『ジャングル・ブック』
原題: The Jungle Book
製作年:2016年
製作国:アメリカ合衆国
作品について
ジョン・ファヴロー監督・プロデューサー。
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感想
映画館に観に行ったし、Blu-ray Discも持っているけど、テレビ放送されたので観た。
去年同じジョン・ファヴロー監督の『ライオン・キング』が公開された時に、宣伝を兼ねてテレビ放送するかと思っていたらしなかった。放送する気がないのかと思っていたら、今になって放送。
フジテレビの土曜プレミアムで放送された。
何度観てもおもしろい。
動物たちが可愛い。もふもふしたい。
2頭のパパと男の子の子育て物語。
ジョン・ファヴロー監督はグレイがとても可愛かったので出番を増やしたそうだ。
BDに収録されているジョン・ファヴロー監督のオーディオコメンタリーが楽しい。冒頭からエンドクレジットまで監督がずっとしゃべりっぱなし。監督が楽しんで話していることが感じられる。制作の舞台裏が興味深い。
原作はラドヤード・キプリングの小説、及びウォルフガング・ライザーマン監督、ウォルト・ディズニー製作、ロイ・O・ディズニー製作、ウォルト・ディズニー・プロダクションズ制作/製作のアニメーション映画(1967)。
当初の脚本家だったビル・ピートはラドヤード・キプリングの小説に忠実に脚本を書いたが、家族向けとしては暗すぎるという理由でウォルト・ディズニーに却下された。ウォルトは脚本の書き直しを主張したが、ビル・ピートは拒否した。長い討論の末、ビル・ピートはウォルト・ディズニー・プロダクションズを退社した。
ウォルトはラリー・クレモンズを新しい脚本家に指名した。ウォルトはラドヤード・キプリングの小説を渡したうえで、"The first thing I want you to do is not to read it."(「その本を読むな」)と言った。
1967年のアニメーション映画はラドヤード・キプリングの小説からだいぶかけ離れた作品になった。
ジョン・ファヴロー監督は、この経緯を踏まえたうえで、ラドヤード・キプリングの小説により忠実に作ることを選んだ。小説と1967年のアニメーション映画の中間となるように。ラドヤード・キプリングの小説が持っていた、ジャングルの暗い側面を描くことにした。
ロジャー・アレーズ監督、ロブ・ミンコフ監督、ウォルト・ディズニー・フィーチャー・アニメーション制作/製作『ライオン・キング』(1994)は、『ジャングル・ブック』(1967)に影響を受けている。
特にクライマックスのシンバとスカーの闘いは、モーグリとシア・カーンの闘いを踏まえている。
だからジョン・ファヴロー監督が両方のリメイクを監督したのは自然な流れというか。
今作は世界の興行収入$966,550,600という大ヒットを記録した。
ウォルト・ディズニー・スタジオは、反響を受けてすぐさまジョン・ファヴロー監督による続編の製作を決定した。
その後ジョン・ファヴロー監督による『ライオン・キング』の超実写版も発表した。先にこちらが制作され、2019年に公開された。興行収入が$1.657 billionを記録したのはご存知の通り。興収10億ドルを超えた映画の通称"The Billion-Dollar Film Club"に含まれる、数少ない映画の1作品。
『ライオン・キング』はジョン・ファヴロー監督、VFXスーパーバイザーのロバート・レガートとアダム・バルデス、アニメーションスーパーバイザーのアンドリュー・ジョーンズ、VFX制作をMPCと、『ジャングル・ブック』の制作チームがそのまま続投した。
いわば姉妹作品である。
「少年以外すべてCG」という宣伝に関して、ウォルト・ディズニー・ジャパンの宣伝担当と電通か博報堂は下手だなあと思った。
この宣伝は公開から少し時間がたってからなら活きるのに、公開前から3DCGを前面に出して宣伝して、これで多くのお客さんが映画館に足を運んでくれると思ったのだろうか?
日本の映画界が大好きな、「感動」を前面に押し出したいつもの宣伝。試写会で「○○サイコー!」と叫ぶいつもの映像とか、「感動しました!」と劇場の出口で語る若い女性たちのいつもの映像とか。
「少年の成長譚」「親子の絆(家族の絆)」などの方がまだよかったのでは?
もともと日本ではラドヤード・キプリングがあまり知られておらず、またディズニーファンでも『ジャングル・ブック』を観たことがある人は他作品に比べてそこまで多くないだろうから、近年のディズニーアニメーションの実写化としては日本ではあまり盛り上がらなかった印象がある。
VFX
今作のVFXはMPC(Moving Picture Company)とWeta Digitalの2社でほぼすべて制作した。
大部分の制作はイギリスのMPCが、後半の猿たちのシークエンスはニュージーランドのWetaデジタルが担当。
以前MPCはアン・リー監督『ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日』でアカデミー賞などの視覚効果賞を数多く受賞した。トラのリチャード・パーカーの描写を見て、ジョン・ファヴロー監督は今の技術なら動物たちをCGIで描くことができると考え、『ジャングル・ブック』の製作を決めた。
Weta Digitalはピーター・ジャクソン監督『キング・コング』(2005)で高い評価を受けた。また、『猿の惑星』のリブートシリーズ三部作で再び絶賛された。猿のCGIと言えばWeta Digital、と言われるようになった。今作の猿たちのシークエンスを任されたのもそのため。
川下り
ウォルト・ディズニー・ジャパンがこの動画の日本語字幕付きを公開していないので、アメリカ本国のものを載せる。
www.youtube.com動画の8秒あたりからの映像。
バルーのお腹に乗って川下りをしているシーン。特設の撮影用プール。
ジョン・ファヴロー監督がバルーの頭の位置に浮かんで、モーグリ役のニール・セディ君とお芝居をしている。
また、別の動画で見たけれど、バルーの口からの水鉄砲で驚くモーグリは、ニール・セディ君の素の反応らしい。ホースか何かで水をピュッとかけられてはしゃいでた。
ジョン・ファヴロー監督によると、VFXなどの技術は"good story"を語るための道具だと。あくまで、メインディッシュは物語。
映画は心を動かされる体験を視聴者に提供するものであるべきだ、と語っている。
シンデレラ城
映画冒頭のディズニーロゴとシンデレラ城。
www.youtube.comかつてウォルト・ディズニー・プロダクションズ(現・ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ)で使われていたマルチプレーン・カメラで撮影していたアニメーションを再現した。実際にセル画を描いて。Technicolor(テクニカラー)方式を再現するために、赤青緑の3色フィルターを通して撮影し、合成したと。
このロゴは『ライオン・キング』でも使われていた。
Pixar
エンドタイトルの映像はピクサー・アニメーション・スタジオが関わっている。
『メリダとおそろしの森』のマーク・アンドリュース監督が、『ジャングル・ブック』の本が開いて動物たちが飛び出してくる映像をエンドクレジットにするよう提案した。また、ピクサーの"Brain Trust"*1が今作の話づくりに協力したそうだ。
1967年のアニメーション映画で撮影に使われた『ジャングル・ブック』の本。その本が、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオの膨大な制作資料を保管している倉庫に眠っていた。
ジョン・ファヴロー監督はその同じ本をWDASに頼んで撮影に使わせてもらったそうだ。
映画賞
『ジャングル・ブック』はVFX業界にとって衝撃だった。
かつてないクオリティと物量で、フォトリアルな動物たちとジャングルを描いたから。
そして制作手法も画期的だった。ジェームズ・キャメロン監督の『アバター』(2009)などの前例があり、『アバター』のために開発されたSimulCamなどの技術を使っているけれど、それでも今作は映画製作の在り方を根本から変えてしまうようなブレイクスルーだった。
実写映画における一般的なVFXは実写プレート(俳優や実写風景を撮影した映像素材)にVFXを描き加えるというものだが、『ジャングル・ブック』はCG世界に実写の俳優を当てはめる、というアプローチをとっている。
ロサンゼルスのダウンタウンのスタジオで撮影された。つまり、現実に存在する場所の物語でも、現地に行きロケーション撮影する必要がなくなったわけだ。*2
アカデミー賞、英国アカデミー賞、視覚効果協会賞など、視覚効果賞を総なめした。
VFX breakdown
キャスト
モーグリ:ニール・セディ、北原十希明
バギーラ:ベン・キングズレー、松本幸四郎
バルー:ビル・マーレイ、西田敏行
シア・カーン:イドリス・エルバ、伊勢谷友介
ラクシャ:ルピタ・ニョンゴ、宮沢りえ
カー:スカーレット・ヨハンソン、朴璐美
アキーラ:ジャンカルロ・エスポジート、大川透
キング・ルーイ:クリストファー・ウォーケン、石原慎一
イキ:ギャリー・シャンドリング、河本邦弘
グレイ:ブライトン・シャルビノ、古賀瑠
成長したグレイ:エムジェイ・アンソニー、堀川恭司
タヴィ:マックス・ファヴロー、井上福悠
オオカミたち:クロエ・エシュテル、竹内恵美子
少女オオカミ:アッシャー・ブリンコフ、香月美紅
仔オオカミ1:ノックス・ギャニオン、藤巻勇威
少年オオカミ1:サシャ・シュレイバー、滝沢聖波
少年オオカミ2:カイ・シュレイバー、横山陽紀
コビトイノシシのフレッド:ジョン・ファヴロー、粟野志門
オオリス:サム・ライミ、後藤光祐
クジャク:ラッセル・ピーターズ、根本泰彦
サイのロッキー:ラッセル・ピーターズ、宮本崇弘
サイのラクエル:マデリーン・ファヴロー、矢野亜沙美
メスのニルガイ:サラ・アリントン、丸山礼
ラマ:ラルフ・アイネソン、斉藤次郎
センザンコウ:シーン・ジョンソン、細谷カズヨシ
トビネズミ1~4:アーティ・エスポジート、小島敬介
バイソン:アラン・トラウトマン、内野孝聡
そのほかの動物たち:ディー・ブラッドリー・ベイカー、ハンナ・トイントン
日本語版スタッフ
翻訳:田尾友美
翻訳監修:ジェームズ・ハバート
演出:向山宏志
音楽演出:市之瀬洋一
日本語版制作:HALF H・P STUDIO
Disney Character Voices International, Inc.
https://www.fukikaeru.com/?p=3985
スタッフ
監督:ジョン・ファヴロー
脚本:ジャスティン・マークス
原作:ラドヤード・キップリング
製作:ジョン・ファヴロー、ブリガム・テイラー
製作総指揮:ピーター・トビヤンセン、モリー・アレン、カレン・ギルクリスト
音楽:ジョン・デブニー
撮影監督:ビル・ポープ
編集:マーク・リヴォルシー
製作会社:ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ、フェアビュー・エンターテインメント
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズ、ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
プロダクションデザイン:Christopher Glass
アートディレクター:Andrew L. Jones as supervising art director; Ravi Bansal, John Lord Booth III; Mike Stassi as MoCap Art Director; Ilgi Candar for opening and ending sequences
セット装飾:Amanda Moss Serino
衣装デザイン:Laura Jean Shannon
キー・ヘアスタイリスト:Bryn E. Leetch
wig maker: Bob Kretschmer
hair department head: Marie Larkin
makeup department head: George Black
特殊メイクアップアーティスト:Margie Kaklamanos
supervising sound editors: Christopher Boyes, Frank E. Eulner
特殊効果スーパーバイザー:J.D. Schwalm
視覚効果スーパーバイザー:Robert Legato as Production Visual Effects Supervisor, Adam Valdez as Production Visual Effects Supervisor for MPC; Joe Letteri as Senior Visual Effects Supervisor for Weta Digital, Dan Lemmon for Weta Digital, Keith Miller for Weta Digital, Charley Henley
アニメーションスーパーバイザー:Andrew R. Jones; Paul Story for Weta Digital, Dennis Yoo, Gabriele Zucchelli, Peta Bayley
視覚効果プロデューサー:Joyce Cox; Anton Agerbo, Christina Graham, Ben Pickering for Weta Digital, Magdalena Wolf for Magnopus
視覚効果制作:MPC, Weta Digital