映画の後には紅茶とお菓子を

百合とアニメと映画の感想

『メイドインアビス』ハリウッドで実写映画の開発開始

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つくしあきひとの漫画『メイドインアビス』を原作に、アメリカで実写映画の開発が始まった。

小島正幸監督、垪和等副監督、飯野慎也助監督、倉田英之シリーズ構成、黄瀬和哉キャラクターデザイン、キネマシトラス制作のテレビアニメ及びアニメ映画が製作された。またテレビアニメ第2期が2022年に放送予定。

 

ケヴィン・マクマリン(Kevin McMullin)が脚本を執筆予定。ドラマ映画"Low Tide"(2019)の監督・エグゼクティブプロデューサー・脚本家。インディペンデント映画の製作・配給会社A24が配給した、という点に注目。トライベッカ映画祭でプレミア公開された。

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ロイ・リー(Roy Lee)のVertigo Entertainmentが製作。Roy Leeは『LEGO ムービー』フランチャイズのプロデューサー、アンディ・ムスキエティ監督『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』二部作のプロデューサー、レジェンダリー・ピクチャーズ製作『モンスターバース』のゴジラ映画のエグゼクティブプロデューサー。ギャレス・エドワーズ監督『GODZILLA ゴジラ』(2014)でも、初期段階でダン・リン(Dan Lin)*1らとともにプロデューサーだったのだが、Legendary Picturesと話が折り合わず降板した。後に、Dan Linと一緒に、マイケル・ドハティ監督『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(2019)やアダム・ウィンガード監督『ゴジラvsコング』(2021)の製作総指揮になったので、Legendary Picturesと話がついたのだろう。

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マシ・オカもプロデューサーを務める。マシ・オカは近年、日本の漫画・アニメ・ゲームなどをアメリカで映画化・テレビシリーズ化しようと熱心に動いている。

ソニー・ピクチャーズの製作部門コロンビア映画が製作・配給として携わっている。

 

日本では「映画化決定の報道=必ず実現する。映画が公開される。」と思われているが、アメリカなどでは映画やテレビドラマの開発を始めても実現するプロジェクトはほんの一握り。10作品開発して1作品実現すれば幸運、みたいな業界。ほとんどのプロジェクトはdevelopment hellになる。つまり企画中止。中には、development hellになった後、別のプロデューサー・監督・脚本家・主要俳優で仕切りなおして実現した作品もあるし、最初の開発からdevelopment hellを経て実現するのに数十年かかった作品もある。

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プロデューサーは優れた原作を探し映画化権を買う。「オプション契約」と言うが、先に契約金の10%を原作の著作権者に支払い、プロデューサーは開発を行う。プロジェクトが実現すれば、残り90%のお金が原作著作権者に支払われる。契約期間中に実現しなければ、映画化権は原作著作権者に戻る。

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プロデューサーは脚本家を選び、脚本第一稿を書かせる。これと並行して、大勢の監督候補と話をして監督を選ぶ。主要俳優の候補と話をして俳優を選ぶ。監督・脚本・俳優の売り要素を武器に、他の映画製作会社や映画投資会社などを回って、資金調達する。

脚本第一稿ができたら、監督や主要俳優の意見を聞きながら、第二稿、第三稿、と改稿していく。決定稿になったら、関与している映画配給会社と映画製作会社や映画投資会社に監督・脚本・俳優の要素をプレゼンし、green light(製作の正式な許可)をもらう。映画配給会社と映画製作会社や映画投資会社から却下されたら、上記のとおりdevelopment hellになる。

development hellになったら、監督・脚本・俳優を変えて練り直すか、企画自体を中止にするか。

製作会社を経営しているプロデューサーも多い。development hellになったら、それまでプロジェクトに投資したお金が回収できない。だからプロデューサーは必死にいい原作を探し、いい企画・いい作品になるよう努力する。日本の、テレビ局や映画会社というぬるま湯につかって、会社のお金で仕事をして、失敗しても解雇されない、会社員プロデューサーとは違う。

*1:Dan Linはガイ・リッチー監督『シャーロック・ホームズ』シリーズと『アラジン』(2019)のプロデューサー。『アラジン』の大成功を受けて、Walt Disney Studiosからの依頼で『リロ・アンド・スティッチ』実写版をプロデューサーとして開発している。製作会社Rideback(旧社名Lin Pictures)を経営している。