品を世に送り出したことをたたえる。
もっとも、現在の日本映画界では製作委員会方式が一般的で、監督は製作委員会に雇われる。著作権法でも、「映画会社が映画監督を雇って制作させた場合は、著作権(財産権)は映画会社のもの。監督には著作者人格権がある」とされている。映画は監督のものという意識は薄れているだろう。
ヨーロッパではauteurという言葉があるし監督の位置づけもアメリカとは異なるようだ。それでも著作権は製作費を出資した会社のもの。特にフランス映画などは、著作権表記で出資した会社が何社も書かれている。
イギリスやアメリカでも、昔は、チャールズ・チャップリンやアルフレッド・ヒッチコックなど、監督の製作会社が著作権を保有していた、売却した、などの記録がある。