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『モーグリ: ジャングルの伝説』感想

モーグリ: ジャングルの伝説』
原題:"Mowgli: Legend of the Jungle"
製作年:2018年
製作国:イギリス、アメリカ合衆国
公開日:2018年11月25日(ムンバイ)、2018年11月29日(イギリス、アメリカ)

 

 

作品について

アンディ・サーキス監督。当代随一のパフォーマンスキャプチャー俳優。ピーター・ジャクソン監督『指輪物語』『ホビット』のゴラム、『キング・コング』(2005)のキング・コング、『猿の惑星』リブートシリーズのシーザー、スティーヴン・スピルバーグ監督『タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密』(2011)のハドック船長、ギャレス・エドワーズ監督『GODZILLA ゴジラ』(2014)のゴジラなど。

スティーヴ・クローヴス プロデューサー。『ハリー・ポッター』シリーズの脚本家、『ファンタスティック・ビースト』シリーズのプロデューサー。

デヴィッド・バロン プロデューサー。『ハリー・ポッター』シリーズのプロデューサー。

ジョナサン・カヴェンディッシュ プロデューサー。『ブリジット・ジョーンズの日記』シリーズのプロデューサー。アンディ・サーキス監督と製作会社The Imaginariumを経営している。

ラドヤード・キプリングの小説『ジャングル・ブック』が原作。

アドベンチャー・ドラマ映画。

 

Netflixが2018年12月7日に全世界で配信した。

www.netflix.com

 

同時期にジョン・ファヴロー監督・製作『ジャングル・ブック』(2016)が製作された。

films.hatenablog.com

このように同時期に製作・公開される似た題材の映画をtwin filmsと呼ぶ。

ジョン・ファヴロー監督は同じチームで続けて『ライオン・キング』(2019)を製作した。

films.hatenablog.com

 

 

感想

ジョン・ファヴロー監督版はフォトリアルな動物が喋っていたが、アンディ・サーキス監督版は動物が人間的な顔の造形や表情芝居でありカリカチュアされている。演じた俳優の顔がモデルかな。

ジョン・ファヴロー監督版はフォトリアルでもまだ可愛いと思えたが、アンディ・サーキス監督版はキャラクターデザインにかっこよさも可愛さもない。

アメリカのアニメーションは、物体の伸び縮み(squash and stretch)が動きの原則で、キャラクターの表情や身体の動きもこの原則に従っている。だからまるで百面相や顔芸のように、ころころと表情が変わる。アンディ・サーキス監督版もsquash and stretchに則っている。

風景は美しい。撮影と美術とVFX

 

ジョン・ファヴロー監督版はモーグリ以外ほぼ人間はいない。過去回想シーンの父親や、村で宴を楽しんでいる人間たちをロングショットで撮影したシーンはあったが。アンディ・サーキス監督版にはモーグリ以外にジョン・ロックウッドとメシュアが登場する。

モーグリが人間と一緒に暮らすことを選んだら、エドガー・ライス・バローズの小説『ターザン』と同じになってしまう。エドガー・ライス・バローズラドヤード・キップリングの『ジャングル・ブック』(1894)に影響を受け、『ターザン』(1912)を書いた。

実写映画は、サイレント映画時代のスコット・シドニー監督"Tarzan of the Apes"(1918)が初。

アニメーション映画は、ケヴィン・リマ監督、クリス・バック監督、ウォルト・ディズニー・フィーチャー・アニメーション制作・製作『ターザン』(1999)がある。

ジョン・ファヴロー監督版は、風、雨、雷、生き物の鳴き声など環境音が観客を包み込むように作られていた。アンディ・サーキス監督版はあまり感じない。両作品ともDolby Atmos用にミックスしているのだが。

 

野生の動物の周りに常に虫が飛んでいたり、自然界で負傷したときの描写だったり、動物の死体の描写だったり、リアルな描写を目指してはいる。

でもストーリーがとっ散らかっている。モーグリも、仲間の動物たちも、敵対する動物たちも、人間たちも、目的や心情に沿った言動になっていない。ラドヤード・キプリングの原作の精神に忠実な、暗いシリアスな作風を目指したのは評価できるが、実力が追いついていない。

映像はリアルだが、リアリティに欠ける作品。リアリティはキャラクターの言動、設定、世界観、ストーリー、演出などから形作られる説得力。

ジョン・ファヴロー監督版が高く評価され、アンディ・サーキス監督版はそうではなかった理由はこの辺りにある。

 

 

製作

開発段階で、何人もの脚本家、監督、プロデューサーがかかわり、交代した。

2012年4月ワーナー・ブラザース・ピクチャーズは、スティーヴ・クローヴスが監督・脚本・製作として開発していると発表した。

2013年12月、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥが監督すると発表された。スティーヴ・クローヴスの娘キャリー・クローヴスが脚本を執筆する。

2014年1月、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督は『バードマン』(2014)や『レヴェナント: 蘇えりし者』(2015)のスケジュールと重なったため降板した。

2014年2月、ロン・ハワード監督と長年のパートナーであるブライアン・グレイザーがそれぞれ監督・製作すると発表された。2人の製作会社イマジン・エンターテインメントが製作する。

2014年3月、アンディ・サーキスが監督し、製作会社The Imaginariumを一緒に経営するジョナサン・カヴェンディッシュがプロデューサーを務めると発表された。

2015年3月9日、主要撮影が開始された。南アフリカの都市ダーバンと、イングランドにあるワーナー・ブラザース・スタジオ・リーブスデンで撮影された。

 

 

公開

もともと"Jungle Book: Origins"という題名で、ワーナー・ブラザース・ピクチャーズが2016年10月に公開する予定だった。

2014年12月、VFX制作にもっと時間をかけるため2017年10月に延期された。

2016年4月、ウォルト・ディズニー・ピクチャーズの『ジャングル・ブック』(2016)が公開される直前、2018年10月19日に公開日が移動した。

2017年10月アンディ・サーキス監督は、仮題(working title)は"Mowgli: Tales from the Jungle Book"だと明かした。

2017年12月、正式な題名が"Mowgli"に変更された。アンディ・サーキス監督は、それまでの『ジャングル・ブック』の映像化より「暗く」、より「シリアス」な作風だと述べた。ラドヤード・キプリングの原作に沿っていると。

2018年7月、Netflixワーナー・ブラザース・ピクチャーズから世界配給権を購入したと発表された。2019年公開予定だと。

2018年11月7日、Netflixが"Mowgli: Legend of the Jungle"への題名変更と、2018年11月29日の劇場公開、2018年12月7日の配信を発表した。

 

 

キャスト

モーグリ - ローハン・チャンド(ラヴェルヌ知輝)
ジョン・ロックウッド - マシュー・リス(菊地達弘)
メシュア - フリーダ・ピント

動物
バギーラ - クリスチャン・ベール(宮内敦士)
バルー - アンディ・サーキス(石住昭彦)
シア・カーン - ベネディクト・カンバーバッチ(最上嗣生)
カー - ケイト・ブランシェット(水野ゆふ)
タバキー - トム・ホランダー(越後屋コースケ)
アキーラ - ピーター・マラン(石田圭祐)
ニーシャ - ナオミ・ハリス(佐々木優子)
ヴィハーン - エディ・マーサン(山本満太)
グレイ・ブラザー - ジャック・レイナー(奥村翔)
ブート - ルイス・アッシュボーン・サーキス(齋藤小浪)

 

演出:前田茜
翻訳:藤江さお里
録音・調整:スタジオ ユニ、首藤智愉
制作:(株)東北新社

 

 

スタッフ

監督:アンディ・サーキス
脚本:キャリー・クローヴス
原作:ラドヤード・キップリング
製作:スティーヴ・クローヴス、ジョナサン・カヴェンディッシュ、デヴィッド・バロン
製作総指揮:ニッキー・ペニー
撮影監督:マイケル・セレシン
プロダクションデザイン:ゲイリー・フリーマン
衣装デザイン:アレクサンドラ・バーン
編集:マーク・サンガー、アレックス・マルケス、ジェレマイア・オドリスコル
音楽:ニティン・ソーニー
視覚効果スーパーバイザー:Nigel Denton-Howes
アニメーションスーパーバイザー:Max Solomon
製作会社:ワーナー・ブラザース・ピクチャーズ、ジ・イマジナリウム
配給:Netflix

 

美術監督
Supervising Art Director: Jason Knox-Johnston
Art Directors: Matt Gray (as Matthew Gray), Andy Thomson, Tom Still, Steven Lawrence, Dan May, Sophie Bridgman, Nenazoma McNamee
Assistant Art Director: Alex Smith
セットデコレーション:Raffaella Giovannetti

Production Sound Mixer: Danny Hambrook
Sound Designers: Glenn Freemantle, Tom Sayers
Supervising Sound Editors: Glenn Freemantle, Tom Sayers
Re-Recording Mixers: Ian Tapp, Doug Cooper

Special Effects Supervisor: Ian Corbould
Special Effects Workshop Supervisor: Steve Cullane
Special Effects Coordinator: Alicia Davies

Visual Effects Supervisor: George Murphy
Visual Effects Producer: Rich Yeomans

Visual Effects by Framestore
Visual Effects Supervisor: Ivan Moran
Animation Supervisors: Kyle Dunlevy, Nathan McConnel
CG Supervisors: Andy Walker, Neil Weatherley, Sylvan Degrotte, John-Peter Li, Robert Allman, Harry Bardak
Visual Effects Producers: Annette Wullems, Imke Fehrmann, Coline Six, Danielle Morley, Lucinda Keeler
Compositing Supervisors: David Simpson, Dominique Fiore, Matthew Twyford

Visual Effects by Rodeo FX
Visual Effects Supervisor: François Dumoulin
Visual Effects Executive Producer: Sébastien Moreau
Visual Effects Producer: Wassila Lmouaci
CG Supervisor: Jean-Sebastien Guillemette
Animation Supervisor: Yvon Jardel
Compositing Supervisor: Renaud Madeline

Visual Effects by BlackGinger
Visual Effects Supervisor: Marco Raposo de Barbosa
Executive Producer: Marc Bloch
Visual Effects Producer: Tracy-Lee Portnoi

Visual Effects by Vitality VFX
Visual Effects Executive Producer: Guy Botham
Visual Effects Supervisor: Jiwoong Kim
Visual Effects Producer: Rebecca West

Previsualization by The Third Floor, Inc.

Visualization by Proof London

Cyber Scanning by Clear Angle Studios
Lidar Scanning by Motion Associates

3D Conversion by Prime Focus World
Stereo Supervisor: Barry O'Brien
Stereo Producer: Richard Edwards

Second Unit
Second Unit Director / Second Unit Director of Photography: Shaun O'Dell
Movement Choreographer / 2nd Unit Director Cold Lairs: Terry Notary
Production Sound Mixer: Mitch Low

South Africa Unit
South African Production Services by Moonlighting Films (Pty) Ltd.
South African Supervising Producer: Genevieve Hofmeyr
Art Director: Bobby Cardoso
Set Decorator: Anneke Botha
Special Effects Supervisor: Kevin Bitters

Main & End Titles by MOMOCO
End Crawl by FUGITIVE

 

In Memory of Peter Gleaves