映画の後には紅茶とお菓子を

百合とアニメと映画の感想

『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』第6話の感想と、演出と作画

第6話
ふたりの花道

 

いつもはTwitterに感想をツイートしているのだけれど、今回は書きたいことがたくさんあったので、ツイートを含める形で書き直した。

 

 

感想

cold open

柳家廊下のカットは床すれすれのローアングルとforced perspectiveで大人と子どもの体格差を強調。香子母と双葉母は足のみ撮り、双葉は全身。香子の写真撮影会でも俯瞰構図と、香子双葉のクロースアップは大人の身体の一部のみ映りこむ。幼い双葉香子が非力だと表している。

京都は外国からの観光客も多く、"So pretty! Did you wanna ...?"(最後が聞き取れず)という女性の台詞が右から聞こえてくる。左から聞こえる男性の声はドイツ語か何か?

鴨川かな?で風呂敷を広げくつろぐ双葉と香子。ロングショットで切り取った風景と、猫背気味に丸まっている2人。遠くまで見え、広々と感じられる構図。

香子がお菓子をおいしそうに頬張る一方、そのお金を出した双葉の描写が微笑ましい。口元のエクストリームクロースアップ。きなこがついている。手を打ち合わせてお菓子の粉を払う芝居、水筒の緑茶か抹茶を飲む香子の芝居が良い。*1

双葉に止めてほしくて目配せ。双葉がフレームから消えてからようやく反応するほど予想外の事態に動揺する香子。

自転車を押して立ち去る双葉。歩きや走りの足と地面を描く「接地」に加えて自転車。*2「接地」の作画は結構難しいので、どうしても足と地面を見せたいとき以外は腰から上だけなどの構図にするようだ。

「仕方ねえなあ。香子のことはあたしが」「あたしが、叩き直してやる!」
幼少期の回想から現在へと、台詞を基点にしたカットのつなぎが良い。

 

Aパート

ひかりのクロースアップを魚眼レンズで撮らえる。片づけられないひかり。一人部屋で服などを床に散らかしてたのは片づけられない子だったからか。前回自分自身のキラめきを思い出したまひるの成長が描かれている。「お姉ちゃんだもの」という言葉に凝縮されている。

「おはよう」と駆け寄る華恋の、緩急をつけた手の芝居が良い。あごの辺りでタメて、大きく動かす。「眉毛こすれたー」と抗議する香子の後ろで、一緒に眉毛を押さえる華恋が可愛い。

タップの動き。両側手前に生徒の身体を陰をつけて描きトラックアップすることで、香子と真矢に注目させる。反対に、香子と真矢の視点で生徒越しに双葉とクロディーヌを見せる。オーディションに自信満々の顔とショックを受けた顔の落差と、ベタだけど気の抜けたような「パポ」という効果音をつけて切り替えているのが良い。

「地団駄を踏む」とは言うが、畳に座ったまま足をバタバタさせる香子の動きが良い。双葉の膝枕で、寝転んで手を上下にぐるぐる回し、足もバタバタさせるのも良い。しかもこちらはロングショット。香子のお願いに答えず無言でジュースを飲む双葉を、フレーム左端に寄せて空間を開ける心理描写。

www.sakugabooru.com8月20日追記:足をバタバタさせる香子の原画はマカリア所属のazureさん。マカリア所属のアニメーターたちはレヴュースタァライトにレギュラーで参加している。特にmoaangさんの原画は上手く随所で見られる。(担当者が判明している範囲で)

 

クロディーヌから手渡されるタオルと奥に仁王立ちしている香子を、フォーカスを変えて視線を動かすことなく見せる。これは撮影処理との合わせ技。

「力不足だよ」という言葉に驚いてフレーム中央から左端に仰け反る香子。「この裏切りもん! そないクロはんがええなら、クロはんのとこの子になりなはれ!」と攻勢に転じると前のめりになって、再びフレーム中央に。一方、双葉は香子の言葉に気圧されて一瞬右端に下がるが、「ああ! そうするよ!」とフレーム中央へ。

第1話でネギを双葉の皿に移していた香子が、我慢して食べる。それを見守るななと純那。

第5話でまひるが華恋を追いかけていた時、純那と戦っていた香子は実は焦りを感じていたことがわかる。撮影処理ではなく、作画によるズームイン/ズームアウト。1カットかな? 純那、ひかり、真矢に敗北。

 

Bパート

華恋の心情に合わせて動く髪のおさげ。香子のそばに集まる華恋、まひる、純那、ななと、遠巻きに話を聞いているひかり、クロディーヌ、真矢。

「ふ、双葉はんは関係おまへん。うちが自分で、一人で決めたことどす」という言い方と表情。ここでため息をつくクロディーヌと紅茶を飲む真矢が良い味出してる。

双葉が止めに来てくれたと嬉しい香子の口元。止めてくれると期待していたのに立ち去った双葉に拗ねる香子。

練習に付き合うことで、双葉の努力と実力の向上を認めていることを示すクロディーヌの言葉。

足に縋りつく華恋の香子に対する(仲間に対する)愛情の深さを表している。これ見よがしに、双葉に聞こえるよう大きな声でアピールする香子。止めに来てほしいから。

真矢がクロディーヌに対する想いを、香子と双葉の関係に重ね合わせて熱く語る。餞別の包みを取り上げたものの「どうか、京都に帰ってもお元気で」と言う真矢に、包みを受け取り「ええ。ほなさいなら」と答えるしかない香子。これがラストへの布石。

寮を出ていく香子を窓から見送るクロディーヌと、部屋の中で座り込んでじっと考える双葉。天蓋つきベッドのカーテン越しにズームインして、双葉の気持ちに寄り添うコンテ。

真矢の言葉を思い返し双葉を想うが、バイクの音に気を引き戻され、通り過ぎるバイク便に双葉が追いかけて来ないことをまざまざと突きつけられる。良いコンテ。

双葉が来てくれて笑みを浮かべかけるものの、素直になれない香子は悪態をつく。香子が時間をかけて回り道したことを見抜いていたが、香子が寮を出てからだいぶ時間がたってから、慌てて追いかけてきた双葉。香子と双葉の言い合いが激しくなり2人を見る母娘(か姉妹か)。オーディションのメール着信が2台分、駅舎に反響している。(着信音をずらして、それぞれにリバーブをいつもより深めにかけている。)

レヴュー

前口上では得物の切っ先を大きく見せるレイアウト。

能舞台ではないし、寝殿造

香子の背景には龍の襖、双葉の背景には虎の襖。OP前のカットと兼用かな。

特に「ほな、うちが勝ったら、一緒に京都帰るで!」「やれるもんならやってみろ!」のカットは、吠える香子と龍の頭、吠える双葉と虎の頭になるよう意図的に配置されたレイアウト。

双葉と香子の言い合いはハイアングル。痴話喧嘩を聞かされるキリンの呆れたような芝居が良い。「オーディションの私物化ですね。わかります」と。ここも双葉が啖呵を切るOP前のカットと兼用かな。

ローアングルとハイアングルを織り交ぜた構図で殺陣。パースの効いたレイアウトで人物アクションを描く。レイアウトと動きの上手さにため息が出る。*3この一連のカットは酒井智史さんの原画らしい。*4

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ローアングルで撮るとアクションに迫力が出て、ハイアングルで撮るとアクションがより細かく見えるようになる。

わずかに開いた丸窓障子がスポットライトとなり、隙間から見える双葉や香子の姿と障子の影により攻守の演者が交代したことを告げる。

双葉の渾身の一撃も作画によるズームイン。

想いを語る双葉をフレーム内フレームで撮影。一方、香子は周りに空間を取っている。

ゆっくりな瞬きで涙がこぼれるのがちょっとくさいかな。瞬きせずに開いた目から涙が流れるか、一瞬の瞬きで涙が流れるかの方が好みだ。双葉を演じている生田輝さんの「やめろー!!」という芝居が効果的なので。

双葉と香子が通じ合うと、上手と下手が入れ替わる。イマジナリーラインを超える違和感を軽減させるため暗転幕を落とす。また「約束のレヴュー」で赤色の照明で舞台を照らした後背景を変えたのは、演劇の場面転換で舞台の照明を落とし背景の書き割りや大道具を用意する手法に似ている。

香子が決意を固めると、2人の間に光の道筋が灯る。

香子が走りながら舞う芝居が素晴らしい。レイアウトがキマっている。美しい動き。幼い姿で舞った後の、香子の表情が良い。やっと自分を見つけたという達成感と大好きな双葉を理解できた喜びが表情に出ている。このカットの原画は副監督の小出卓史さんらしい。八面六臂の活躍。

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インパクトの瞬間に照明を落とし、ボタンが飛ぶと、再びポジション・ゼロへ向けて照らす。そしてハラりと落ちる双葉のケープ。

オーディションが終わった後、まず一筋の光に照らされた背中合わせの2人を見せ、双葉が話しかけると、香子のクロースアップで香子が言葉を返し、双葉の反応を描き、つないだ手を見せる。良いカットのつなぎ方。
また、クロースアップで香子と双葉をそれぞれフレーム端に寄せ、空間を使った良い構図。キャラクターの心理描写。さらにその後、つないだ手をフレーム中央に映すので画が決まる。

「花咲か唄」からずっと、桜の花びらが舞っている。

そしてフェードアウト。

エピローグ

いつも双葉に起こされ、眠りながらバイクで通学していた、香子の成長。

双葉と香子とバイクの音に、目を覚ました華恋、まひる、ひかりが仲良く溶け込んでいると感じられる。早起きなななと眼鏡をかけたばかりの純那。

双葉は、クロディーヌに簡素なメッセージとたくさんのお菓子のつつみ。苦笑するクロディーヌ。

香子は、真矢にお礼状と、立派な箱に入った飴ちゃん1個と挑戦状「負けまへん」。見送りの時の意趣返しのつもりなのだろう。また京都人である香子のいけずな性格の一端でもある。ウキウキして箱を開けたであろう真矢の性格が可愛い。また、実家に帰ったはずの香子が戻ったことを喜んでいるとも解釈できる。

第3話の「アメチャーン」が恋しい。

「双葉はん。うちら、2人で世界一にならんとな!」
双葉の嬉しさを隠しきれない「仕方ねえなあ」。幼少期との対比。

2枚の花びらが寄り添うように舞い落ちる。

 

post-credits scene

現時点では書かないでおく。

 

 

 

この話で双葉と香子が好きになった。感情に振れ幅のある香子役の伊藤彩沙さんの芝居が良い。

 

 

 

スタッフ

脚本:樋口達人
絵コンテ:佐伯昭志
演出:横内一樹

 

作画監督:大下久馬、小栗寛子、小里明花、小池裕樹
     小出卓史、清水海都、髙澤美佳、谷紫織、安田祥子
原画作画監督:河村零王、杉山有沙
作画監督補佐:ジュノンたけお、浅尾晃成
鉄道作監:高倉武史
総作画監督:伊藤晋之、齊田博之

 

原画:
浅尾晃成 阿部安佳里 飯田光尋 内田シンヤ 大西紀子
小里明花 納武史 笠野充志 蟹江健二 国吉杏美
小出卓史 齊藤理恵 酒井智史 櫻井拓郎 佐藤愛架
澤井真紀 繁澤敬二 嶋田聡史 ジュノンたけお 高梨光
谷紫織 樋口香里 細田沙織 山本貴則 八波千人
 
マカリア
azure

 

第二原画:
浅尾晃成 阿部安佳里 佐藤愛架 杉山有沙 谷紫織
森公太
 
石塚理央 大嶋由葵 菅野康平 田口愛梨 田仲基寛
 
ぎふとアニメーション スタジオグラム スタジオリングス タツノコプロ
イオニアプロダクション
 
Big Owl STUDIO CL WHITE FOX

 

動画検査:髙橋千尋渡辺美佐、Min Kyung-ae

seesaawiki.jp

 

 

元ツイート

https://twitter.com/naotie/status/1030473852801835008

https://twitter.com/naotie/status/1030474401911730176

https://twitter.com/naotie/status/1030732242992037888

https://twitter.com/naotie/status/1030854440176111616

https://twitter.com/naotie/status/1030858382498979841

*1:近年のアニメで他に水筒の日常芝居が印象に残ったのは『政宗くんのリベンジ』第6話だった。

*2:自転車の作画は難しいと、安藤真裕監督が『花咲くいろは HOME SWEET HOMEBlu-ray Discのブックレットで言っていた。高校生時代の皐月の自転車のカットは佐藤雅弘さん原画だそう。

*3:もてはやされることが多い高速の剣さばきなどの高速戦闘は好みではないのだけれど、このカットは好き。もともとは人体や物体の重さを感じられるアクションを描く人が好き。

*4:https://twitter.com/nextfurther/status/1030138908183412737