映画の後には紅茶とお菓子を

百合とアニメと映画の感想

『やがて君になる』第1話の感想と演出

やがて君になる
第1話
「わたしは星に届かない」

 

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演出と作画

cold open

万華鏡のようなきらきらした背景をぼかし、つないだ手をフェードインさせ、宇宙の背景に焦点を合わせ、それらを侑の目の虹彩に貼り込む。侑が瞬きをすると、本来の目が映し出される。青色のフィルターがかけられている。侑の目のエクストリームクロースアップからどんどんカメラが引いていき、顔、首、胸、伸ばした右腕が見えてくる。侑の髪のなびきやヘッドフォンのケーブルの動きから水中にいることがわかる。背景は光の当たり具合で濃淡がつけられている。また水のエフェクトが見える。
1カットに多くの工数がかけられている。これらをまとめているのが撮影処理。TROYCAの創業者の1人で、今作でも撮影監督を務めている加藤友宜さんが率いる撮影チーム(TROYCA デジタル映像部)だ。

手を伸ばした先に水面。射し込む太陽の光と反射と水のエフェクトがかけられている。
フェードアウト。フェードイン。水中で伸ばした手と同ポジ(同一ポジション)で天井に伸ばした手。

 

 

Aパート

侑のPOVショット。侑の目や頭の動きに合わせてカメラが動く。朱里とこよみの紹介も兼ねている。

生徒会室を探す侑のPOVショット。手描き背景のカメラマッピングと3D CGを組み合わせているのかな?

男子生徒を見送る燈子の脚もとのショット。いったん踵を上げて伸びをしてから、踵を返す。地味だけど日常芝居が良い。

先にすたすた歩きだした燈子と首をかしげる侑。立ち止まって振り返り方向を指し示す燈子と案内してくれることに気づいた侑の間に樹が2本。意図的な構図。

木漏れ日も撮影処理。

生徒会室に着いて振り返り自己紹介する燈子の髪のなびき、侑の髪のなびき、風に吹かれる2人の制服の布の表現。ボレロとスカート。上手。

外の風景から、桜の花びらを舞わせ、中学校の卒業式の日にトランジション

 

窓ガラス

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©2018 仲谷 鳰/KADOKAWAやがて君になる製作委員会


侑が七海先輩がかっこいいという話をした後、校舎の外から窓ガラス越しに侑・朱里・こよみを描いている。このとき窓枠によって侑と朱里・こよみが分断されている。つまり侑と朱里・こよみでは恋愛に対する価値観が異なることを表している。
朱里は憧れの大垣先輩を追いかけて遠見東高校を選んだ。こよみは年上の男性が好み。そして侑は「私は……どうだろう?」と窓の外を見て考え込む。

 

水の中

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©2018 仲谷 鳰/KADOKAWAやがて君になる製作委員会


原作漫画では物理的に離れたイメージで心の距離を表現していた。アニメでは冒頭と併せて水の中に沈んでいるイメージで心の距離を強調している。
ここも背景と撮影処理で水の中を描写している。

次のカットでは右向きの侑がフレーム右半分にいて、左側に空間を開けた構図。侑の空虚な心の内を表現している。

 

紅茶

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©2018 仲谷 鳰/KADOKAWAやがて君になる製作委員会


恋愛に興味わかないと燈子が話している場面では、侑が紅茶を淹れている。燈子が侑に「君のこと好きになりそう」と思わず口にした場面では、燈子が侑を引き寄せたときにティーカップの紅茶が波紋を立てている。原作にも描かれている紅茶という小道具を使った鮮やかな演出。

 

 

 

感想

大島ミチルさんの劇伴が素敵。心の機微を表現する音楽を書く作曲家の1人。

加藤誠監督の解釈がとても良い。原作漫画の魅力をアニメに落とし込んでいる。

加藤誠監督の細やかな演出を感じる。

第1話は作監合田浩章さんが手を入れて質を高めているなと思う。

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『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』第10話の感想と、演出と作画

第10話
「されど舞台はつづく」

 

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感想

cold open

落下する3D CGIのボタン。

木の葉をむしゃむしゃ食べるキリン。

「オーディション最終日です」

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『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』第9話の感想と、演出と作画

第9話
「星祭りの夜に」

 

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感想

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雨宮さんに気を使いながら説明するなな。

雨宮さんと香子の目配せ。

 

「人生は二度繰り返される物語のように退屈である。」 ウィリアム・シェイクスピア
"Life is as tedious as a twice-told tale." — William Shakespeare, The Life and Death of King John

 

心ここにあらずななな。

第99回と第100回のイメージが貼られた掲示板のカットはレイアウトが良い。
絵を見つめるななと、衣装の型紙の図を見る華恋とまひる
ななには太陽の光が差し込んでいるが、華恋とまひるは影になっている。
左から入ってきて、ななの左隣に立つ純那。
構図はシンメトリーで、影によってアシンメトリーになっている。またこの斜めに走る影はななを撮る際の特徴でもある。
純那の言葉に関心を示さず、右に立ち去るなな。
華恋の後ろを通る瞬間、ミディアムショットにカットを変える。
ななの表情を見せない。
なながフレームから出る間際に気づいて、立ち去るななを見る華恋とまひる
純那の瞬きをクロースアップで。

 

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『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』第8話の感想と、演出と作画

第8話
「ひかり、さす方へ」

 

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感想

cold open

作中で幾度となく引用されてきた戯曲「スタァライト」。
今回は華恋を含めて9人が大階段に揃っている。
第1話ではひかりが大階段の最上段に横たわっている。11段。
第3話ではなな、華恋、まひる、双葉、香子、純那が肩を寄せ合って大階段にもたれかかり、クロディーヌと真矢が舞い踊る。8段くらい。
第4話では第8話と同様、まひると華恋が最上段に腰かけている。9段。

第1話と異なり、第4話と第8話では幼い華恋とまひるの座る座席が入れ替わっている。
第1話は華恋が向かって左、右にひかりと思しき少女。
第4話と第8話はひかりが向かって左、華恋が右。

上記のことから、幼い華恋とまひるの配置を意図的に変えていると思われる。
また第1話と、第4話第8話は別の公演であろう。

 

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『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』第7話の感想と、演出と作画

第7話
大場なな

 

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感想

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アバン

2018年3月3日
第99回 聖翔祭 本番当日

舞台装置が学生のものとは思えない規模。
帝国劇場級。

アバンコンテ・演出・原画は小出卓史さん。

 

2018年3月5日
第99回 聖翔祭 終了から2日後
1年A組・B組 合同打ち上げ

ミロのヴィーナスがフレーム中央。正面向き。

スマホで目を隠したなな。
ななのスマホ越しの構図。

フレーム右端で、フレームの外を見ているなな。

華恋とまひるの背後に写るミロのヴィーナスは右向き。

生徒たちに褒められるななをクロースアップから目のエクストリームクロースアップまで3段階。

ななの愛称「ばなな」はこの時に華恋がつけたもの。

左向きのミロのヴィーナス。

舞台少女「大場なな」はこの日生まれた。

 

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『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』第6話の感想と、演出と作画

第6話
ふたりの花道

 

いつもはTwitterに感想をツイートしているのだけれど、今回は書きたいことがたくさんあったので、ツイートを含める形で書き直した。

 

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感想

cold open

柳家廊下のカットは床すれすれのローアングルとforced perspectiveで大人と子どもの体格差を強調。香子母と双葉母は足のみ撮り、双葉は全身。香子の写真撮影会でも俯瞰構図と、香子双葉のクロースアップは大人の身体の一部のみ映りこむ。幼い双葉香子が非力だと表している。

京都は外国からの観光客も多く、"So pretty! Did you wanna ...?"(最後が聞き取れず)という女性の台詞が右から聞こえてくる。左から聞こえる男性の声はドイツ語か何か?

鴨川かな?で風呂敷を広げくつろぐ双葉と香子。ロングショットで切り取った風景と、猫背気味に丸まっている2人。遠くまで見え、広々と感じられる構図。

香子がお菓子をおいしそうに頬張る一方、そのお金を出した双葉の描写が微笑ましい。口元のエクストリームクロースアップ。きなこがついている。手を打ち合わせてお菓子の粉を払う芝居、水筒の緑茶か抹茶を飲む香子の芝居が良い。*1

双葉に止めてほしくて目配せ。双葉がフレームから消えてからようやく反応するほど予想外の事態に動揺する香子。

自転車を押して立ち去る双葉。歩きや走りの足と地面を描く「接地」に加えて自転車。*2「接地」の作画は結構難しいので、どうしても足と地面を見せたいとき以外は腰から上だけなどの構図にするようだ。

「仕方ねえなあ。香子のことはあたしが」「あたしが、叩き直してやる!」
幼少期の回想から現在へと、台詞を基点にしたカットのつなぎが良い。

*1:近年のアニメで他に水筒の日常芝居が印象に残ったのは『政宗くんのリベンジ』第6話だった。

*2:自転車の作画は難しいと、安藤真裕監督が『花咲くいろは HOME SWEET HOMEBlu-ray Discのブックレットで言っていた。高校生時代の皐月の自転車のカットは佐藤雅弘さん原画だそう。

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『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』第1話の感想と、演出と作画

第1話
舞台少女

 

第6話まで観た段階で書いている。また実際の投稿日は8月22日だけど、話数順にするため過去の日付にしている。

 

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感想

cold open

観客席には高校生の華恋、幼い華恋と誰か。舞台の上にはひかりと華恋をはじめ第99期生の9人が。階段ステージには華恋以外の8人が横たわる。眠っている、あるいは死か。そして華恋だけがセンターに立ってスポットライトを浴びている。過去と現在と未来と空想が混在しているのだろうか。

ひかりと華恋の芝居。上手い。

www.sakugabooru.com

 

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