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百合とアニメと映画の感想

『BLUE REFLECTION RAY/澪』第22話感想: 水崎紫乃の壮絶な過去

『BLUE REFLECTION RAY/澪』第22話「となりあわせの死」

 

 

作品について

キャラクターの過去を語る話数は水上清資さんが脚本の担当。

仁菜の過去もしかり、陽桜莉と美弦の過去もしかり、涼楓と亜未琉の過去もしかり。そして紫乃の過去も。

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水崎紫乃

紫乃のフラグメントそのもの。想いの化身。具現化したもの。

 

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水崎紫乃と水崎加乃の過去 ©コーエーテクモゲームス/AASA

新宗教「聖イネス教」の教祖「ネクナン様」に祭り上げられていた。教義は、「未来からやって来た。社会的弱者を救うため、今を正す必要がある」。過激な優生思想が、女子高校生を中心に人気を集めていた、と。

紫乃は双子の姉・加乃がいた。2人は対外的に1人の「紫乃」を演じさせられていた。加乃は殉教者、紫乃は救世主の役割を負わせられていた。

加乃も紫乃も虐待を受けていた。加乃は身体的虐待と精神的虐待の両方を、紫乃は精神的虐待を。加乃の傷や痣は聖痕だと。父親はいたが、妻による娘たちへの虐待を見て見ぬふりしていたのだろう。

聖イネス学園は聖イネス教が運営する学校。聖イネス学園の生徒は皆、聖イネス教の信者の子どもたち。文字通りの意味で。親が信者で子どもを宗教学校に送り込むだけではなく、生徒自身が希望して入学した。

だから2周目の美弦や仁菜が在籍していた。紫乃が入学手続きを手配したのだろう。詩は、平凡な生活では満足できず常に新しい刺激を求めているので、(家庭が経済的に困っていないので、)普通に入学してそうだけど。

母親は加乃の心臓から血液を採取し、紫乃に無理やり飲ませた。紫乃は加乃の血液を無理やり飲まされた。加乃は亡くなった。親に殺害された。

逃げ出した紫乃に、1周目の美弦が出会った。美弦は紫乃に断られた。

紫乃は1周目で飛び降りて自死した?

 

 

都を気遣う仁菜。

 

コモンにいる紫乃は詩に、もう1人の紫乃を破壊させようと派遣した。

 

 

感想

予想はしていたけれど、それより遥かに重い話だった。

次回予告を観て、幼い少女にワインを飲ませるのかと思っていた。キリスト教では聖餐と言って、パンはイエスの体を、ワインはイエスの血を表す。レオナルド・ダ・ヴィンチの壁画で有名な、最後の晩餐でのイエス・キリストの言葉が由来。だから教会での礼拝で、パンやウェハースみたいなせんべいなどを食べたりする。

紫乃の行動原理がようやく納得できた。

先週は、紫乃を救済してハッピーエンドになりそうと書いたけど、この過去があって可能なのだろうか?

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アニメという媒体だから、オブラートに包みこんで表現できる。実写でこの話を描くのは難しいだろう。生々しすぎる。商業的にも、映像表現的にも。倫理的にも、相当気を使わなければならない。

アメリカドラマだと、結構こういった話が描かれる。Dick Wolf クリエイター・ショーランナー "Law & Order: Special Victims Unit"、Jeff Davis クリエイター・ショーランナー『クリミナル・マインド』、Hank Steinberg クリエイター・ショーランナー "Without a Trace" などが代表的。

 

声優さんたちの言葉。

テレビ放送・配信用に、(アフレコの時より)演出を修正したらしい。BDが発売中止にならなければ、そちらに本来のバージョンが収録された可能性があった。

監督もシリーズ構成も脚本家も、そして何よりプロデューサーが、よくこの話でいこうと決断したね。ガスト(コーエーテクモゲームス)のスタッフが製作協力や監修で入っているから、原作者公認の設定と話でしょ。

 

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先日、毎日放送のプロデューサー前田俊博さんのインタビューが公開された。前田さんは『ブルリフR』には携わっていないけれど、記事を読むとMBSの番組制作の方針をうかがい知ることができる。「MBSの考査担当者は、作品性を理解しています。」とのこと。

MBSの過去作には人が死ぬものが多かったので、「残虐描写のノウハウ」は、他局さんよりはあるという自負があります。視聴者の方からいろいろなクレームをいただいたこともあって、残虐描写の知見を蓄積しているんです。

残虐描写にしろ性的描写にしろ、直接描かないとか、構図・色彩・撮影処理・音響などを工夫することで、クリエイターの意図をできるだけ損なわずに表現し、放送・配信できる。

実際、『ブルリフR』第22話は、母親の背中で加乃の身体を覆い隠して、身体を伝って足の指先から滴り落ちる血液をワイングラスで受け止める、という表現にしていた。また行為そのものの効果音を意図的に入れていなかった。

毎日放送は、竹田靑滋さんや丸山博雄さんらが表現を含めてアニメを開拓してきたから、表現が難しい題材でも挑戦できるのだろう。

ちなみに記事中に出てきた、安藤真裕監督&塚田拓郎監督、岡田麿里さん原作・脚本、Lay-duce制作『荒ぶる季節の乙女どもよ。』(2019)では、前田俊博さんがチーフプロデューサー、『ブルリフ澪』の青井宏之さんがプロデューサーを務めていた。また、第22話を含め『ブルリフ澪』の絵コンテを担当した森川さやかさんが『荒乙』でプロップデザインをしていた。

 

 

演出

母親の表情を描かないように構図が取られていた。目の下でフレームを切る、フルショットで表情を描かない(顔のパーツを省略する)、背中や後頭部をカメラに向ける。

目や表情を描かないことで、何を考えているのかわからないような印象を与える。

 

また、ローアングル(煽り)の構図で、母親を強大に見せる。

紫乃と加乃をハイアングル(俯瞰)の構図で描くことで弱く見せる。

 

 

余談

双子だから、井澤詩織さんが紫乃と加乃のニュアンスを演じ分けていた。

 

 

テレビ放送の途中で『BLUE REFLECTION TIE/帝』のCMが放送された。詩と思われるキャラクターだったので、『帝』にも登場するのだろう。

 

 

キャスト

平原陽桜莉:石見舞菜香
羽成瑠夏:千菅春香
田辺 百:高倉有加
白樺 都:大和田仁美
平原美弦:上田麗奈
山田仁菜:玉城仁菜
駒川 詩:田辺留依
水崎紫乃井澤詩織
水崎加乃:井澤詩織
司城夕月:高野麻里佳
司城来夢:秦佐和子
斎木有理:佐倉綾音
靭 こころ:高柳知葉
橘 涼楓:平山ゆりか
皇 亜未琉:真野あゆみ

 

 

第22話スタッフ

脚本:水上清資
絵コンテ:森川さやか
演出:所俊克

総作画監督:坂本哲也、村上雄、出野喜則、谷川政輝
作画監督:桜井木ノ実、服部益美、Du Wei Feng、Chen Liang、Wei Xu Long、Wang Bin

動画検査:
色指定・仕上げ検査:
特殊効果:木村美保

制作協力:One's work

 

 

メインスタッフ

原作:コーエーテクモゲームス『BLUE REFLECTION 幻に舞う少女の剣』
監督:吉田りさこ
シリーズ構成・脚本:和場明子
キャラクター原案:岸田メル
キャラクターデザイン:菊田幸一
色彩設計:舩橋美香
美術監督:三原伸明
美術設定:三原伸明、三浦智
撮影監督:高橋昭裕
編集:須藤瞳
音響監督:岩浪美和
音響効果:小山恭正
音楽:篠田大介
音楽プロデューサー:酒井康平
音楽制作:DMM music
企画:棚田泰啓、丸山博雄
プロデューサー:高篠修一、青井宏之
製作協力:鯉沼久史、細井順三、原尾宏次
監修:細井順三、土屋暁田中潤
アシスタントプロデューサー:坂本奈緒、平木稜子、山崎博
アニメーション制作統括:松倉友二
アニメーション制作プロデューサー:岡田耕二
設定制作:栗原ゆう
アニメーション制作:J.C.STAFF
製作:DMM pictures、MBS